オープンデータの登録と提供基盤を構築、鯖江市とjig.jp、AWS、SAPがタッグ

jig.jpがオープンデータ活用のためのクラウドサービスを開発した。同社と連携する福井県鯖江市やAWS、SAPが本格利用に向けて活動する。

» 2014年06月04日 17時22分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 jig.jpは6月4日、オープンデータの活用支援を目的とするクラウドサービス「オープンデータプラットフォーム(odp)」をリリースした。総務省の実証実験などで同社と連携する福井県鯖江市のほか、アマゾン データ サービス ジャパンやSAPジャパンがodpの本格展開に向けて活動するという。

 odpは自治体などが保有するオープンデータを取り込み、「Linked-RDF」と呼ばれるデータ形式に変換して、アプリ開発者や企業、住民などに提供するサービス。オープンデータの取り込みでは保存形態として多いExcel形式にも対応する。Linked-RDFは異なる複数のデータを、意味づけを伴って扱える。odpではRDFクエリのSRACLEを使って、Linked-RDFに変換された様々なオープンデータの検索や取得を容易にしているという。

「オープンデータプラットフォーム」の利用イメージ

 サービスメニューは、自治体担当者がオープンデータの登録や管理するサイトとアプリ開発者がオープンデータを取得するサイトがセットになった「基本パッケージ」(年間150万円)と、オープンデータのカタログサイトや一般向けに情報提供するための公開サイトがセットになった「オプションパッケージ」(同50万円)の2種類となる。

 jig.jpと鯖江市は住民サービスでのIT活用や情報政策などの分野で幅広く連携する。オープンデータ関連では同市内にある福井高専出身の福野泰介jig.jp社長が、2010年に牧野百男市長へオープンデータ活用を推進する「データシティ鯖江」構想を提案したのが最初だという。

 「データシティ鯖江」は2012年にWebサイトが開設され、約40種類のオープンデータを公開。福野氏も同市のオープンデータを利用したアプリを自身で80本ほど開発し、無償公開している。両者は2013年に総務省が実施したオープンデータ実証実験にも参加した。odpはこうした取り組みで蓄積されたノウハウなどをもとに実現したという。

会見したアマゾンの玉川氏、鯖江市長の牧野氏、jig.jpの福野氏、SAPの吉越氏(左から)

 同日会見した福野氏は、「従来は行政機関ごとにオープンデータが提供され、民間が活用するには個別に対応しなければならなかった。odpによって共通サービス化されることで、オープンデータの活用を世界中に広げられる」と説明。牧野氏は「民間の力を借りることでオープンデータを利用した住民サービスの向上につなげていきたい」と述べた。

 odpの提供基盤にはAWSが採用されている。アマゾン データ サービス ジャパンの玉川憲技術本部長は、「既にアジアでは香港やシンガポールがAWS上でオープンデータを提供している。オープンデータの活用は始まったばかりで、スモールスタートから将来の利用拡大にも対応できるクラウドのメリットが生きるだろう」と語る。

 SAPジャパンは、同社のインメモリデータベース「SAP HANA」をodpに提供し、オープンデータの処理における有効性などを検証したい考え。将来的にodpとアプリ間で多種大量のオープンデータがやり取りされるようになった場合、インメモリ技術を活用すればレスポンスを高速化できるなどのメリットがあるという。

「オープンデータプラットフォーム」におけるAWSとSAPの関わり

 クラウドファースト事業統括本部の吉越輝信ネクストイノベーションデベロップメント シニアマネージャーは、「jig.jpと鯖江市の取り組みは世界でも先進的であり、将来の標準にもなり得る。既にサンプルデータを使った検証で有効性が認められ、今後は実際のデータでも可能性を検証していきたい」と話した。同社は7月のプライベートイベントで今回の検証を展示する予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ