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» 2018年02月23日 07時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:リアル店舗のディスプレイで「インプレッション単価」を出せる クレストがショーウィンドウにかけたITの魔法 (1/4)

Web広告の世界では効果測定が当たり前になっているが、街中の看板やディスプレイの効果はこれまで"測定する"という概念すらなかった。クレストの永井俊輔社長が狙うのは、まさにそこだ。

[大内孝子,ITmedia]
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 Web広告の世界では当たり前になっている効果測定。サイトのアクセス数や訪問者数、コンバージョン数、滞在時間から1クリックを獲得するのにかかるコストまで、さまざまなデータが可視化され、より高いマーケティング効果を生み出すための施策に使われている。

 しかし、現実の世界に目を移すと、可視化やデータ化が進んでいないことが分かる。街中の看板やディスプレイの効果はこれまで"測定する"という概念すらなく、レイアウトや商品選びはベテラン店員の経験や勘に頼っていることも少なくない。多額のコストがかかっているにもかかわらず、だ。

 そこに注目し、効果の可視化に踏み出したのが、ファッションブランドを中心にリアル店舗の内装や看板・ディスプレイの設計施工を行う創業30年の老舗企業、クレストの代表取締役社長を務める永井俊輔氏。同社はどんな仕組みで、リアル店舗の効果測定をしようとしているのか――。発想の原点と仕組みについて聞いた。

Photo クレスト代表取締役社長の永井俊輔氏

小売×デジタルは可能性の宝庫

 小売業でもデータ活用が進んでいる分野もある。すぐ思い浮かぶのはPOSデータだろう。何が幾つ売れたのかといった取引データだけではなく、どんな属性(性別、年齢ゾーン)の人が購入したのかを集計できる。さらには天候や近隣でのイベント情報なども付加され、販売管理だけではなく、在庫管理や発注管理などにも役立っている。

 1970年代に登場したPOSシステムは、1978年にJANコードおよびバーコードが制定されたこともあり、一気に普及した。2014年には防犯・遠隔監視カメラデータ、センサーデータ(約3.5エクサバイト)に次いで、3番目に大きな流通量となっている(総務省「情報通信白書」平成27年度)。

 これはまさに、小売業においてデータ活用が進んできたことの表れだが、課題も見えている。例えば、「レジを通った商品、つまり“売れた商品”に関してのデータでしかない」ことも、その1つだ。

 POSデータでは、売れなかった商品については何も分からないし、そもそも店舗に人がどのくらい入っているのか、ディスプレイの効果がどれくらいあるのか、棚のレイアウトは客層や商品に合っているのか、さらには、店自体の立地はふさわしいのか――といったことを把握するのは難しい。つまり、「売れたもの」についてのデータが活用が進んでいる一方で、それ以外のデータは手付かずの状態になっているのだ。

 店の前を通行する人の数、ディスプレイや棚の前に足を止める人の数、実際に品物を手にとる人の数――小売業にとっては、こうした数字も重要な要素なのではないか。クレストの永井氏が疑問を持ったのも、まさにそこだった。

 相当なお金をかけているのに、ウィンドウディスプレイの広告にどれだけの効果があるのか分からない。それをずっと疑問に思っていた同氏は、2010年頃に耳にしたWeb広告のKPIの仕組みに衝撃を受け、リアル店舗に展開できるのではないかと考えた。

 「Web広告ではクリックされた数、そこからリンクページを訪れた数、購買に至った数まで分かります。それまでIT業界のことにはさほど関心がなかったのですが、これはすごいと思って調べまくりました」(永井氏)

 Web広告は、“何人が見たか”というインプレッションの数字が出る。リンクをクリックしてWebサイトを訪れた人の数、サイトをどれだけ深く見たか、コンバージョンの数も分かる。こうした数字を元に逆算し、どうマーケティングしていくかを設計するのが一般的であり、もはや常識だ。

 永井氏は、Web解析ツールのGoogle Analyticsなどの解析技術を学ぶとともに、マーケティングオートメーションを活用したデジタルマーケティングの技術を自ら試し、Webの世界でどのような効果を測定できるかを徹底的に調べ上げた。1年でマーケティングオートメーションの書籍を著すほどの知識を身につけた同氏は、Webで培ったノウハウをリアル店舗の運営に取り入れようと決意。カメラを使った画像解析でリアル店舗における商品の注目度を可視化するシステムの開発に乗り出した。そうして生まれたのが、2016年1月にリリースした「ESASY」(エサシー)だ。

Photo ESASYのサービス

 ESASYの基本的な仕組みは、まさにWebの仕組みをリアル店舗に反映させたものだ。店舗の外や中に何台ものカメラを設置し、何人が通ったか、そして顔を検知して、そのカメラを何人が見たかという情報を取得する。もちろん、プライバシーには最大限の配慮をしており、それも特長の1つだ。

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