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» 2010年09月24日 08時30分 UPDATE

日本では成功モデルを地道に積み重ねる シスコ・平井社長

新社長に先月着任したばかりのシスコシステムズ・平井氏に、同社がグローバルで注力する新たな事業について話を聞いた。

[伏見学,ITmedia]

 米Cisco Systemsが都市開発に参入――。数年前から同社が積極的に力を注いでいる事業が、交通システムやオフィスビル、医療機関など都市を構成するあらゆるものをIPネットワークでつなぐという「Smart+Connected Community」だ。日本でも既にいくつかの導入事例が出ているという。この取り組みについてシスコシステムズの社長に就任したばかりの平井康文氏が現状および今後の方向性を語った。


世界中の都市でプロジェクトが進行

シスコシステムズの平井康文社長(上海万博の会場にて) シスコシステムズの平井康文社長(上海万博の会場にて)

 現在、シスコシステムズは2つの事業分野に力を注いでいます。1つがクラウドコンピューティング、もう1つが「Smart+Connected Community(S+CC)」です。S+CCとは、交通、ユーティリティ、不動産、セキュリティ、医療、政府、教育、スポーツ&エンタテイメントという8つの分野から成るサービスインフラ基盤です。具体的には、これらの運用管理を統合したプラットフォームである「Community+Exchange」の上で、「Community+Connect」という住民に向けたサービスが提供される仕組みになっています。

この1年半でS+CCに関するプロジェクトを、仁川やアムステルダム、サンフランシスコなど全世界の都市で26件立ち上げました。日本でもいくつかの事例が生まれています。和歌山市の小学校や教育研究所などにビデオ会議システム(テレプレゼンスシステム)を導入して、ネイティブスピーカーによる外国語の遠隔授業を実施したり、北海道大学およびドラッグストアのツルハと協力して、市民が店舗からテレプレゼンスを通じて直接医師に健康相談できたりするプロジェクトが進んでいます。

 日本では、行政の組織的な問題などから、海外のようにトップダウンでサービスを一気に広範囲で導入するのは難しいと考えているため、ある都市では医療のS+CCが、別の都市では公共サービスのS+CCが、といった具合にサブシステム単位で導入されていくと見ています。そうした事例を少しずつ地道に積み上げ、成功モデルとしてさまざまな地域に横展開していくことが好ましいです。

 その流れを加速させるため、日本では今年度からS+CCを積極的に推進する専属チームを立ち上げて、新しいパートナーとの関係作りや新たなソリューション構築などのビジネス開発に取り組んでいます。当社の試算によると、S+CCはCiscoグローバル全体で5000億ドル(5兆円)程度の市場規模があります。S+CCというマーケットそのものを作り上げるべく、多くのリソースを投入しているというわけです。

B2B、B2CからB2Sへ

 なぜ今、S+CCのような取り組みが注目を集めているのでしょうか。その背景には都市のメカニズムの変化があります。今後5年間で5億人が都市に移住し、2025年までに新たに100万人都市が100も増加することに加えて、世界トップ20の巨大都市が地球のエネルギーを75%消費する時代が来ると予測されています。

 このように巨大都市が乱立する中で、都市を活性化し、効率的に運用するには何が必要でしょうか。その核になるのがインターネットだと考えています。今やインターネットが新しい社会基盤となり、エンドツーエンドのコミュニケーションやコラボレーションが地球規模で起きています。元々インターネットはB2Bの世界で足場を固め、2000年代になってコンシューマー分野に普及したことで、一気に価値が高まりました。次のフェーズはB2S、つまりソサイエティ(社会)にインターネット産業が広がっていくでしょう。このような理由から、ここ数年でS+CCに対するニーズは高まっています。

 S+CCを実現するための技術は既にそろっているのですが、実際に都市に導入するためにはいくつかの条件があります。1つ目は政府のリーダーシップです。どのような都市を作りたいのか、国を作りたいのかという明確なビジョンが不可欠です。2つ目はパートナーシップです。S+CCを実現する都市は複雑な構造を持っており、決してシスコが単独で構築できるものではありません。建設会社やデベロッパー、機器メーカー、セキュリティ会社など、パートナー企業の協力があってこそ成功するものだと考えています。

 こうしたパートナーのエコシステムを築くために何をすべきでしょうか。わたしはシスコ自身の役割を明確にすべきだと考えています。シスコはあくまでIPサービスのプラットフォームを提供するだけにとどまり、その上に医療、教育、公共サービスなどを得意とする各プレイヤーが参画するという構図が重要です。シスコがパートナーを囲い込むような戦略ではS+CCは成功しません。これはクラウド事業にも言えることです。シスコがクラウドのプロバイダーになるのではなく、イネーブラー(推進者)として立ち振る舞うべきです。(談)

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