ソフトブレーンが突きつけたSalesforce.comへの挑戦状Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年06月28日 08時19分 公開
[松岡功,ITmedia]
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営業プロセスマネジメントで勝負

 営業BI機能では、経営者やマネジャーが常に意識しなくてはならない営業プロセス上の経営指標を表示するダッシュボード機能や、蓄積した情報を分析するためのアナライザー機能を標準装備。こうした機能によって、予算達成を意識したプロセスマネジメントを実現できるとしている。

 例えば、予算達成に対して標準化されたプロセスがうまく実行されているかどうか、プロセスに欠点はないか、人材は適任かどうかなどをリアルタイムに把握し、改善につなげることができるようになるという。

ソフトブレーンの豊田浩文社長 ソフトブレーンの豊田浩文社長

 こうした機能強化とともに、同社は新サービスを機にあらためて注力しようとしていることがある。海外展開だ。豊田浩文社長によると「クラウドベースによって海外でもシームレスに新サービスを利用してもらえる環境を整備していく」とし、今年10月をメドに英語、中国語にも対応させる計画だ。

 海外展開については現在、中国に進出している数十社の日系企業に導入実績があるという。ただ、先ほど「あらためて」と述べたのは、英語圏では再起を期した挑戦になるからだ。宋氏によると「実はこれまで二度、米国市場への進出を試みたが、いずれも力及ばず引き上げた」という。そうした経緯もあってまずは潜在需要が広がりつつある中国市場に注力する構えだが、英語圏へ進出する野望は捨てていないようだ。

 営業支援ソフトのグローバル市場では、クラウドサービスで急成長を遂げている米Salesforce.comが大きく立ちはだかっている。日本市場でもeセールスマネージャーにとってSalesforce CRMは最大のライバルだ。新サービスはそのライバルに対し、クラウドという同じ土俵で勝負に挑む格好となる。

 では、新サービスとSalesforce CRMの違いは何か。アドバンテージはどこにあるのか。記者会見の質疑応答で聞いてみると、豊田社長はこう答えた。

 「eセールスマネージャーならではのプロセスマネジメントを前提とした機能設計を行っている点。新サービスで強化した機能もすべて営業のプロセスに特化している。さらにSalesforce CRMは独自のクラウド基盤だが、新サービスはマルチクラウド対応であることも大きな違いだ」

 クラウド基盤については、ここでは選択肢という捉え方にとどめておくとして、新サービスが広く海外で受け入れられるポイントになるのは、豊田社長の言うeセールスマネージャーならではのプロセスマネジメントの効果が認められるかどうかにかかっているといえそうだ。これは取りも直さず、日本生まれの営業支援ソフトが広く海外で通用するかどうかの挑戦でもある。

 と、少々意気込んで前問に続けて「日本のソフトベンダーが海外で成功するためのポイントは何か」と聞いてみた。すると、元アップル日本法人代表で6月14日にソフトブレーンのマネージメント・アドバイザーに就いたばかりの山元賢治氏がやんわりとこう答えた。

 「ソフトそのものを前面に出すよりも、今回の新サービスでいえば、日本で育んだプロセスマネジメントによって、国は違ってもそれぞれの企業の営業力アップをお手伝いするといった姿勢がまず大事。ITの枠の話ではないと思う」

 確かに、ビジネスソフトの中身はビジネスプロセスそのもの。ITの枠の話ではないところに、日本の活路があるのかもしれない。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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