インタビュー
» 2018年10月04日 09時30分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:旅館業界では“あり得ない”週休3日 それでも「陣屋」の売り上げが伸び続けるワケ (1/4)

旅館業界では珍しい週休3日を実現している、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」だが、それでも売り上げも利益も伸び続けている。その裏にはAIやIoTを駆使した、最新の「おもてなし」があった。

[池田憲弘,ITmedia]

 神奈川県の鶴巻温泉にある老舗旅館「陣屋」。長年の不況とリーマンショックで抱えた10億円の負債を、“旅館素人”の夫婦がIT活用で乗り越えたユニークな事例として注目を集めている。

 経営に就任した2009年からの3年で黒字転換を実現し、業績は順風満帆だったものの、効率を追求したことで、女将の宮崎知子さんをはじめとするスタッフの消耗は限界に達しており、離職率が全く下がらなかった――。当時の状況を宮崎さんはこう振り返る。

 「業務の効率化は進んだのですが、従業員の離職率が変わらず、3割を切ることができませんでした。サービス業全体の平均も3割程度なのですが、だからといって割り切るには相当しんどい状況になっていました。人の出入りが多いと現場が落ち着かないんです。人に教えながら自分の仕事をするのは大変ですから。しかも、その教えた人がすぐに辞めてしまうんですから、本当に報われないですよね」(宮崎さん)

photo 神奈川県の鶴巻温泉にある老舗旅館「陣屋」

業務効率化はもう限界――「週休2日」が生んだ意外なビジネス

 もちろん、業務を効率化すると同時に不要な業務の洗い出しは常に行っていた。スタッフに「今一番つらい業務は何か」「どの業務を軽減すれば状況は良くなるか」と聞いて回り、優先度の低い業務は一つ一つなくしていったという。しかし、その方法にも限界はある。ほとんど休みなく働いてきた宮崎さんの体調が悪化したことが引き金となり、2014年2月から、陣屋は毎週火曜日と水曜日の2日を休みにすると決めた。

 「火曜日と水曜日は稼働率が低いので、比較的に社員が休みを取ってパートさんで埋めるような日が多かったんです。そうなるとサービスのクオリティーもばらつきが出てしまう。いっそのこと、その2日を休みにしてしまえば、光熱費や人件費が要らなくなるというわけです」(宮崎さん)

 週休2日制は、もちろん従業員に大好評だった。火曜と水曜を休みにしたことで、月曜と木曜に予約が分散し、売り上げ面では大きな影響は受けなかったという。結果的に2014年の売り上げは前年比で8%程度下がったものの、コスト減のインパクトの方が大きく、利益はさらに上がっていった。その利益を使ってスタッフの正社員化を進めたとのことだ。

 「休館日を取り入れたことで、設備の増強やメンテナンスを計画的に進められるようになったこともメリットの一つだった」と宮崎さんは話す。さらにこの休みが、意外なビジネスにつながることになる。

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