データセンターのサービス向上にはサーバ統合が不可欠グリーンITや運用改善に効果大(2/2 ページ)

» 2008年05月12日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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最大の効果は、運用が楽になり品質も向上したこと

初期導入システム(受発注システムのWebインターフェース)の概容。同時接続端末台数は、設計上10万台以上となる

 本格的なBladeFrameの導入作業は、翌2007年1月から開始された。その導入効果は、早くもシステム構築段階から明らかになったと八木氏は言う。

 「最初にBladeFrameを用いて構築したシステムは、かつて約30台のラックマウントサーバだったものを、約10倍のシステム規模にリニューアルし、BradeFrame2筐体、45枚のブレードで実現しました。サーバのセットアップは早く、サーバー45台の立ち上げに1週間もかからなかったほどです」

 リニューアル前のシステムに比べると、物理的スペースや電力消費などは大幅に抑制された。BladeFrameによるインフラを標準化した同社では、その後も同じプラットフォームを用いたシステムを続々と立ち上げており、2008年4月の時点で7筐体、150台以上のブレードを運用しているという。通常のラックマウントサーバであれば、数十ラックは必要だったと田中氏は見積もっている。

 「BladeFrameに集約した効果は目に見えて出ています。当然、環境にもやさしいと言えるでしょう。しかし、そういった効果よりも、運用が楽になるという点が大きな効果です。例えばOSのセキュリティパッチなども、全サーバの適用状態を一元管理できます。2人もいれば、何十台ものサーバを管理できるのです」

 当然、開発担当者が運用に関わる場面も激減した。運用担当者1人あたりの管理サーバ数が増えたことで運用効率は大きく向上し、運用コストも削減される。どのサーバも同じ基準で構築するので、統制がとれるようなった。標準環境を使っている限り、OSレベルでの安定稼働は運用部門が責任を持って保証することができるという形だ。

 過去、多くのシステムがメインフレームからオープン系へと移行する中で、運用品質の維持は松下電工インフォメーションシステムズにとって大きな課題だったという。

 「メインフレームを使っていた時代には、自由度の低い運用でしたが、運用品質は高かった。しかしオープン化されてからは、自由度が高まったものの、今度は運用品質が課題だったのです。ですが、その課題も今回の標準化でクリアできた形になりました」(田中氏)

 ほかにも、予備サーバの台数を抑えられるようになったことや、さまざまな検証作業に予備ブレードを使って実環境と同じ環境での検証が容易に行えるようになったことなども、コスト削減やシステム全体の信頼性向上に役立っているという。

今後の課題は、松竹梅の“梅”をいかに標準化するか

 BladeFrameを社内の標準基盤として採用し、運用面でも大きな効果を確認し、今後の道筋も作られたとはいうものの、まだ課題は残っている。

 「BladeFrameはハイエンドサーバで、エンタープライズ向けです。しかし、台数が最も多いのはローエンドからミッドレンジのサーバ。このレンジではコスト面での制約も厳しく、BladeFrameを適用するのは難しいですね」(八木氏)

 そこで同社では、イージェネラの仮想化ソリューション「vBlade」の採用も並行して進めてきた。1枚のブレード上に最大32の仮想サーバを乗せることができ、1筐体では数百台分のサーバを乗せられる。運用品質を下げることなくサーバあたりのコストを抑えることが可能だ。松下電工インフォメーションシステムズでは評価導入、検証の末に、2008年からvBladeによる本番環境を稼働させている。

 「残る課題は、『品質が低くても構わないから安くしてほしい』というニーズに対応できる環境ですね」と田中氏は言う。

 「社内的に“松竹梅”と言っていますが、その“梅”のレベルへの対応です。運用コストを下げて安く提供しつつも品質を下げないようにするためには、“梅”レベルでも標準化していきたい。このあたりに関しても、標準基盤策定を急いでいるところです」

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