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» 2009年04月21日 11時48分 UPDATE

脱「ソフトウェア大手」:OracleによるSun買収――アナリストに聞く

米Oracleは米Sunを約74億ドルで買収すると発表した。IT専門の調査会社、アイ・ティ・アール(ITR)の内山悟社長など3人のITアナリストに聞いた。

[怒賀新也,ITmedia]

 米Oracleは4月20日、米Sun Microsystemsを約74億ドルで買収すると発表した。Sunの株式を1株当たり9.5ドルで買い取る。これについて業界アナリストはどうみているのか。IT専門の調査会社、アイ・ティ・アール(ITR)の内山悟社長およびシニア・アナリストの舘野真人氏、ERP研究推進フォーラムの委員を務める鍋野敬一郎氏に聞いた。

ITR社長の内山悟氏

uchiyama.jpg ITR社長の内山悟氏

 双方にとって「グッドチョイス」というのが第一印象です。ソフトウェア企業のOracleと、ハードウェアを中心とするSunという領域が違う者同士の合併なので、ユーザーの痛みも少ないと考えられます。

 若干製品が被るところもあります。SunのミドルウェアではEAI(エンタープライズアプリケーション統合)の旧SeeBeyond製品やオープンソースデータベースのMySQLあたりを守れるのかが多少心配ではあります。

 サーバ、ストレージ、SolarisなどSunの主力製品は守られると考えられます。Oracleはデータウェアハウスに高機能サーバを組み合わせたデータウェアハウスアプライアンス「Exadata」に力を入れています。現状は、HPのハードウェアをベースにした製品を提供していますが、ここについてOracleはそれほど固定的な考え方をしていないと考えています。

 (現状、SunのSPARCなどの開発を手掛けている)富士通とOracleの間で、多少複雑な関係が生じる可能性がありますが、両社の関係は深く、上位クラスのパートナー関係を結んでいます。その意味では、大きな問題はありません。

 全体としては、ユーザーにとって悪い話ではないという印象です。Sunにとっての相性はIBMよりも良いでしょう。Oracleのラリー・エリソン氏とSunのスコット・マクニーリー氏の仲が良いことも指摘できます。

ITRの舘野真人シニア・アナリスト

 IBMによる買収が破談した時点で選択肢は限られており、その意味では納得できるものでした。ただし「これほど早く動くとは」という驚きはあります。製品ポートフォリオの面からも、企業文化の面からも、IBMよりはOracleの方がSunの技術を上手に生かすと考えられます。Sunにとっても既存ユーザーにとっても、現時点で望みうる最善の結末となったといえます。

 Oracleの戦略上、Sunのハードウェアを手にする利点は確かに大きいですが、顧客ベースを手にできることの方が重要です。Sunが強いとされていた金融業やネット企業などに対して、アップセルをかけられる利点は大きいです。

 製品面ではJavaというプラットフォームを得ることが、Oracleのミドルウェア/アプリケーション戦略を加速させる大きな要素となり得ます。Sunの遺産をうまく取り込めば、具現化に手間取っているFusion戦略を前進させるきっかけになるかもしれません。特に、Microsoftの.NET陣営に対してはアドバンテージを持ったと言えます。

 今後の懸念材料として、Solaris、SPARCは当面サポートを継続するでしょうが、長期的に残すかどうかは微妙ともいえます。ハードウェアに対する経験のないOracleが、特に既存顧客のサポートなど、どのようにビジネスを展開するのかについてもやや不安があります。パートナー戦略の強化によって、ノウハウをいかに補うかがカギになるのではないでしょうか。

 その他、Sunの買収後、Oracleがクラウドコンピューティング戦略を本気で推進するかどうかは、現時点では判断がつきません。Oracleはこれまでクラウドに対してどちらかと言えば慎重なアプローチを取ってきました。本業であるデータベース事業への影響を考慮してのことでしょう。したがって、当面は慎重なスタンスを取ることも考えられます。

ERP研究推進フォーラムの鍋野敬一郎氏

 これでOracleは「ソフトウェア大手」から「総合IT大手」へと変わります。Oracleはネット広告など一過性のトレンドに左右されていない買収をしていると思います。IBMとの話が破断したこのタイミングでSunを買収しても、おそらく誰からも批判されないでしょう。救済合併のようにみえるからです。

 負債などを差し引いた実質的なSunの買収額は56億ドルといわれています。Oracleにとって、Sunの顧客ベースを5000億円程度で購入できるのは安い買い物といえます。

 今後、MicrosoftやSAPといったソフト専業ベンダーという業態がそろそろ終焉を迎えるかもしれません。特に、SAPはここしばらく、リニューアルやバージョンアップ、買収製品の統合ばかりで新しい製品をリリースしていません。いよいよ市場開拓能力が衰退しているのかもしれません。クラウドコンピューティングへの立ち位置がはっきりしていないのもSAPの課題といえるでしょう。

 次の業界再編の主役としては、Ciscoあたりが考えられそうです。

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