ALSOKは東京オリンピックのセキュリティ分野(セキュリティーサービス&プランニング)でスポンサーシップ契約を結んでいる。今回の実験でも、ウェアラブルカメラを装備した警備員が巡回を行うなど、同社は先進的な警備サービスの実現に向けてさまざまな取り組みを行っている。
「オリンピックに向けて警備員が1万4000人必要といわれていますが、少子高齢化もあるため十分な数を確保できるかは分かりません。とはいえ、不必要に人を増やせば、需要のピークが去った後に彼らの仕事がなくなるという問題も起きるでしょう。省力化で警備員1人ができることを増やしつつ、ボランティアとの連携で質を向上させる。ここにITの力が必要になるのです」(ALSOK担当者)
スマートフォンのアプリを使ったシステムを採用したのは、ボランティアの負担を減らすためだ。仮にトランシーバーなどの専用機器を渡しても、使い方をレクチャーする必要がある。それならば普段使い慣れているスマートフォンで――というBYOD的なアプローチだという。
実験に際しては、屋外用のWi-Fiアクセスポイントも設置した。オリンピック本番は非常に多くの人が密集することが予想される。そのような環境下でも安定した通信が行えるよう、専用のアクセスポイントが必要となるためだ。しかし、こうしたシステムも多くの実地での検証が必要なのだそうだ。
「われわれは実際にシステムを運用する側の人間です。例えば警備員が装着するウェアラブルカメラの位置一つにしても、位置を間違えれば分析などに使えない映像になってしまいます。こうしたシステムの導入は運営サイドの理解が必要となりますが、その理解を支えるのも数多くの実証実験なのです」(ALSOK担当者)
コーポレートゲームズでは、ALSOKとともにNECもさまざまな実証実験を行っていた。まずは顔認証による入場管理だ。リレーマラソンのチームキャプテン約300人に対し、事前にWebサイトから登録した顔画像を照合して本人確認を行う。
人工知能を使った実験も行われた。夢の島競技場の駐車場に設置したカメラの映像を同社の人工知能ソフトで分析し、車いすや事前登録した車両のナンバープレートを検知。アラートを出して、車いすの参加者に会場への入場補助や施設案内といったサポートサービスを行うといったものだ。どちらの実験も大きなトラブルはなく、結果は良好だったという。
特に顔認証による入場管理は「ももいろクローバーZ」のコンサートでの導入例があるなど、ある程度の実績はあったが、スポーツイベントにおける導入は今回が初めて。「昼間に使用すると、日光で顔に陰影がついて、認証精度が落ちる可能性がある」(NEC)とのことで、自然環境で耐え得るかを検証する目的があるのだという。
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