企業ITサービスを支えるブレードサーバ

この春、ブレードサーバのトレンドを読む本格的な普及期を迎える?

厳しい経済情勢の中、多くの企業がITコストの削減に躍起になっている。だが、いくら景気が悪くとも企業が扱う情報量は否応なく増え、それに対処するためのITへの投資は欠かせない。最も効率のよいITへの投資は何か。その解としてさらに注目されているのが、ブレードサーバだ。

» 2009年03月18日 08時00分 公開
[大神企画,ITmedia]

ブレードサーバ+仮想化に注目が集まる

 サーバの物理的な集約を目的に、20世紀末に誕生したブレードサーバ。当初は、モバイルPC向けの部材を採用するなど、信頼性が求められるサーバ分野には不向きだったが、ハードウェアや仮想化技術、管理ツールの革新により、次第にエンタープライズサーバへと進化。現在は、多くのサーバベンダーが主力のサーバ製品として位置付けるところまで発展している。

 とりわけここ数年はその傾向が強まっているが、ブレードサーバは今、どのように変化しているのだろうが。本特集では、2008年から2009年はじめにかけて登場したサーバベンダー各社の新製品を振り返りながら、これからのブレードサーバの傾向を考えてみたい。

 2008年に注目を集め、実際の導入が進んだテクノロジーと言えば、仮想化技術が挙げられる。仮想化技術は、メインフレームやUNIXサーバにおける論理パーティショニングのように、IAサーバでも強力なパフォーマンスを持つスケールアップ型のエンタープライズサーバが適していると考えられがちだ。しかし、アプリケーションサーバが複数ある環境を仮想化する場合、負荷に応じて仮想マシンが稼働する物理サーバを切り替えられるブレードサーバは最適だ。したがって、多くのサーバベンダーはブレードサーバと仮想化を組み合わせたサーバ統合ソリューションを提案している。

 ブレードサーバと仮想化に関しては、2009年も引き続き注目度が高いトレンドであることは間違いない。その範囲も、例えば日立のブレードサーバ「BladeSymphony」のように基幹システム向けのスケールアップ型サーバを意識したものから、NECの「SIGMABLADE」を採用した大塚商会の「1台2役サーバパック」といった中小企業向けまで、幅を広げつつある。

仮想化を後押しするハードウェアの進化

他社に先駆け、いち早くNehalem搭載を発表した日立のBladeSymphony BS2000 他社に先駆け、いち早くNehalem搭載を発表した日立のBladeSymphony BS2000

 ブレードサーバと仮想化の組み合わせが注目されることになったのは、ハードウェアの目覚しい進化が大きな理由だ。現在は、どのサーバベンダーのブレードサーバも、2ウェイのラックマウントサーバと同等の機能、性能を有している。

 なかでも、プロセッサがマルチコア化し、消費電力を抑えながらパフォーマンスが向上した点が利いている。プロセッサに関しては、2008年末にAMDがクアッドコアOpteron(開発コード名:Shanghai)を発表し、インテルも新しいアーキテクチャ(開発コード名:Nehalem)のプロセッサをまもなく発表するなど、さらなる進化は確定次項。新しいプロセッサはいずれも、メモリアクセスが高速化されるとともに、より大容量のメモリをサポートする。これは、メモリ上に仮想マシンを展開するサーバ仮想化技術にとって非常に期待されるものである。

 なお、サーバベンダー各社は、最新プロセッサを搭載したブレードサーバ新製品を続々と投入する計画だ。すでに、日立が新しいブレードサーバのラインアップ「BS2000」を正式に発表しているが、他のサーバベンダーからも時を待たずして新製品が登場してくると考えられる。

 ブレードサーバのハードウェアに関するトピックは、プロセッサばかりではない。顕著な傾向になっているのが、ストレージの統合だ。ただし、ストレージの統合と言っても、サーバベンダーによってアプローチの仕方が少しずつ異なっている。例えば、日本HPの「HP BladeSystem」のようにブレードサーバのシャーシに格納できるストレージブレードをラインアップに加えたり、日立の「BS320 HDD拡張サーバブレード(2009年7月〜9月期に発売予定)」やNECの「Express5800/120Bb-m6」のようにハードディスクを6台内蔵できるブレードを用意したりといった例がある。ブレードサーバによってITの省スペース化を進めるという観点から、シャーシの中に収める選択肢としてユニークな製品を用意しているわけだ。

 同様に、各種ネットワーク機器をシャーシの中に取り込む例も増えている。日本IBMの「IBM BladeCenter」向けには、ネットワークアプライアンスのブレードがサードパーティからラインアップされているほどだ。また、サンのUltraSPARC T2プロセッサ搭載のブレードシステム「T2BC」を販売する米Themis社が、そのブレードプラットフォームにIBMのBladeCenterシャーシデザインを採用するといった実績もある。

BladeCenterのシャーシデザインに対応したCloudShield社のネットワークアプライアンス。IBMでは、従来はラック型アプライアンスとして販売されていたDeep Packet inspection用ハードウェアがBladeCenterプラットフォームに対応できたのも、その仕様をオープンにしているからこそだとしている

中小規模システムにもじわじわと広がる

 2008年には、中小規模システムにもブレードサーバの波が押し寄せた。これまでタワー型のサーバが導入されることが多かったオフィスにも、ブレードサーバが進出しつつある。

 100V電源に対応し、静音性を重視したオフィス向けのブレードサーバは、2007年から2008年頭にかけて、NECが「SIGMABLADE-M」、日本IBMが「IBM BladeCenter S」、日本HPが「HP BladeSystem c3000タワーエンクロージャ」を発表してから本格化。2008年には富士通が「PRIMERGYかんたんブレードセット」、日立が「BladeSymphony SP」というオフィスのフロア置き専用のブレードサーバを発表してからは、市場が活性化。こうした中小規模向けのブレードサーバに限ってみると「伸び率は200%以上」(富士通)にもなるという。このようにブレードサーバの裾野が広がってきたことから、2009年にはオフィス向けブレードサーバの品揃えが多様化しそうだ。

 一方で、エンタープライズサーバに目を向けてみると、スケールアップ型のサーバを意識したラインアップの拡充も進んでいる。前述したように、日立はBS2000という新しいブレードサーバのラインアップを追加したし、日本IBMは4ソケットに拡張可能な「BladeCenter LS42」を用意するなど、よりパフォーマンスが求められる分野にも、ブレードサーバが採用されつつある。

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