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» 2016年04月11日 08時00分 公開

即席!3分で分かるITトレンド:コレ1枚で分かる「人工知能の3つのアプローチ」

人工知能という学術研究分野を確立した会議、通称「ダートマス会議」が1956年に開催されてから約60年、人工知能はさまざまなアプローチの研究が行われてきました。今回は、その中から代表的な3つのアプローチを紹介します。

[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


人工知能実用化へのアプローチ

 米ダートマスに研究者たちが集まり、「やがて人間の知能は機械でシミュレーションできるようになる」という考えを提唱し、これを“Artificial Intelligence(人工知能)”と名付けたのは、1956年のことでした。

 これをきっかけとして、企業や政府から多額の研究資金を集めることができたのですが、その後の研究が順風満帆だったわけではありません。さまざまなアプローチが試みられてきましたが、必ずしも十分な成果を上げられず、歴史の中に埋もれてしまった研究も少なくありません(その経緯はこちらにまとめています)。

 そんな中、今も生き残り、成果を上げている人工知能の3つのアプローチを紹介します。

【図解】コレ1枚で分かる「人工知能の3つのアプローチ」

ルールベースアプローチ

 専門家の知識やノウハウを人間がルールとして記述し、そのルールに従ってコンピュータに処理させようというアプローチです。「エキスパートシステム」と呼ばれています。例えば、計測結果から化合物の種類を特定する、複雑なコンピュータのハードウェアやソフトウェアの構成を過不足なく組み合わせるなど、特定の領域に限れば、実用で成果を上げられるようになりました。

 しかし、そもそも人間の知っていることが多すぎることやそれをどう表現するかということ、また解釈や意味の多様性に対応することは容易ではありません。そして、「知識やルールを入れれば賢くなるが、知識全ては書ききれない」という限界に行き当たり、この取り組みは下火となってしまいました。

 その後、この考え方を業務システムに応用しようという取り組みは続き、BRMS(Business Rules Management System)としていまも生き残っています。例えば、規則の組み合わせが複雑な保険の審査や保険料の算定、あるいは携帯電話の割引条件や料金算定など、ルール変更が頻繁な業務システムに使われています。

 このようなアプリケーションは、処理ルールをプログラムにロジックとして埋め込んでしまうと、ルールが変更されるたびにプログラムを修正しなくてはならないので大変手間がかかります。そこで、ルールだけを集めたデータベースとルール処理エンジンをアプリケーションプログラムの外に置いて、アプリケーションから必要に応じて呼び出すだけで使えるようにする仕組みが作られました。これが、BRMSです。

 これを人工知能と位置付けるかどうかは意見の分かれるところです。ただ、ルール生成(人間)と推論処理(機械)の組み合わせで実現した「エキスパートシステム」の考え方を受け継ぐものとして取り上げてみました。

統計・確率論的アプローチ

 データに内在する因果関係を統計的手法で分析し、その因果関係を確率として表現するアプローチです。

 例えば、コンピュータにイヌやネコを判別させるにあたり、人間がその特徴を抽出して判別ルールを記述するのではなく、コンピュータに大量の画像を読み込ませてソフトウェアのアルゴリズムで特徴を抽出し、判別ルールを生成しようというアプローチです。これは機械学習と呼ばれています。

 この機械学習によって抽出された「イヌの特徴」や「ネコの特徴」と未知の画像から抽出された特徴をソフトウェアで比較し、「98%の確率でイヌの特徴と一致」しているから「これはイヌだと推論」しようというやり方です。

 既に多くの実用事例があり、例えば、自動運転車の周りを撮した画像から障害物や歩行者の存在を検知する、また大量の異なる言語の対訳文書を機械に読み込ませることで使われる表現の出現頻度の一致具合の確率から文法規則を使わずに言語翻訳するといった使われ方などが挙げられます。他にも、機械や設備の故障診断、レストランの待ち時間の予測、新製品の販売量の推移の予測など、実用事例がどんどん増えているアプローチです。

脳科学的アプローチ

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 脳科学の研究成果を取り入れ、脳の神経活動を再現する数学モデル(ディープニューラルネットワーク)を使い、データを処理しようというアプローチです。ディープラーニングとも呼ばれています。画像認識に関しては特に研究が進んでおり、既に人間の能力を超えるほどに精度は上がっています。また、最近では、音声認識での成果も上がりつつあります。

 例えば、レントゲン写真を画像認識し病巣を見つけ出す、音声をリアルタイムで他言語に翻訳するといった実用例が登場しています。

 まだ、その成果は画像認識や音声認識などの特定の分野にとどまっていますが、適用事例は増え続けており、今後の発展が大いに期待されるアプローチです。

著者プロフィル:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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