ファイルをTCPの30倍で転送――独自プロトコルによる高速通信「クラウド コネクト」

TCPと比較して約20〜30倍の速度でグローバル間ファイル転送を行えるという高速通信サービス「クラウド コネクト」をデータホテルが開始。「Winny」開発者の金子勇氏が設立したSkeedが共同開発した。

» 2012年06月12日 16時39分 公開
[ITmedia]
photo Skeed Silver Bullet ProtocolとTCPの実行性能比較

 NHN Japan子会社のデータホテルとSkeedは6月12日、グローバル間のデータ転送を高速化させるクラウドサービス「データホテル クラウド コネクト」を発表した。Skeedが独自開発した通信プロトコル「Skeed Silver Bullet Protocol」(SSBP)の採用で、標準プロトコルのTCPと比較して約20〜30倍の速度でグローバル間ファイル転送を行えるという。同日からβ提供を開始し、今夏に正式サービスとしてリリースする予定。

 データホテル クラウド コネクトは、米国、ブラジル、アイルランド、韓国、オーストラリア、日本の6カ国10カ所に設置されたデータホテルの通信拠点を仮想ネットワークで結び、国をまたいだ2点間の通信スピードを高速化させるというサービス。例えば日本からアイルランド・ダブリンに1Gバイトのデータを送信する場合に、従来のFTP通信で90分かかっていたのを3分に短縮するという。

photo 「国内外の2点を“トンネル”のようにつなぎ、高速通信を実現するイメージ」(データホテルの嶋田健作社長)
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 同サービスを活用して企業が自社内外のデータセンターやクラウドサービスなどを結ぶことで、通信速度を向上できるという。国内企業が海外拠点との間で大容量のデータを共有したい場合や、海外向けにWebサービスを提供したい場合、海外のクラウドサービスを利用したい場合、災害対策として海外のデータセンターにデータをバックアップしたい場合──などに役立つととしている。

photo Skeedの金子勇氏

 従来のTCP通信は、通信距離が長くなればなるほど遅延が大きくなるほか、回線品質が低い場合にパケットロス率に応じて自動で実効性能が低下してしまうという問題があった。Skeedは「Winny」開発者として知られる金子勇氏(Skeed創設者/社外取締役)の協力のもと、「TCPでは使いきれていなかった帯域をアグレッシブに使える」という独自プロトコル「SSBP」を開発。SSBPではTCPと比較し、通信距離が長い場合や回線品質が低い場合の通信が「ものすごく速くなる」(金子氏)という。

photo データホテルの嶋田健作社長

 データホテルは新サービスをクラウドサービスとして提供する。企業は既存のWindows/Linuxサーバに専用アプリケーションをインストールし、フォルダに転送先を設定すれば利用できる。「例えば“米国行き”というフォルダを作っておけば、そこにファイルを放り込むだけで、瞬時に米国に送れるというイメージ」(データホテルの嶋田健作社長)

 利用料金は、データ転送量や同期用のストレージ容量に合わせた従量課金プランと、10万円/月の定額プランを用意する。今後は他社クラウドサービスとの連係も予定し、例えば米Amazon.comのクラウドサービスをデータホテル クラウド コネクト経由で提供するサービスなどを「ユーザーに分かりやすい価格体系で提供する」(嶋田社長)としている。

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