このほか、群衆の映像から混雑状況や異変を検知する「群衆行動解析技術」を活用する実験も行われた。豊洲にあるメイン会場(豊洲PIT、MAGIC BEACHなど)に設置したカメラの映像から、来場者の混雑状況を検知するというものだ。
今回は200メートルほど離れた2拠点にカメラを設置しており、片方のエリアが混雑した際に、もう片方のエリアの混雑が予測できるかという点について検証を行う目的もあったという。当日はあいにくの雨で、群衆があまり生まれない(!)というアクシデントもあったが、データを研究所に持ち帰って分析するそうだ。
特にこの群衆行動解析の分野は、実地でシステムを動かさない限り、インシデント(過度の混雑や不審者など)のデータが得られないため、研究所の中では知見が得にくい分野といえる。それだけに実証実験を行える環境は限られており、貴重なのだという。
「基本的に実証実験ってホントに地味なんです。昨日はスタッフが夜通しで会場にLANケーブルを引いて通信環境を整えたのに、今日みたいに雨が降ってしまって、思ったような結果が得られないなんてこともしばしばあるんですよ」
こう話すのは、同社の執行役員である菅沼正明氏。オリンピック関連の案件を担当する責任者だ。2020年に向けてさまざまな実験を重ね、より技術を洗練させていく必要があると強調する。
「われわれが編み出した要素技術も、実運用に耐えなければ意味がありません。オリンピックで安心して使えるようになるために、小さな実績を積み上げていかなければいけないのです。今後もいろいろなスポーツイベントで実証実験が行えるように、社内外で話を進めているところです」
気温10度前後の寒空の下、スポーツに打ち込んでいた参加者と同じくらい、あるいはそれ以上にALSOKやNECのスタッフは実証実験に真剣に向き合っていた。こうした小さな努力や成果の積み重ねが、ゆくゆくはオリンピックという大イベントを支える土台になるのだろう。
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