CitrixのCEOが語った次世代ワークスタイルとクラウド像Citrix iForum 2012 Report

シトリックスがユーザー向けカンファレンスを都内で開催。米CitrixのテンプルトンCEOは、「どこでも仕事ができ、どこへでもITサービスを提供できるようにする」との同社のビジョンを披露した。

» 2012年07月17日 18時38分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは7月17および18日に、国内ユーザー企業を対象にしたカンファレンス「Citrix iForumu 2012」を都内で開催。初日の基調講演には米Citrix Systemsのマーク・テンプルトン会長兼CEOが登壇し、モバイルワークスタイルとクラウドをテーマに同社のビジョンを説明した。

米Citrix Systemsのマーク・テンプルトン会長兼CEO

 テンプルトン氏は冒頭、同社の戦略テーマとして「VUCA」を挙げた。VUCAとは、「volatility(変動性)」「uncertainty(不確実さ)」「complexity(複雑さ)」「ambiguity(あいまいさ)」の頭文字を取ったもので、元々は1999年に北大西洋条約機構(NATO)で提唱された軍事用語。国境という境界の概念があいまいになり、世界の構図が複雑で不明瞭になっていくというこの言葉を、同氏はITの世界に当てはめて取り上げた。

 「日中はオフィスで仕事、夜は家庭でプライベート」という伝統的なライフスタイルが変化し、これからは24時間の中で仕事とプライベートの時間を柔軟に使い分けて調和の取れたライフスタイルになっていく。場所や時間、手段などの制約に捉われずそれらがシームレスにつながることが重要であり、そのための仕組みを提供するのが同社のビジョンだという。

 「今の時代は“VUCA”にunusually(非常に)を加えた“VUUCA”という方が適切だろう。ワークススタイルの在り方が急速に変化する中で、スムーズにつながることが求められている」(テンプルトン氏)

 新たなワークスタイルに適応するには、まず思考を変える必要があるとテンプルトン氏。「オンプレミスのシステムとケーブルを介してオフィスのコンピュータで利用することが“常識”だった。モバイル環境から無線ネットワークでクラウドにアクセスするのは“例外”だった。しかし、今はこの“例外”が常識になってきている」

 ここ数年、同社が展開する製品やサービスはこうしたビジョンを具現化するためのものであり、クライアントからデータセンターのクラウド基盤まで広範なものとなっている。基調講演ではデモを交えながら、クライアント側のソリューションとして、オンライン会議などのクラウドサービスや仮想デスクトップ、アプリケーション仮想化、ゲートウェイ、ネットワーク配信技術などの最新の取り組みが披露された。

これからのクライアントプラットフォームを取り込むというコンセプトで、iOSやAndroid、HTML 5、Windows 8のロゴを組み合わせた“アイコン”も披露

 クラウド側ではプライベートクラウドの延長線のパブリッククラウドという見方を基に、オンプレミスのアプリケーションや外部を含むクラウドコンピューティング環境を包括する形で社員などのエンドユーザーにITサービスを提供するビジョンを示す。

 具体的なソリューションとして同社は、クラウド間接続の「CloudBridge」やクラウド基盤構築のCloudStackの商用版「CloudPlatform」などを展開する。基調講演ではその先の取り組みとして、5月の米国でのカンファレンスで発表した「Project Avalon」の概要も紹介された。

Windows 8のMetroアプリケーション化したCitrix Receiverも紹介

 テンプルトン氏は、同社の目標が「どこでも仕事ができ、そのためのIT環境をサービスとして柔軟に提供できるようにすること」だと語っている。


 基調講演後にテンプルトン氏は国内メディア各社の質疑に応じた。主なやり取りは以下の通り。

―― クラウド基盤のオープンソースプロジェクトへの取り組みについて、2011年に「OpenStack」に積極的だったCloud.comを買収したが、今では(もう一つオープンソースプロジェクトで、Apacheで取り組む)「CloudStack」を推しています。戦略を変えた理由は何ですか。

テンプルトン 理由は二つあり、一つはOpenStackでの成果が当社の満足できるものではなかったこと、もう一つはそのために2つのプロジェクトに関わり続けるには効率が良くないと判断したためです。このため、Cloud.com買収から半年後に戦略を変更せざるを得ませんでした。

 Amazon Web Servicesで既に実績あるCloudStackは、“今現在のもの”であり、これを採用するプロバイダーがさらに増えていくでしょう。当社としてはこうした顧客のニーズに応えなくてはならず、その点でもユーザーの求める機能などをCloudStackプロジェクトの方が早く実現できると判断したのです。

基調講演後のメディア各社の質疑に答えるテンプルトン氏

―― Citrix Receiver(仮想アプリケーションやデスクトップ環境をクライアント端末で利用するためのソフト)は多種多様なデバイスに対応しているが、基本コンセプトは「Windows環境を表示する」という点にあると思います。Windows以外の環境の広がりが進む中で、どう位置付けていくのでしょうか。

テンプルトン 以前はあらゆるデバイスでWindows環境を表示する、というのが特徴でした。この定義を再構築したいと考えていますが、今後は「ユニバーサルクライアント」というものになるでしょう。iOSやAndroid、HTML 5のネイティブアプリケーションを取り込み、企業のIT部門がポリシーやコンプライアンスに適応して管理できる、そういうものにしたいと考えています。この点はパートナー企業の取り組みが先行しており、当社も注目しているところです。

―― テンプルトン氏はどんなデバイスを日常業務に利用していますか。

テンプルトン 私はデバイスが大好きなので、ありとあらゆる種類の製品をテストも含めて使っています。オフィスの中は仮想デスクトップ、オフィスの外ではCitrix Receiverをインストールして(サービスやアプリケーション)を使います。今回の来日ではMacBook AirにiPad、iPhoneといった具合です。

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