日本ユニシスの4〜9月期は減収増益 「SaaSの収益化は難しい」と籾井社長

日本ユニシスの中間期は減収増益だった。人材配置や不採算事業の最適化などで利益を増やした。今後拡大を見込むSaaSビジネスについては、収益化が困難との見通しを示した。

» 2008年11月07日 18時23分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 日本ユニシスが11月7日に発表した2008年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比3.6%減の1468億9000万円、本業のもうけを示す営業利益は同35.0%増の41億1700万円、四半期純利益は16億6800万円(前年同期は43億6200万円の損失)となり、減収増益だった。

4〜9月期の連結決算 4〜9月期の連結決算

 アウトソーシングの大型案件の終了やハードウェア、ソフトウェアの売り上げ減などから減収となった。一方、システムサービスの売り上げは増加。業務メンバーの問題点を解決する仕組みの導入や、品質・プロジェクトの管理を強化したことなどが奏功し、不採算案件のコストオーバーが減った。開発経験のある人材をシステム開発部門などに再配置したことで、システム外注費の割合も減り、採算性が向上した。前年同期に計上したのれんの償却なども寄与し、純利益は約60億円の大幅増益となった。

 日本ユニシスの籾井勝人社長は今後の収益拡大について、金融危機などの影響で将来的な見通しは定めにくいと前置きをした上で、「金融情勢や株価に左右されない企業体質の強化を図る。具体的には社内の仕組みやコスト(構造の)改善に着手する」と語った。

 主力事業の1つであるICT(情報通信技術)サービス事業にも言及。「(IT業界では)システム開発が保守運用より格上という見方もあるが、今の動向を見ると、保守運用に長けたICTエンジニアが必要だ。こうした人材を育てていく」と籾井社長は述べ、ICT事業に期待を込める。

「SaaSは難しい」と籾井社長

image IT企業の再編が進む中、「M&Aは常に考えているが、(どの企業を対象にするかは)まだフォーカスできていない」と籾井社長。まずは企業体質のさらなる強化を目指す

 同社は4月にICTサービスの基盤を強化。ホスティングサービスなどを含むアウトソーシング事業と、業界ごとのソリューションや他社サービスを提供する利用型サービス事業からなるICTサービス事業を展開している。既存のシステムインテグレーション事業の売上高が堅調に推移する中、ICTサービス事業を利益拡大の新たな軸に据える。

 利用型サービス事業をけん引する要素の1つがSaaS(サービスとしてのソフトウェア)だ。同社は6月にSaaS事業の本格展開を発表。専用のデータセンターを構築し、同社のプラットフォームや他社のサービスをインターネット経由で提供している。

 そうした背景の中、籾井社長が会見で好調をアピールしたのが、SaaS型サービス基盤「SASTIKサービス」だ。これは専用のUSB認証キー(SASTIK)をPCに挿入すると、日本ユニシスのデータセンター経由で社内ネットワークに接続できるサービス。PCにUSBを挿し込むだけで、セキュリティに配慮しながら社内のWebサービスが使えるという点が受け、2008年度には3万IDの契約を見込む。同社は、グループ企業の全社員を対象に、SASTIKを使った在宅勤務制度と簡単なテレワークを運用している。

 一方で、SaaSビジネスについて籾井勝人社長は「成功は難しい」と漏らす。従来のシステムインテグレーション事業などとは違い、収益規模は相対的に小さい。「SaaS(という言葉)はサービスの打ち上げにはいいが、利益には結びつきにくいのが現状だ」(籾井社長)

 「3年で3万台の契約を目指すつもりだったが、今後は10万台を目指す」。籾井社長はSASTIKの販売で強気の姿勢を打ち出した。収益化が難しいSaaSビジネス拡大の新たなエンジンとして売り込みをかける。

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