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» 2016年10月21日 08時00分 UPDATE

CODE BLUE 2016 Report:18分で会社が作れる、エストニアのデジタル社会インフラ事情 (1/2)

情報セキュリティの国際会議「CODE BLUE 2016」では、電子政府化を推進するエストニアの取り組みが紹介された。利便性と安全性を両立するデジタル社会インフラとして注目されている。

[國谷武史,ITmedia]

 情報セキュリティの国際会議「CODE BLUE 2016」が10月20日、都内で開幕した。4年目となる同会議には過去最多の700人が参加し、21日まで情報セキュリティ技術に関する多数の講演が行われる。初日の基調講演には先進的な電子政府の取り組みで注目されているエストニアの事例が紹介された。

結婚・離婚・土地売買以外の手続きはオンライン

 北欧に近いバルト3国の1つとして知られるエストニアは、人口約130万人の小国ながら、電子政府への取り組みでは上位にランキングされている(国連経済社会局の2016年版調査では13位、早稲田大学電子政府・自治体研究所の2016年版調査では6位)。講演したエストニア政府商務部門「e-Estonia」ショールーム マネージングディレクターを務めるアンナ・パイペラル氏は、「結婚や離婚、土地売買以外のほぼ全ての行政手続きがオンラインでできます」と話す。

エストニアの電子政府化による効果の一例

 同国のオンラインサービス化は官民を問わず広く進められ、そのメリットは大きいという。例えば、法人登記に要する時間は平均18分ほどで、納税申告は3分程度で完了できるという。処方箋の発行も99%が電子化され、オンラインで手続きすれば、国内のどの薬局でもほとんど待つことなく医薬品を入手できるという。

「e-Estonia」ショールーム マネージングディレクターのアンナ・パイペラル氏

 オンライン化によるコスト削減効果も高いといい、例えば、電子署名の活用による行政手続きに関するコスト削減効果は、国内総生産(約259億ドル)の2%に相当するとのこと。「また例えば、警察による駐車違反の取り締まりでは、違反した自動車のナンバーを読み取り、オンラインでの照会や手続きによって効率性が50倍高まりました」(パイペラル氏)

 この他にも利用率が30%に上る電子投票は、国内外のあらゆる場所でオンラインからできる。政府の閣議もオンライン化によって会議の時間が5時間から3時間に短縮されるといった効果をもたらした。

 同国ではオンラインサービスを支える通信インフラの利用が社会的な権利として認められているという。政府では2018年までに100Mbpsの家庭向けブロードバンド回線の普及率を88%にまで高める目標を掲げ、第5世代(5G)のモバイルブロードバンドも2018年の本格導入に向けてパイロットプロジェクトを進めている。

 サービスとインフラの両面で電子化を推進する同国だが、そのきっかけは旧ソ連からの独立回復を果たした1990年代前半に遡るという。欧州列強の影響を受けやすい地理的な要因もあり、独立直後は社会インフラが疲弊していた。「当時は社会サービスを地方にまで物理的に提供できない状況にあり、オンラインを通じて提供する仕組みを整備していきました」(パイぺラル氏)という。

社会サービスを支えるITインフラ

 官民にわたる広範な社会サービスを提供するために、エストニアではネットワークで相互接続させた各種サービスがリアルタイムにデータをやり取りするITインフラを構築している。その代表が「X-ROAD」と呼ばれるシステム・データ連携の基盤だ。

「X-ROAD」の概念イメージ

 X-ROADには、公共・民間のさまざまなサービス基盤が接続されており、国民がサービスを利用する際に必要な各種データがX-ROADを介して交換される。例えば、納税申告の手続きでは住民データベースや税務当局のデータベース、銀行の口座情報データベースといった各種サービス基盤からの情報が交換され、納税記録とそれら情報との整合性を瞬時にチェックすることで、手続きの処理を短い時間で完了できるという。

 パイペラル氏によれば、X-ROADは分散型の構成とすることで、ブロードバンドインフラの能力を生かした価値のあるサービスを実現しているとのこと。「多くの国ではスーバーデータベースを構築したがるものですが、それでは情報を集めるだけも非常に多くの時間と労力を必要としてしまいます」

 また、同国ではX-ROADの整備・拡張を国家戦略に位置付け、デジタル社会インフラとして国外に広める取り組みを進める。既に隣国のフィンランドでもX-ROADを通じたサービスが利用できるといい、「エストニアでオンライン発行された処方箋をフィンランドにいても受け取ることができるわけです」(パイペラル氏)と、国境を越えた社会サービスの普及を推進している状況だ。

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