富士通の社長交代にみる事業継続性とガバナンスWeekly Memo(1/2 ページ)

先週25日に発表された富士通の社長交代は、まさに突然のサプライズだった。同日夜に行われた記者会見を通じて筆者が強く感じたのは、事業継続性とガバナンスの重要性だった。

» 2009年09月28日 08時45分 公開
[松岡功ITmedia]

会見冒頭で「企業活動の継続性」を強調

 「本日開催の取締役会において、病気を理由に代表取締役社長および取締役の職務を辞したいという野副州旦氏からの申し出が承認された。急なことだが、企業活動の継続性を勘案し、当面、私が代表取締役社長を兼務させていただくことになった」

 富士通の間塚道義会長は、先週25日夜に同社が開いた記者会見でこう切り出した。続けて間塚氏は、「まずはこの緊急事態の影響を最小限に抑え、しかるべきタイミングで後任社長を選びたい」と述べ、野副氏の路線を引き継ぎつつも社長職を長く務める考えはないことを強調した。

 間塚氏によると、野副氏は同日午前に開かれた定例取締役会の前に「病気療養のため社長職を全うできない」と申し出た。野副氏から後任の指名はなく、取締役会で間塚氏の社長兼務が決まったという。後任社長については、早期に任意の指名委員会を設けて選任を急ぐ方針だ。

 さらに詳細な会見内容については、既に関連記事などで報道されているので参照いただくとして、ここでは筆者が会見を通じてあらためて重要性を強く感じた、企業の事業継続性とガバナンスに焦点を当てて、今回の突然の出来事をケーススタディとしたい。

 「緊急事態の影響を最小限に抑えたい」として野副氏の路線を引き継ぐ意思を明確にした間塚氏は、事業継続性についても「今年7月に策定した中期経営計画を変更することはない。この計画はみんなで考えてつくったもの。現在、これをベースに各ビジネスグループで具体的に落とし込んで推進しており、そのさらなる進ちょくに注力していきたい」と強調した。

 とはいえ、社長交代会見の冒頭で「企業活動の継続性」という言葉が使われることはめったにない。まさに緊急事態となった同社は、すぐさま間塚氏の社長兼務を決め、会見を開いて事業継続性への懸念の一掃に努めた。

記者会見に臨む富士通の間塚道義会長兼社長

 事業継続というと、新型インフルエンザなどの感染症や大規模災害が経営に及ぼす影響を最小限にとどめる「事業継続計画(BCP)」が最近注目されているが、強力なリーダーシップを発揮してきた経営トップが突然いなくなった今回のようなケースも同様の危機意識と事前の対策が必要なのではないだろうか。

 その対策として、重要になってくるのがガバナンスである。

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