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» 2013年04月11日 08時00分 UPDATE

エンタープライズの世界にも「DevOps」は浸透するのか

開発と運用の連携性を高める「DevOps」。ネットサービスを中心に浸透してきたが、伝統的なエンタープライズシステムの領域にも広がるのか。その普及を狙う日本IBMに聞いた。

[國谷武史,ITmedia]

 開発(Development)と運用(Operation)を組み合わせる「DevOps」。これまでネットサービスを中心に浸透してきたが、最近ではエンタープライズシステムの領域でも注目され始めた。DevOpsはエンタープライズ分野に定着していくのか。日本IBM ソフトウエア開発研究所 ディスティングィシュト エンジニア CTOの上村務氏に聞いた。

ibm0001.jpg 日本IBM ソフトウエア開発研究所 ディスティングィシュト エンジニア アジア・パシフィック CTO IBMラショナルの上村務氏(博士)

 DevOpsは、開発と運用を密に連携させるための手法や概念などを総称したもの。例えば、ソフトウェアの新機能や改修などの開発からリリースまでの期間を大幅に短縮し、サイクルを早く回すことで、ソフトウェア品質を向上させる、あるいは、エンドユーザーに対するサービスを強化するといった効果が挙げられる。ネットサービスなどでは、短期間に新機能が次々と提供されるようになっているのが一例だ。

 上村氏によると、DevOpsが注目されるようになった背景には、ビジネス環境での競争激化がある。競争優位性を確保するには他社との差別化が不可欠であり、経営層あるいはビジネス部門では新商品を常に投入したいと考える。IT部門側でも、急速に普及が進んだ仮想化技術やクラウドを活用して、こうしたニーズに応えられるようになってきた。

 例えば、テスト環境を用意するだけでも、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークを調達し、それらを構築するだけも数週間から数カ月もかかる。それがクラウドなら、仮想サーバとその周辺をセットアップするだけで、数十分程度で準備できる。クラウドを利用する開発環境も充実していき、ビルドからテストまでの多くの部分で自動化が可能になっている。そのためのツールやミドルウェアも多数あり、PaaSという形で一通りそろったサービスもある。

 こうした動きは、まずネット企業を中心に広がった。上村氏は「米国では銀行などエンタープライズ分野の企業がDevOpsを本格的に取り入れ始めた」と話す。その原動力が「モバイル」と「ソーシャルサービス」の爆発的な普及だ。「この2つは常にコンピューティングができるという環境を実現させた」(同氏)。米国企業ではこうしたツールを活用して、顧客に直接アプローチできるチャンスを期待しているという。モバイルバンキングアプリや、商品プロモーションのモバイルアプリなどがその代表例だ。

 だが多くの一般企業のIT部門にとって、ネット企業が駆使する「DevOps」は、脅威であり、挑戦的なものといまだ受け止められている。「企業システムは大規模であり、複雑なので、実績のある方法が好まれる」と上村氏。慣れ親しんだ開発の仕組みや体制を変えるというのは、それなりにプレッシャーだろう。また、程度の差はあっても変化を求める「開発」と、絶対的な信頼性や安定性が問われる「運用」の相反する“文化”を融合させる点も障壁となりがちである。

 上村氏は、「競争を勝ち抜くことが企業にとって最大の経営課題となり、IT部門としてはそれに応えなくはならない状況だ。そのためにDevOpsは必然といえるが、一般企業がネット企業のようなスピードを実現するのは難しい。エンタープライズに合ったDevOpsが必要であり、IBMも取り組んでいる」と語る。

 例えば、同社は昨年に「IBM SmartCloud Continuous Delivery」をリリースした。これは、クラウド環境を活用して開発中のアプリケーションの運用環境情報をRationalに反映させることで、DevOpsの一部を実現する。バンキングアプリケーションをモデルに、テスト環境での適用を検証したところ、従前はほぼ一日を要した作業が1時間未満で可能になったという。この他にもRationalの多くの製品で、テストの自動化や品質管理の効率化、協働型開発の実現を可能にさせつつある。

 こうした製品の活用は、自社でも実践している。「以前は新機能のリリースは年1回、改善は四半期ごとのスケジュールだったが、昨年から新機能のリリースも四半期ごとにした。クラウドを利用した開発には、以前から取り組んでおり、オープンソースのツールやミドルウェアも多数活用している」(上村氏)

 同社ではこうしたノウハウをエンタープライズ顧客向けに展開していくとのこと。いきなりDevOpsを全面的に導入するのではなく、可能な部分から適用を始めて、徐々に広げていくアプローチを推奨する。例えば、テスト工程を自動化するのでも、まずは同一の稼働環境でアプリケーションを改修していくといった部分から取り込む。アプリケーションによっては、より多くのDevOpsの要素を取り入れられるものもあるだろう。

 企業システムのクラウド化はこれからも進み、DevOpsを取り入れる動きも加速しそうだ。今後は、オンプレミス主体のアプリケーションやメインフレームで稼働するアプリケーションも焦点になるが、昨年からテスト向けにx86サーバ上でメインフレームの多くを再現するためのAPIも提供しており、既に多くの引き合いがあるという。

 上村氏は、「ビジネス環境の変化にITで対応していくことが大切であり、その一つとしてDevOpsに取り組んでいくべきだろう」と話している。

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