女性が社会貢献に取り組むきっかけを――Hershe.jp環境付加型SSLを導入

広く女性を対象に、美容や自立、そして育児や恋愛をテーマにしたコンテンツを通じ「社会貢献」意識の啓蒙を図るHershe.jp。取り組みの端緒として自らが環境付加型のEV SSL証明書を導入するというユニークな取り組みを行っている――。

» 2009年05月11日 08時00分 公開
[神野雄一,ITmedia]

 エコ、リサイクルといった掛け声のもと、企業の間でも急速に環境への意識が高まっていることは言うまでもない。ことIT業界においても「グリーンIT」というキーワードが一般化するほど、エコロジーへの取り組みが一般化している。

 このような状況下、Webサイトの開発・運営を事業とするハーシーのCEO、橋本真由美氏は、ランニングコストの一部が富士山美化に還元されるというユニークな環境付加型SSL「エコサイン」に着目。いち早く同社が運営する女性向けCSR(Corporate Social Responsibility:一般には「企業の社会的責任」。ハーシーでは拡大して解釈し「女性の社会に対する関わり方」の意をこの言葉に込める)ポータル「Hershe.jp」に導入したという。

女性が社会貢献に取り組むきっかけを作りたい

ハーシー代表取締役 橋本真由美氏 ハーシー代表取締役 橋本真由美氏

 エコサインとは、日本ベリサインから発行される「EV SSL証明書」を導入することで、その売上の10%が環境保全活動団体へと寄付される仕組みだ。現状ではその収益が、登山者によるゴミ、廃棄物の増加が問題となっている富士山の美化に当てられるという。

 ハーシーの事業の核は、企業や媒体社から受託してのWeb開発、コンテンツ制作だが、この3月、「企業とユーザーと一緒に社会貢献できる女性のためのCSRサイト」をコンセプトにHershe.jpをリニューアルオープンした。

 「社会貢献の大切さは、みんな分かっている。でも具体的な行動に移すのには、ためらいがある。そんな、問題意識はあるけど行動に踏み切れないという女性の手助けをする媒体を持ちたい、というのがHershe.jpを立ち上げたきっかけです」と橋本氏は話す。Hershe.jpを訪れた女性ユーザーは、美容やダイエット、そしてマネーや恋愛に関連したコンテンツを楽しみながら、自然とピンクリボン運動などへの募金や、ボランティア活動などに関われることになる。

 「Hershe.jp自体をすぐに収益化することは考えていない」と橋本氏は笑う。ハーシー社内にはプログラマーやデザイナー、ライターなどのスタッフが揃っており、内製で運営できることも強みとなっている。ただ、Hershe.jpが掲げるビジョンに賛同してくれる企業との「つながり」ができつつあるという。

 「エコサインの導入を決めたことも、Hershe.jpのビジョンからすれば自然なことでした」と橋本氏。どうせSSLは必要。それならば環境を意識したものにしたい、ということで採用にいたった。エコサインはその性質上、一般的なSSL利用に比べてコストは割高になる。しかし、企業、そして個人に対してもHershe.jpを通じ社会貢献を提案していくのであれば妥当であろうと判断し、導入を決断した。

 導入の手続きは、エコサインを運営するディレクターズのサポートを受けた。特に手間がかかることもなく、組み込まれたという。

大切なのは、押し付けがましくないこと

Hershe.jpのトップページには現在の募金数がカウントされている Hershe.jpのトップページには現在の募金数がカウントされている

 すでに述べたとおり、女性個人のライフスタイルを取り上げるだけでなく、社会貢献まで広げた関わりを啓蒙するという点が、Hershe.jpの特徴である。そのビジョンを実現するためには、ハーシーだけでは難しい面もあり、ほかの事業者の賛同を得ることがカギとなる。

 例えば個人向けFX取引を手がける証券会社の協力を得られれば、Hershe.jpを通じて口座を開設したユーザーから取引手数料(または利益)の一部を環境団体に募金してもらう、という取り組みが考えられる。またショッピングモールも計画されており、実装されればユーザーから購入代金の一部を募金してもらうこともできる。あまり「募金」を打ち出すと、読者も身構えてしまうかもしれないが、このように“ついで”の気軽さで社会貢献できるのであれば、読者の支持を得られるだろうと見込む。

 すでにHershe.jpのマイページ(会員専用ポータル)内には、「募金通帳」というポイントが貯まるとそのポイントを自由に寄付できる仕組みを備えている。「大切なことは、押し付けがましくなく、少しずつ環境保全や社会貢献に対する意識の啓蒙をしていくこと」と橋本氏は話す。

 こういった施策を実現していくには、EV SSL証明書の組み込みは必須といえる。サイトリニューアルと同時に、しかも環境付加型という形で導入できたことを、橋本氏は評価しているという。

 ただ、現状のエコサインには「自社がサービスを利用し続けたことでどの程度環境への貢献があったか」という指標はない。例えば「二酸化炭素何キロ分貢献しました、とか木を何本分植えたのと同じ、といった分かりやすい効果に換算して可視化されるといいですね」と橋本氏は期待する。

 Hershe.jpが当面目標とする会員数は3万人。これは競合となりうる媒体と比較すると控えめな数字と言えなくもないが、「サイト拡大を狙うというよりも、内容を理解しビジョンに共感してくれるコアなユーザーに集って欲しい」と橋本氏は話す。

 当初はターゲットを「働く女性」に絞るプランもあったという。しかし、女性のライフスタイルはなにも働くことや自立することだけではない。また、女性としてどのように地域や社会と関わるか、どう環境に配慮できるか、そして人に対してどれくらい気配りができるかといった点を資格化した「女性版 CSR検定」の実施も計画しているという。


 社会貢献・環境保全に関心がある人は、決して少なくない。同時に日本のお国柄なのか、積極的に問題提起や行動をする個人は多くないという実情もある。Hershe.jpは今を生きる女性に向けて、社会貢献に対するハードルを下げる取り組みを続けていく。

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