わたしたちはGoogle Waveの奴隷になるのか

Google Waveはいつか、すべてのコミュニケーションや文書を飲み込むかもしれない。だがわたしは、銀行にお金を預けるのと同じように、Googleをある程度信頼してデータを預けられる。

» 2009年06月29日 07時30分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 皆さんは数週間前にGoogle Waveについての説明を読んだことだろう。これは電子メール、インスタントメッセージング(IM)、写真共有などのツールを1つにまとめた実験的なオープンソースのコラボレーション・コミュニケーションツールだ。Googleは5月28日にGoogle I/Oでこのツールを発表し、MicrosoftのBingの発表から話題を奪ってしまった。

 Waveを紹介したGoogleのソフトウェアエンジニアリングマネジャー、ラーズ・ラスマッセン氏は、次のように説明している。

 「wave」は会話と文書に相当するパーツだ。ユーザーはwaveで、リッチフォーマットテキスト、写真、動画、地図などを使ってコミュニケーションしたり、共同で作業したりできる。Google Waveでは、waveを作って、そこに人を加える。waveに参加した人は皆、リッチフォーマットテキストや写真、ガジェット、Web上のほかのソースからのフィードを使える。返信を挿入したり、waveを直接編集することができる。同時進行でリッチテキスト編集が行われ、ほかのユーザーがwaveに入力している内容がほぼ瞬時に画面に表示される。

 ユーザーは後からwaveで会話と文書のスレッドを閲覧することができる。2人のユーザーが1つのwaveを開くと、メッセージがGoogleのサーバを経由して相手のブラウザに送られ、IMのようなコミュニケーションをすることができる。

 タイプしている文字が相手のブラウザにほぼ瞬時に表示されるので、「送信」ボタンをクリックしてメッセージを送信する必要はない。真のリアルタイム通信だ。

 チェックボックスにチェックを入れれば、書いた文章を相手に見せられるようになるまで非公開にしておくことができる。会話の参加者を増やしたいときは、コンタクトリスト上のユーザーをブラウザウィンドウにドラッグ&ドロップするだけでいい。

 ほかにもたくさんの機能があり、そのどれもがWaveを素晴らしいものにしている。

 クールかと言えば、そうだと思う。野心的かと言えば、その通りだが、これはオンラインコミュニケーションの未来が向かう先だ――少なくとも、Googleはそう望んでいる。わたしもそう望んでいる。電子メール、IMなど、別々のアプリケーションを使うことに嫌気がさしていない人はいないだろう。これらのアプリケーションが予定表アプリと同期化し、次第にFacebook、Twitterなどのソーシャルネットワークと連係するようになっているのを、わたしたちは喜んでいる。

 しかし、なぜコミュニケーションためのアプリが幾つもあるのだろうか? なぜそれを統合して、連係させ、もっとスマートで統合されたコミュニケーションプラットフォームを作れないのだろうか? Google WaveをFacebookやTwitterなどのネットワークと統合すればいいではないか。

 重要なのは、GoogleがWaveを最新のAndroidブラウザとAppleのiPhoneでデモしたということだ。Waveはモバイル機器で動かなくてはならない。そうでなければ趣旨に反する。

 Search Engine Landを運営するダニー・サリバン氏とGigaOMのジョーダン・ゴルソン氏はWaveにあまり感銘を受けていないが、Yahoo!がYahoo! Mailでできたらいいのにと思っているものを備えた完成版がリリースされれば、彼らも論調を変えるだろう。

 このため、このような統合ソリューションの枠組みに取り組んでいるのはGoogleだけだと思ってはいけない。IBMは定期的にコラボレーションプラットフォーム「Lotus Notes」のアプリを連係できるようにしている。Microsoftも同様に、SharePointツールの統合を計画している。

 主な違いは、Googleは自社の既存の製品と同様にWebから作り上げており、レガシーパッケージから始めているのではないという点だ。またGoogleはWaveをオープンソース化しており、開発者に協力を求めている。

 既に分かっているように、IBMとMicrosoftをオンラインコラボレーションに駆り立てているのはGoogleだ。GoogleやFacebookなどが革新を進めているオンラインで、これらの伝統あるソフトメーカーが全力を出せるようになるまでにどのくらいかかるだろうか。

 もちろん、懸念を持つ人もいる。Fast Companyのクリス・ダネン氏がWaveへの警告を発しているが、どん欲に情報を飲み込むGoogleを以前から警戒している人たちは、自分や友人がGoogleのWaveを使うことに気乗りしないだろう。多くの人は既に、GoogleがGmailを通じて集めているデータに憤慨している。

 自分のコミュニケーションアプリやWiki文書がすべて、Google Waveを通過したらどうなるか、想像してみてほしい。オンラインバンキングや請求書の支払いアプリ用に保存している自分のデータのすべてに、Googleの手が触れることになるのだ。吐き気を覚える人もきっといるはずだ。突き詰めれば、Googleにデータを管理されることを受け入れられるかどうか次第だと思う。Google Waveの奴隷になることは必然なのかもしれない。

 わたしにとっては、銀行にお金を預けるのと同じように受け入れられることだ。預けたお金に何も起きないという保証はないが、ある程度信頼しなければならない。お金はマットレスの下に保管することもできるが、この電子化時代に、データはそうするわけにはいかない。

 Google Waveを早く試してみたい。皆さんは年内に始まるテストに登録しただろうか? 初めの段階から参加するのはいいことだ。わたしたちがテストし、Googleにフィードバックを送れば送るほど、Waveはいい製品になるはずだ。

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