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» 2017年01月20日 08時00分 UPDATE

中途半端に規制をすると“シャドーIT”がはびこる――ビジネスチャットが企業に必要な理由

LINEのように、スマートデバイス上で手軽かつリアルタイムにコミュニケーションが取れるチャットがビジネスシーンでも求められている。しかし、LINEをそのまま使うのは情報セキュリティ上のリスクになる。この問題を解決するには、ビジネスチャットの導入が必要だ。

[園部修,ITmedia]

 日本国内では、スマートフォン上の代表的なコミュニケーションプラットフォームとして広く普及した「LINE」。その使い勝手や操作感はそのままに、企業内でのコミュニケーションに活用できるだけの安全性や管理機能を備えたビジネスチャットツールが増えている。ワークスモバイルジャパンの「Works Mobile」やChatWorkの「ChatWork」、AOSモバイルの「InCircle」など、“LINEのように使える”ことをうたう企業向けのコミュニケーションツールは複数登場しているが、こうしたツールがなぜ企業の現場に必要とされているのだろうか。

無防備な個人所有スマホ

 MMD研究所が実施した「スマートフォンの業務利用動向調査」によると、業務に使用するスマートフォンが会社から支給されているという人は、全体の14.7%しかいない。8割以上の人は、私物のスマートフォンを業務に使っている実態が垣間見える。こうしたスマートフォンは、明確な利用規程もなく、セキュリティ対策もされないままに、業務上のコミュニケーションに利用されている。

Works Mobile スマートフォンの業務利用動向調査。端末は支給されておらず、自分のものをセキュリティソフトなどのない状態で利用している人が多い
Works Mobile 主に利用するのは電話、メール、そしてLINE

 すでに利用している人も多いLINEは、「便利だから」という理由で、普通に業務の現場で使われるようになっている。社員が勝手に使っている、というだけでなく、案外役員クラスの人間が、セキュリティを意識せず使ってしまっているケースもある。

Works Mobile メッセンジャーアプリはリアルタイム性やスマートフォンでの使い勝手の良さなどから、活用が進んでいる
ワークスモバイルジャパンの執行役員 プロダクト・セールスサポート統括 萩原雅裕氏 ワークスモバイルジャパンの執行役員 プロダクト・セールスサポート統括 萩原雅裕氏

 ワークスモバイルジャパンの執行役員 プロダクト・セールスサポート統括 萩原雅裕氏は、「多くの人が私物のスマートフォンを業務に利用しており、その約6割は特段のセキュリティ対策をしていない。そんな状態では、メールやチャットの誤送信や、スマートフォンの紛失などをきっかけに、悪意がなくても会社の機密情報が漏れてしまうリスクもある」と指摘する。

 業務に利用している個人所有のスマートフォンや、個人で契約し、勝手に仕事に使っているクラウドサービスなどを指して「シャドーIT」と呼ぶが、こうした企業のシステム管理者の管理下にないシャドーITが現場にはびこると、「内部からの情報漏えい」という新たな脅威が生まれる。

 コンプライアンスを順守しようとする従業員も悩んでいる。便利だからという理由でLINEを業務に使い始めたものの、組織が大きくなってきたり、グループの加入者が増えてきたりすると、そのうち本名じゃない人、知らない人などもチャットのメンバーに入ってくるようになる。退職した人がグループに入ったまま、といった事態も起こりうる。誰だか分からない、社員かどうかも分からない人がいるグループで、機密情報や重要情報がやり取りされる状態はリスクが高い。

 さらに、個人で使用しているLINEのアドレスを業務にも使うようになると、休みの日にも連絡が来たりして気が休まらない、といったことも起こりうる。個人のIDは仕事場の人には教えたくない、という人も出てくるので、結果的に従業員にストレスや負担をかけることにもつながる。

 「従業員は何かしらコミュニケーションを取りたいものです。それを無理に規制すると、結局裏でコミュニケーションが発生します。会社で指定されているものが使いやすくなければ、シャドーITがはびこります。そんなとき、普段使っているものよりいいものを提供できれば、リスクをある程度抑えられるはずです」(萩原氏)

Works Mobileはそんな現場をどう変えたか

 こうした状況を踏まえて開発されているのが、Works Mobileを始めとするビジネスチャットだ。中でもワークスモバイルのWorks Mobileは、LINEと兄弟関係にある会社が作っていることもあり、使い勝手やデザインはLINEのそれをほぼ踏襲する。一部のスタンプもそのまま使えるのが特徴だ。

 「知っている人同士のクローズドなコミュニケーションに着目し、感情や気持ちが表現できるサービスとして展開されたLINEの良さを引き継いで、なおかつログが取れたりセキュリティが確保できたりと、企業での利用に必要な機能を備えたのがWorks Mobileです。当然ですが、プライベートと同じように会社でもコミュニケーションは必要です。単純な業務上の情報共有だけでなく、仲のいい同僚などとも気軽にやり取りができる、セミオフィシャルな場を提供することも大きなポイントだと思います。会社として公式に認めているけれども、ゆるい会話が許される場を提供することは、シャドーIT対策にも重要です」(萩原氏)

 重要なのは、普段使っているもの(LINE)と比べたとき、遜色のない使い勝手を実現していることだと萩原氏は指摘する。使い勝手が悪いと、それが不満になって使わなくなったり、シャドーITの利用へとつながったりする。Works Mobileは、ユーザインタフェース(UI)やユーザー体験(UX)、スマートフォンの限られた画面サイズの中で、いかにストレスなくユーザーに使ってもらうかなど、使いやすさを感じてもらえるように心がけている。

Works Mobile Works MobileはLINEの使い勝手をビジネスユースで実現する

 こうした努力の結果、全社でWorks Mobileを導入したある企業では、iPhone 6sもしくはiPhone 6s Plusを社員に配布し、Works Mobileを活用するようにしたところ、コミュニケーションの改善につながり、一気に利用率が上がって、想定より速いペースで普及したという。東京海上日動では、2016年11月から1万人規模で導入することが決まった。1年以内に3万人規模にまで拡大する。

 「以前、ガートナーのリサーチ部門 ソーシャル・ソフトウェア&コラボレーション バイスプレジデント 志賀嘉津士氏が『シャドーITは革新をもたらす日なたのITである』とおっしゃっていました。シャドーITこそが『真のユーザーニーズを反映している』というのです。ですから、LINEのような使いやすさや利便性はそのままに、企業でも安心して使えるビジネスチャットが求められているのではないでしょうか」(萩原氏)

とはいえ「LINEのID教えて」にはあらがえない現実

 しかし、ビジネスチャットアプリが、広く普及したLINEを完全に代替できるわけではない。業務上必要なコミュニケーションをセキュアな環境で行う手段は用意されたものの、相手も同じビジネスチャットアプリを利用している必要があるからだ。例えば取引先の担当者などに「LINEのIDを教えて」といわれた場合、断りにくく、LINEでのコミュニケーションをやめられるわけではない。

 この問題を解決するには、LINEでもセキュアなコミュニケーションが可能になる、あるいはWorks MobileとLINEでコミュニケーションが取れるようになる、などのブレイクスルーが必要になるだろう。

 Works Mobileの機能の進化や、2016年10月に発表したLINEとの事業提携契約の具体的内容について、萩原氏は明言はしなかったが、こうしたシーンにどう対応していくかは「LINEとの提携を生かしていきたい」と話した。

 もっとも、萩原氏は「同じアプリの中でプライベートと業務は混在しない方がよい」という考えだ。同じ環境にあれば当然誤操作などが起きやすくなるからだ。

 業務効率の改善、働き方改革の実現、そしてシャドーIT対策といった期待を担うビジネスチャットアプリ。Works Mobileは、安心・安全でしかも使いやすいコミュニケーションツールを目指して開発が続けられている。

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