「右脳の復権」が分析麻痺状態の組織を救う職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2009年03月30日 14時31分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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社会性のあるしみじみする組織へ

 こうしたなかで、だんだん許されなくなってきたのは、曖昧さ、冗長性、感覚的な判断、ポンチ絵でのすり合わせ、職場でのおしゃべり、現場に出かけての現場の人たちとの触れ合いやだべり、職場旅行、合宿勉強会、運動会、同期の集まり、読書会、経験やエピソードの交換、年長者の知恵の共有、今は見込みがないが長期的には面白そうなプロジェクト、日記、社外研修や社外の講演会への自由な申し込み、徹夜での議論、アングラプロジェクト、上司に言われてもいないのに勝手に社外の人に合うようなインフォーマルな勉強、仕事とは関係ないようなテーマの勉強会の開催・・・。

 このようなことは今では忙しすぎてやっていられない状況だ。しかし、もう少し深く考えると、やれないのは忙しすぎて以上に、なぜやったほうがいいのか合理的な説明がつかない、効果を分析し検証できない、という理由によることが多いのではないだろうか。会社や上司のOKをもらうための理屈がつかない。論理分析志向の世の中ではいわば無駄なものなのだ。情報ならインターネットですぐに手に入るし、メールを出せば意思疎通は問題ない。

 しかし、これでは息が詰まってしまうし、楽しい職場にもならない。仕事もだんだんつまらなくなり、上司も職場のメンバーもみないつもカリカリしている。メンタル面が衰弱してしまう同僚も出てくるだろうし、不機嫌な職場にもなっていく。こんな状況を横目で見ながらも、なお左脳志向のまん延に対処できない自分がいる。

 しかし、世の中は次第にこうしたことに気づき始めている。成果主義や利益至上主義、株主価値至上主義は、すでにリーマン・ショック、サブプライム問題で破綻している。では、左脳至上主義へのアンチテーゼはなんだろうか。それが「人間性への原点回帰」であり、「右脳の復権」、「左脳と右脳のバランスの回復」なのではないだろうか。分析麻痺(Analysis paralysis)に陥った乾いた組織を、もっとましな組織、社会性のあるしみじみする組織に進化させていくことが必要だ。世界のあらゆる階層、人種のビジネスマンについて調査したホーフステッド流の分類でいえば、男性的過ぎてきた組織への女性的な価値観の注入とも言えよう。

 次回からは、右脳的組織による活性化について考えていきたい。四角い頭を丸く、柔らかくしていきましょう。

プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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