トランザクション処理もリアルタイム分析も1台で、IBMが新世代メインフレーム発表

IBMのメインフレーム最新世代となる「z13」が発表された。アナリティクスなど新たなデータ活用にも1台で対応するシステムとの特徴を掲げる。

» 2015年01月15日 14時01分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本IBMは1月15日、メインフレーム新製品となる「IBM z13」を発表した。数兆単位のトランザクションを高速処理し、データ分析からビジネスでの洞察を得ることを支援する“初”のメインフレームだという。3月9日に工場出荷を開始する。

 新製品は前モデルのzEC12に比べて1筐体あたりのメモリ容量が約3倍の最大10テラバイトを搭載。同時マルチスレッドに対応する。最大141コアのプロセッサの処理能力もzEC12比で40%増の11万1556MIPS(1コアあたり1695MIPS)となった。暗号化処理では楕円曲線暗号(ECC)にも対応し、処理性能も約2倍に高められた。また、仮想サーバも1台のz13で最大8000台を稼働できるとしている。

IBMメインフレームのコンセプト。多様なデータ処理ニーズを1つのシステムで対応していくという

 同社常務執行役員システム事業本部長の武藤和博氏は、メインフレームシステムを取り巻く現状について、クラウドやモバイルなどの利用拡大に伴うトランザクションデータの肥大化や、リアルタイム処理性の要求などを背景に、高度な処理能力や効率性、高い信頼性や安全性を兼ね備えた基盤としての役割が高まっていると説明した。

 また取締役執行役員 テクニカル・リーダーシップ担当の宇田茂雄氏によれば、メインフレームでは2000年代頃からLinuxなどのオープン系技術の採用も広がったことで、メインフレーム全体としての処理能力が継続的に向上してきた。今後は上述したモバイルやビッグデータなどの新たな処理要求が加わることで、さらなる処理能力の向上が必要になる。

 z13ではこうした性能を生かし、例えばトランザクション処理におけるリアルタイムな不正取引の検知が可能になるという。従来はトランザクション処理のためのメインフレームとは別に、不正取引におけるモデルの構築やトランザクションから不正取引の可能性を判断するためのスコアリングのために異なるシステムを用いなければならなかった。

VISAでの事例

 メインフレームの進化の過程でIBMは、こうした個別システムに分散していた機能の統合化を進めてきた。宇田氏によると、クレジットカード大手VISAに採用されているIBMのシステムでは毎秒4万7000件のトランザクションを処理しつつ、不正取引に関するスコアリングも同一システムで処理し、顧客の保護を実現しているという(モデリングは異なるシステムとのこと)。

 特にハードウェア技術を生かしたデータベース高速化やプロセッサでの並列処理化、暗号化の処理の高速化などを実現することで、単一システム基盤上で複数のデータ処理を可能にする高い効率性と安全性の両立を可能にしてきたという。「z13はデータの収集、レポート、解析の3つを1つのシステムで可能にする」(宇田氏)としている。

 IBMでは今回の新製品を契機にメインフレームのブランド名称を従来の「IBM System z」から「IBM z Systems」に変更した。「『System』と『z』を単純に入れ替えたわけではない。レガシーとのイメージが強いメインフレームは、実際にはモバイルやクラウド、ビッグデータなどに対応した企業システムの基盤としての役割を担っていることを示したい」(武藤氏)。z13の開発に際してIBMは5年の時間と1000億円以上を投じたといい、武藤氏は基幹業務からデータ分析の新たな領域までを1台でカバーするシステムとして企業顧客に訴求していきたいと述べた。

 なお、今回の新製品はこれまで「System z EC」と呼ばれた大規模環境向けモデルとなる。発売時期などは未定だが、z13の中規模環境モデル(従来は「System z BC」)も開発中だという。

メインフレームの方向性として紹介されたスライド。プロセッサを例にみても、z13での22ナノプロセスから将来は7ナノ以下のプロセスになっていく

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