GoogleのWindows排除はChrome OSのスムーズな導入が狙い?

GoogleがWindowsの社内利用を停止しようとしているといううわさは本当かもしれないが、その理由は“セキュリティ上の懸念”ではなく、別のところにあるのではないかという見方がある。

» 2010年06月03日 15時38分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 伝えられるところによると、米Googleは2万人余りの従業員の一部に対し、セキュリティ上の懸念からMicrosoft Windowsで動作するコンピュータの利用を中止するよう指示しているようだ

 英紙Financial Timesは複数のGoogle社員の話として、一部のGmailアカウントに対する中国からのサイバー攻撃事件を機に、Googleは1月、米AppleのMac、もしくはLinuxで動作するマシンの利用を従業員に本格的に促し始めたと伝えている。

 Googleの広報担当者が6月1日に米eWEEKに語ったところによると、同社では個々の業務上の事柄についてはコメントしない方針だとしながらも、「当社は常に業務効率の向上に取り組んでいる」という。

 Googleの従業員たちは、今回の決定の背後にはセキュリティ上の理由があると考えている(あるいはそう言うように指示されている)ようだ。これは確かに納得できる説明だ。というのも、Windowsマシンは多くの欠陥と脆弱性を抱えていた前歴があり、ウイルスにとっては肥沃な繁殖地になってきたからだ。

 しかしそれよりも、Windowsは広く普及しているOSであり、多数のバージョンやアップグレードが提供されてきたこともあり、ハッカーたちにとって格好の攻撃目標になってきたと言うべきかもしれない。

 米調査会社Net Applicationsによると、Windowsは全世界のコンピュータの約91%に搭載されている。

 今回の動きには、もう1つの可能性が考えられる。Googleが開発中の「Chrome OS」のスムーズな導入を狙ったものではないかということだ。Chrome OSは、Netbookやタブレットコンピュータ上のGoogleのChromeブラウザを通じてWebアプリケーションを実行することを目的として設計された軽量型OSだ。

 Googleでは、ChromeブラウザおよびChrome OS搭載マシン向けのWebアプリケーションを販売する「Chrome Web Store」を立ち上げる計画だ

 業界アナリストのロブ・エンダール氏によると、Chrome OSの投入準備が、Google社内でWindowsの利用を段階的に中止するという決定の最大の動機だとしている。これは、米Sun MicrosystemsがSun Ray 1の利用を従業員に促し、AppleがMac OSの利用を従業員に促したのと同じだという。

 「GoogleはChrome OSへの移行に向けた準備として、次にMacを社内から排除すると思う。その理由として“自由”とか何とか言うのではないだろうか」とエンダール氏は話す。

 eWEEKが独自にGoogleの従業員に取材したところ、彼らの多くはMacを利用しており、Windows用コンテンツには仮想化ソフトウェアのParallelsを使ってアクセスしている。Googleの共同創業者サーゲイ・ブリン氏は、ChromeブラウザのMac版のリリースが遅れたことを嘆いていた。

 米調査会社IDCのアナリスト、アル・ヒルワ氏は、GoogleとMicrosoftとの競争の激化が、Windows利用中止の決定の背景にあるようだと指摘する。実際、GoogleはMicrosoft OfficeからGoogle Appsへの移行をユーザーに促すのに躍起になっている。

 「純粋にGoogle社内のセキュリティを改善したいという理由よりも、競争的な動機の方が強かったのではないかと疑わざるを得ない。GoogleはMicrosoftと直接競合するOS、Webブラウザ、ツール、プロダクティビティソフトウェアを持っており、これは彼らにとって当然の動きだ。一般的に言えば、ソフトウェアをテストする目的でもない限り、Windowsマシンの周囲に多数のMacが導入されているケースは珍しい」とヒルワ氏は語る。

 「一方、目立たないソフトウェアを利用することでセキュリティを確保するという考え方もあり、これは特定の状況では非常に効果的だ。もしわたしが、ウイルスやマルウェアの攻撃ターゲットになりにくい環境を作りたい考えれば、最も目立たないソフトウェアを利用するだろう。そこには、独自に開発したコンポーネントも含まれるかもしれない」(同氏)

 Chrome OSがまだ商用リリースされていないことを考えれば、これほど目立たない存在はなく、ヒルワ氏の主張にもうなずける。

 「しかしこの作戦は、ターゲットを厳密に絞り込んだ攻撃に対しては必ずしも有効ではない。攻撃者は狙い定めた目標を攻撃するのに、あらゆる手段を講じるからだ」とヒルワ氏は付け加える。

 「これは個人的な意見だが、あまり普及していないソフトウェアの方が、基本的な脆弱性を抱えている場合も多い。広範なフィールドテストや広範な配備で発見されるような脆弱性が見逃される可能性があるからだ」(同氏)

 いずれにせよ、多くのGoogle社員が既にChrome OSを使っていることは間違いなさそうだ。同社内に何人のChrome OSユーザーがいるのかは、依然として同社しか知らない秘密だ。

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