企業のワークスタイル変革の支援に注力、シトリックスの2012年事業戦略

シトリックスは、デスクトップ仮想化とクラウド環境の利用拡大に向けた戦略を展開すると発表した。

» 2012年02月24日 15時16分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは2月24日、2012年の事業戦略を発表した。企業におけるワークスタイルの変革を支援するとのメッセージを発し、デスクトップ仮想化とクラウド環境の利用拡大に向けた製品およびサービスを展開すると表明している。

 会見したマイケル・キング代表取締役社長は、同社が捉える企業IT市場の大きな動向として「モビリティの課題」「企業向けクラウドの進化」「クラウドサービスの構築」という3つがあると説明。ユーザーがあらゆる場所でデスクトップ環境を利用しながら効率的に仕事を進められるようにすること、また、こうしたユーザーを柔軟に利用できるクラウドやネットワークで支えていくことが同社の目指す方向だと述べた。

同社の事業領域をイメージ化したもの

 デスクトップ仮想化に関わる2011年の事業動向では基盤製品XenDesktopの大規模導入事例が増加したという。1000ライセンス以上のユーザーが1000件を突破し、うち80件では1万ライセンス以上を利用。こうしたケースは大企業や金融機関、公共・教育分野で目立つ。

 これまで企業などがデスクトップ仮想化を導入する最大の狙いは、デスクトップ環境をサーバに集約することによるセキュリティ対策や運用管理の強化であった。現在でもその重要度は高いが、場所やデバイスに左右されずに利用できるという利点を生かして、外勤社員の業務効率の改善や、在宅勤務といった多様なワークスタイルの導入、災害時の事業継続手段などに移りつつあるという。

 2012年はデスクトップ仮想化向けに、業務アプリケーションをモバイル対応させるための「XenApp 6.5 Mobility Pack」、その開発者向けツールの「Mobile Application SDK」、中小企業向けにデスクトップ仮想化に必要なソフトウェアをパッケージ化した「Citrix VDI-in-a-Box」などを展開する。

新製品・サービス 概要 提供(予定)時期
XenApp 6.5 Mobility Pack タブレット端末の操作性に最適化した仮想デスクトップ環境の提供 提供済み
Mobile Application SDK 業務アプリケーションのモバイル対応や機器固有の機能との連携機能を開発するキット 提供済み
Citrix VDI-in-a-Box デスクトップ仮想化に必要なソフトウェアをパッケージ化。利用規模の拡大にサーバの追加のみで対応可能 4月1日
Citrix AppDNA 仮想化、OSおよびWebブラウザのアップグレードなど業務アプリケーション環境の移行を支援 2012年下半期
Citrix Receiver with Follow-Me Data クラウド上に展開したファイルの閲覧・編集・保存・共有、遠隔操作による削除が可能 2012年下半期
iPadで表示するWindows 7のデスクトップがMobility Packでどう変わるかというデモ。使用しなければPCのそのまま画面(左)だが、使用することでスタートメニューがiPadで操作しやすい位置や表示に変わる

 マーケティング本部の伊藤利明本部長は、2015年までにモバイル向けアプリケーションの開発案件がPC向け開発案件の4倍になるとの見方を示し、「メインフレームからWindows上にある業務システムまで、非常に多くのアプリケーションがモバイル化していくだろう」と語った。Mobile Application SDKは無償利用できる。特に大規模な業務システムを抱える企業でのモバイル利用の拡大につなげたい考えだ。

 クラウド環境向けには、OpenStackベースのクラウド基盤構築ソリューション「Citrix CloudStack」を強化し、バージョン3.0として3月末までに提供を開始する。アプリケーション配信や負荷分散、ネットワークセキュリティ機能を搭載するNetScalerの運用管理が可能なほか、サービス管理ポータルの「CloudPortal」を搭載する。

CloudStack バージョン3.0の構成

 また、クラウド上の複数のアプリケーションやサービスをユーザーに配信する機能を提供する「Citrix CloudGateway」ではXenAppおよびXenDesktopのユーザー向けに、Windows上で稼働するアプリケーションなどに限定してその機能を無償で利用できるExpress版を提供。NetScalerの機能をオンデマンドサービスとして利用できる仕組みも提供し、企業のプライベートクラウド環境と外部のクラウドサービスを接続する「CloudBridge」の普及も図っていく。

 このほかに同社がクラウド事業者として提供するオンラインサービスの日本での展開も計画。約6億ドルを投じてCloud.comやKavizaといったクラウド事業者をこれまでに買収しており、海外では急成長を見せているという。

会見するキング社長(左)と伊藤マーケティング本部長

 仮想デスクトップやクラウドの利用拡大に向けてキング氏は、「より多くの事例やノウハウを広く共有できるようにすることが重要だ」と話し、ユーザーコミュニティーの創設やトレーニングサービスの拡充にも取り組むとした。

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