“名ばかり働き方改革”は、やらない NSSOLとサーバーワークスの本気(1/3 ページ)

ただ「早く帰れ」というだけの“名ばかり働き方改革”が横行する中、“本質を見誤った改革には意味がない”と、本気の改革を進めているのがNSSOLとサーバーワークスだ。社員のモチベーションを高め、利益に貢献する働き方改革はどうすれば実現できるのか。

» 2017年08月23日 12時00分 公開
[タンクフルITmedia]
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 残業規制が厳しくなったことを受け、ただ「早く帰れ」というだけの“名ばかり働き方改革”が横行している。その理由は簡単、同じ仕事量のまま残業をなくすには、業務を効率化するためのツールやルール作りが必要になるが、その手間やコストを惜しむ企業が少なくないからだ。

 しかし一方で、こうした“本質を見誤った改革には意味がない”と、本気の改革を進めている企業も増えている。新日鉄住金ソリューションズ(以下、NSSOL)とサーバーワークスも、そんな取り組みで知られている。

 少子高齢化による人手不足が深刻化する中、自社の企業文化に合った人材を集め、彼らが高いモチベーションを維持しながら効率よく働ける環境を作り、成長する会社であり続けるために両社はどんな試行錯誤を続けているのか――。

 ITmedia エンタープライズの連載でおなじみの斎藤昌義氏が主宰する、「ITソリューション塾」の最終講義で行われたパネルディスカッションを通じて、“真の働き方改革”を模索する企業の取り組みを紹介する。

 パネルディスカッションで自社の働き方改革について語ったのは、サーバーワークス代表取締役の大石良氏と、新日鉄住金ソリューションズで営業統括本部営業総括部長と人事本部キャリア採用センター所長を兼務する岡田康裕氏。モデレーターは、フリーランス技術アドバイザーの及川卓也氏が務めた。

Photo パネリストは左からサーバーワークス 代表取締役大石 良氏、新日鉄住金ソリューションズ 営業統括本部営業総括部長 人事本部キャリア採用センター所長の岡田 康裕氏、右端はモデレーターを務めたフリーランス技術アドバイザーの及川 卓也氏

“ビジネスパーソンにとっての幸せ”とは何か

 ディスカッションの最初のテーマは、「ビジネスパーソンにとっての幸せとは何か」。岡田氏は、ダニエル・ピンク氏の著書「モチベーション3.0」の一部を引用し、「お金でモチベートされるのは前世代的ではないか。社員にとっては、“興味があって、やる気があることに取り組めるのが幸せ”という前提のもと、社内のオペレーションを進めている」という。大石氏は、「人に必要とされていると実感できる時が幸せを感じる瞬間」という考えだ。

 及川氏が、「組織を率いる立場としてワークライフバランスをどのように定義しているか」と問うと、大石氏は「社員自身が働き方をコントロールできる状態にあるかどうかを最も重視している」と話す。

 「自分が意図して『この1年間はハードに働く』というのであれば応援する。反対に1日の労働時間が5時間ほどであったとしても、子どもが熱を出したときに休むことが許されないような環境は困る。社員自身が仕事と生活のバランスをコントロールできる環境にあるかどうかが重要」(大石氏)

 一方、岡田氏は「働きやすさと負担感のバランスと捉えている」という。

 「負担をコントロールできるかどうかが重要で、コントロールできない人は上長がサポートする。コントロールできる人には、やりたい仕事と負担感のバランスを自分で調整してもらう。これが理想の形」(岡田氏)

 ただし、負担感は主観的な側面もあるため、自分でコントロールできていると思っていても、実際には残業が長時間に及んでいるケースもある。岡田氏は、その判断の難しさを認めたうえで、「長い時間残業している人が評価されるような構図を作ってしまうと、事情があって決まった時間しか働けない人のやる気を損ね、離職率を高めてしまう。それは、多様な人材を活用するという働き方改革の施策にも反する」と指摘。「無尽蔵な残業は規制するようにしているが、実際問題としてなかなか難しいのも事実」という見方を示した。

社員の早帰りで残った仕事はチームで補完――NSSOL

 NSSOLの岡田氏は、同社の働き方変革推進会議でタスクフォースに参画し、施策の策定から各事業部への施策浸透に取り組んでいる。

 働き方改革の現場では、社員が目標達成や事業成長を求められながら、定時帰宅や有休消化を促されることも少なくない。これらは一見、矛盾しているように見えるが、岡田氏はやり方次第で変えられると話す。例えば同社では、労働時間の短縮やそれに伴う生産性の低下を“チームで補う”取り組みを進めている。これは、“労働時間の短縮で低下する仕事の成果量を、ほかの社員で埋めていく”という方法。これをスムーズに進めるには、「仕事を分割する力」や、「職務内容を伝達するコミュニケーション力」「効率的な業務管理能力」などが必要になるため、そのための教育も進めているという。

 ほかにも岡田氏は、業務の可視化から課題の抽出、タスクの最適化を経て仕事の相互リカバリーへと進む段階的なトライアルを営業部門で実践するなど、さまざまな方法で生産性を下げない働き方改革に取り組んでいる。


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