デスクトップの仮想化、アプリケーションの仮想化が進む中、こうした環境下での利用を前提に機能を最小限に絞ったクライアントPCが注目を集めている。
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
以前解説した「デスクトップの仮想化」と「アプリケーションの仮想化」は、手元のPCにOSやアプリケーションを導入する必要がありません。ネットワークに接続でき、画面表示や入出力操作の機能を動かすに足る必要最小限のメモリやプロセッサを搭載したPCがあれば十分です。また、プログラムや作成した文書、表などのデータをPC側に保管する必要がないので、物理的なストレージは不要です。
そこで、「デスクトップの仮想化」と「アプリケーションの仮想化」を利用することを前提に、機能を最小限に絞ったクライアントPCが作られました。これを「シンクライアント(Thin Client)」といいます。Thinとは「痩せた・薄い」という意味です。ちなみに、これに対し、さまざまな機能を備えたPCをファットクライアント(Fat Client、「太った」クライアント)と呼ぶことがあります。
最近では、タブレットやスマートフォンのアプリでシンクライアントの機能を実現しているものも登場しています。
シンクライアントは、高い処理能力や大容量のストレージを搭載した一般的なPCに比べると、安価に入手できます。また、ユーザー個別の設定やアプリケーション、データは、サーバ側で保存・管理するため、仮にシンクライアント本体が故障しても、すぐ代替機を使って作業を再開できます。クライアントPCの復旧作業のような手間が不要な分、ユーザーの管理負担が少なくて済みます。
また、シンクライアントにはデータを保管できないので、万が一盗難に遭っても、サーバに接続する手順さえ知られなければ、データが盗まれる危険はありません。セキュリティの観点からも安心です。
シンクライアントは、このように機能を絞り込んだPCの名称として使われています。さらに、シンクライアントが利用できる仮想化の方式、すなわち「デスクトップの仮想化」と「アプリケーションの仮想化」の総称としても使われる場合があります。
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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