システム管理者に迫られる「人生の選択」女性システム管理者の憂鬱(4/4 ページ)

» 2007年02月01日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]
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 A君はその年、結婚したばかりである。

わたし:「確かにね。まあ、A君の技術ならどこに行っても通用すると思うけど、ここで仕事続けるんなら正社員になったほうが生活は安定するよね。派遣だと急にこの事業辞めますって言われたらそれまでだし」

A君:「そうですよね。別にほかに行きたいとこもないし。どこ行っても一緒ですよね」

 そうかなあ。A君なら英語も話せるし、外資系IT企業でもっとバリバリやることも可能だと思うが、本人はそれを望んでいないらしい。

A君:「でも、さっき電話があって、面接試験で志望理由を聞かれたら、安定したいから、とは絶対に言わないようにって釘を刺されちゃって。安定意外、理由が思い浮かばないんですけど」

 確かに。

A君:「採用試験ではやっぱり志望理由聞かれました?」

わたし:「まあ、当然聞かれるよね。わたしは、社員の技術スキルがバラバラなので、将来的には現場のニーズを反映した技術研修を企画してインストラクションを担当したいって答えたよ。そんな部署当社にはないからって面接官には笑われたけど、受かったしね。なんかそれらしいこと言えばいいんじゃない?」

A君「うーん、難しい。何も思いつかない」

 A君は若いだけあって、思ってもみないことを言うのが気恥ずかしいようで、ずっとウンウン唸っていた。

 それから1カ月後、A君の面接日が訪れた。現場での勤務評価も高い彼のことだ、なんの心配もいらないだろうと、ほんとうにまったく心配もせず、わたしは拠点の留守を預かり淡々と業務をこなして翌日を迎えた。

 朝出社すると、冴えない顔のA君が早くも席についていた。

わたし:「おはようございます。昨日どうでした?」

 するとA君が重い口を開いた。

A君:「面接官になぜ正社員になりたいのですか、って聞かれて、来たよ、来たよ、ここで安定って言っちゃだめ、安定って言っちゃだめって自分に言いきかせていたら、思わず『アンテイ・・・』って口を突いて出ちゃって」

 絶句するわたしを尻目にA君の話は続く。

A君:「その後、面接官としばらく無言のまま見つめ合っちゃいましたよ」

 数日後、無事合格の連絡を受けたA君は、持ち前の柔軟性と旺盛な知識欲を発揮して、今や、システム管理者の業務改善や新規プロジェクト推進でバリバリ活躍中の中堅社員となっている。

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