休憩を挟んだ後、タイのプレゼンテーションが行われた。タイについてはすでにこちらの記事で紹介したが、Webカメラを利用して文字列をキャプチャーし、その文字解析を行うとともに、その意味を抽出して百科事典データベースからその意味に相当する画像や動画を取得する。それによって文字とその意味するものをより直感的に理解できるというのが大きな特徴だ。読み書き、そして発音の練習なども可能で、書いた文字が正しいつづりなのかどうか、発音した音声が正しいものかどうかなどが判定できるものとなっている。難点を挙げるなら、単語単位での意味を解析するため、文としての理解が進まない印象も受ける。
その美麗なインタフェースもさることながら、彼らのさわやかなプレゼンテーションは多くの人に温かく受け入れられた。審査員からの質問がうまく理解できない場合も身を乗り出して耳を傾けるなど、誠実さが伝わってくるような対応で、その都度拍手が起こっていた。分からないことがあるとチームメンバーと顔を向き合わせて相談するしぐさなど、チームで課題を解決しようとする姿勢が見えたチームだった。
オーストリアチームのソリューション「INTOI」は、フリップチャートをデジタル化し、それをマルチユーザーで用いようとするものだった。
フリップチャート自体を1つのオブジェクトとしてとらえ、その中に画像やパワーポイントのスライド、PDF、動画など、ほとんどすべてといってよいファイル形式をインポートして表示することができる。もちろん、その拡大縮小なども自在に行える。
それぞれのフリップチャートをクライアントとするサーバ・クライアント方式によって一元管理も可能な同ソリューション。設備的にそれなりに高額なものを使わざるをえないのはセルビアと同様だが、セルビアと異なり、学校内での利用を想定しているであろうオーストリアのソリューションは、金銭的な敷居も感じさせる。
最後に登場したのはジャマイカチーム。彼らのソリューション「CADI」を一言で表現するなら、情報のアーカイビングシステムだが、そこに共同作業のためのギミック――例えばチャット――を付け加えている。Microsoft製品で言えば、Microsoft Office Groove 2007に近いものと考えればよいだろう。
彼らがこだわったのが「言語の壁」の解消。教育上の問題としては距離的な問題や、情報の収集方法とその共有、コストなど幾つか挙げられるが、特に言語的な部分で学習やコミュニケーションが阻害されることが多い、ならばそれを解消しようと考えた彼らは、12言語の相互翻訳をシステムに組み込んだ。これにより、例えば、元の入力が英語で行われたチャットも、それぞれのユーザーの画面では、それぞれの国の言語に変換されて表示される。説明のために示したWebサイトなども言語が変換される。
同ソリューションもサーバ・クライアント方式を採用、データをサーバに保存し、それらのデータで必要なものをデジタルノートとして各自がまとめを行う。必要であればUSBメモリなどに転送して持ち運ぶ、といった利用を想定している。
デモでは、WikipediaのWebサイトを例に、言語変換される例を示していたが、多くの言語でWikipediaが用意されていることを考えると、デモとしては不適切だったようにも思う。また、翻訳エンジンはGoogleなどのWebサービスを用いているようだが、その精度についても審査員から質問が飛んでいた。
しかし、それらを吹き飛ばすような迫力あるプレゼンテーションを行った彼ら。自分たちのソリューションに対して持つ自信が感じられた。
ファイナリストに残った6チームのプレゼンテーションは、観衆にさまざまな可能性を示してくれた。どのチームが優勝してもおかしくない出来栄えだが、タイや韓国チームのソリューションは完成度も高いように思う。発表は金曜日の夕方。世界の頂点に立つ国はどこになるのだろうか。
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