快走するHP ── その強さの秘密を大連に見た(3/3 ページ)

» 2007年05月11日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 しばしばオフショア開発の難しさが話題となるが、同じHPの日本と中国のエンジニアが、共通のプロセス、メソッド、およびツールを活用し、日本向けノウハウの蓄積を図っているのがJDDCの強みだ。

 「JDDCは下請け業者とは違う。同じHPで働き、日本と中国のチーム間で同じゴールを共有している。リスクを社外に押しつけることができるわけではなく、協調体制が重要なことを互いに認識している」と話すのは、JDDCの担当マネジャーを務める陳炎氏。

日本の大学で学び、日本で働いた経験を持つ陳氏。JDDCのオフィスにはソフトウェア開発プロセスの能力成熟度を認定するCMMIの認定証が掲げられている。もちろん、最高位のレベル5だ。手前にあるガレージのミニチュアは、社員の声を吸い上げるための「目安箱」

 2004年にJDDCをスタートさせたときには、日本HPから送られた詳細設計書を基にコーディングと単体テストのみを行うことを想定していたが、現在では日本の顧客企業にブリッジSEを派遣するなどして、仕様書の作成や論理設計といった上流まで領域が拡大しているという。

 上海HPのアプリケーション開発業務全体に占める日本向けの比率を見ても、2006年度は18%だったが、2007年度第1四半期は24%へと拡大している。「今年度末までに700人までJDDCのエンジニアを増やす」と陳氏は話す。

コスト削減だけではないHPのオフショア化

 オフショアといえば、コスト面での節約が強調され、多くの日本企業もそれを期待する。日本HPもコスト節約のみを追及すれば、アプリケーション開発はもちろん、バックオフィス業務やコールセンター業務も外部にアウトソースする選択肢もあったはずだ。

 しかし、日本HPの小田社長は、「狙いは必ずしもコスト削減だけではない」と話す。HPでは、大連の運用をグローバル共通のプロセスで実施し、品質を高め、より高い価値を生み出している。

 「まさにグローバルにビジネスを展開しているHPだからこそできることだ。グローバル化を目指す顧客企業にとっては、ショーケースとなり、われわれの価値を認めてもらえるはずだ」と小田社長は話す。

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