企業ユーザーに今必要とされるクラウドサービスとはMM総研 執行役員に聞く

MM総研が実施する企業向けクラウド調査「ビジネスクラウド総合評価調査」やユーザー動向調査などから、企業が求めるクラウドサービスの現状をひも解く。

» 2014年02月27日 08時00分 公開
[ITmedia]

 「クラウドを検討する企業のフォーカスポイントが、サービスの料金や機能から、品質、信頼性に変化している」――。こう語るのは、IT調査会社のMM総研でネットワーク・ソリューション研究グループ 執行役員 研究部長の渡辺克己氏。その背景には、サービスが成熟し、安定的にシステムをクラウドで稼働できる技術要素が整ってきたことから、企業がクラウドに移行するシステムが従来の情報系システムだけにとどまらず、基幹系システムにまで広がっているということがある。

MM総研 ネットワーク・ソリューション研究グループ 執行役員 研究部長の渡辺克己氏 MM総研 ネットワーク・ソリューション研究グループ 執行役員 研究部長の渡辺克己氏

 そうした中、MM総研では昨年来、企業向けクラウドサービスを対象とした「ビジネスクラウド総合評価調査」を実施。企業の情報システム基盤や災害時に継続運用できる社会基盤に適したサービスを選定する視点で、各社のクラウドサービスを客観的に評価することを目的としている。

 2014年2月に発表された第2回の調査では、クラウドサービスを評価するポイントを前回の43項目から70項目に増加し、「パブリッククラウドのサービス機能・品質」「プライベートクラウドのサービス機能・品質」「サービス料金」「導入支援・運用管理」の4分野について評価した。

 評価項目を大幅に増やした理由について、渡辺氏は「企業が情報システムを構築する上では、今やパブリッククラウドだけでなく、プライベートクラウドの基盤も検討材料として重要になっている。前回ではなかったこの部分の評価項目を追加した。また、導入支援サービスもユーザーの気になるところ。そうしたサービスをワンストップで提供する事業者を評価する項目も加えた」と説明する。具体的には、プライベートクラウドサービス品質、導入支援・運用管理の分野が該当する。

プライベートクラウドに対するニーズの高まり

 こうした項目追加の裏付けとしているのが、MM総研が昨年8月に発表した国内クラウドサービス市場の需要動向調査から導き出されたプライベートクラウドへのニーズの高まりである。同調査は、企業IT担当者などを対象に実施し、1562件の回答を得た。これによると、2012年度の企業のクラウド化率は2.1%で、2017年度には8.2%に増加すると予測。2012年度におけるクラウドサービス市場全体は5102億円で、2015年度には1兆2558億円、2017年度には2兆411億円に達するとしている。内訳に関して、プライベートクラウドが金額ベースで全体の約7割を占め、2017年度には1兆4918億円まで成長すると予測する。

 また、プライベートクラウドを検討するユーザーがサービス導入時に重視するポイントは、「セキュリティへの対応力の高さ」が回答全体の41.9%を占め、続いて「ネットワークの安定性」(38.2%)、「導入コストの安さ」(37.4%)、「操作性の良さ」(36.2%)、「運用コストの安さ」(35.0%)となった。

 クラウドが登場した当初、導入や運用のコストメリットが強調して喧伝されていたが、この調査結果からも分かるように、クラウドの用途が基幹系システムなど企業における重要度の高いシステムに移り変わる中で、価格の安さではなく、サービスの信頼性や品質の高さにより重点が置かれるようになっている。

8社が最高水準のクラウドサービスを提供

 第2回の調査結果では、評価対象企業20社のうち8社が最高水準の格付けを獲得した。格付け基準は、AAA(90〜100点)、AA(80〜90点未満)、A(70〜80点未満)、B(60〜70点未満)、C(60点未満)の5段階からなり、NTT コミュニケーションズ「Biz ホスティング」、IIJ「IIJ GIO サービス」、日本IBM「SmarterCloud」、富士通「FUJITSU Cloud Initiative」、KVH「KVH クラウドソリューション」、IDC フロンティア「IDC フロンティア クラウドサービス」、アマゾン データサービス ジャパン「Amazon Web Services」、GMO クラウド「GMO クラウド Public / Private」の8サービスが総合評価でAAAを獲得した。

AAAサービス評価詳細 AAAサービス評価詳細

 特に、NTT コミュニケーションズはすべての分野でAAAを獲得する結果となった。渡辺氏は「企業の基幹系システムの構築を可能にする高品質、多機能なサービスを提供する事業者が最高評価を受けたが、中でもNTT コミュニケーションズはサービスの網羅性が高かった」とコメントした。

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