そのWebページ、“みんな”が読めますか――企業が知るべき「Webアクセシビリティ」とは?週末エンプラこぼれ話(1/4 ページ)

インターネットが当たり前のインフラになった今、「誰でも同じように情報にアクセスできる」というテーマに再び注目が集まっている。その1つが「Webアクセシビリティ」だ。最近ではクラウドがその普及の後押しをしているのだという。

» 2017年09月08日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 「誰でも同じように情報にアクセスできる

 これはインターネットが登場してから、多くの人が目指してきた世界だろう。実際にPC、フィーチャーフォン、スマートフォンと新しいデバイスが登場したことで、より多くの人が、より多種多様な情報にアクセスできるようになってきた。

 しかし、インターネットが当たり前のインフラになった今でも、その世界が実現したとは言い難い。Webの世界にはアクセシビリティ(Accessibility)という言葉があるが、これは「誰でも、どのようなデバイスやWebクライアントからでも“同じ情報”にアクセスできること、またはその状態」を指す。誰でも、という言葉には障害者や高齢者も含まれる。デバイスやクライアントの対応が進んでいたとしても、そちらはどうだろうか。

 実際、Webページを記述する言語(HTMLやCSSなど)には、ドキュメント内に音声コンテンツを埋め込むための要素や、写真などの画像イメージに「その内容」が分かるよう、代替テキストを付ける要素などが用意されている。HTMLドキュメントは「ワンソース、マルチユース」とうたわれるが、それ以上に「全ての人に同じ情報へのアクセスを保証する」という役割が大きいのだ。

情報の世界にも「バリアフリー」の波

photo インフォ・クリエイツ 代表取締役社長 加藤均氏

 インターネットで使われる各種技術の標準化を進めるW3Cでは、Webアクセシビリティについてもガイドライン「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)」を取りまとめている。しかし、残念ながらWebサイトを作るとき、そこまで考慮しているケースは少ないのが実情だ。代替テキストさえ、全てに適切な文章を入れるとなれば大変な作業になる。

 しかし、昨今はそんな状況が変わってきている。バリアフリーの波が情報の世界にもやってきたのだ。米国では、1998年にリハビリテーション法第508条が大幅に改正され、アクセシビリティの必要性が法律で明示された。つまり、基準を満たしていない製品やサービスを政府へ納品できなくなったのだ。

 一方で日本はどうか。「障害者差別解消法」が2016年4月1日から施行され、Webサイトのアクセシビリティ対応にも言及しているが、これは「差別解消の推進」が目的だ。義務付けや罰則といった法制化はされていない。

 こうした中、総務省が2020年に向けて情報バリアフリーの指針を示している。そこでは、利用環境におけるユニバーサルデザインの推進として「情報アクセシビリティの確保」が第一に挙げられているのだ。Webアクセシビリティの検査事業を展開する、インフォ・クリエイツの加藤均氏は次のように述べる。

 「Webアクセシビリティの対応とは、『規格を満たしている』ことです。例えば画像の場合、それがどんな内容なのかを代替テキストに入力しますが、テキストがあれば何でもいいということではありません。こうしたポイントを実際に確かめていきます。マウスを使えない方がキーボードで全部操作できるか、といったことも基準になっているんですよ」(加藤氏)

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