ストアビジネスの変革期 流通小売業で始まった、生き残りをかけたデジタルトランスフォーメーションCover Story(1/2 ページ)

気になる情報はすぐ検索でき、欲しくなったモノは何でもネットで買える。労働人口は減り続け、消費者の期待は常に変化する。そのような時代に、流通小売業は生き残りをかけた変革を始めている。

» 2020年02月05日 07時00分 公開
[柴佑佳ITmedia]

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 かつてはクルマよりも高額だったコンピュータが今では数万円で手に入り、誰もが一世代前のコンピュータをはるかに超える演算能力を持つデバイスでネットに接続している。現在われわれは、気になった商品の評判や価格、購入方法などを簡単に検索でき、その場で購入できるようになった。

 そんな中、消費者の求める購買体験「カスタマーエクスペリエンス」(CX)は変化している。CXの変革によるファンの獲得に失敗した事業者が市場から消える厳しい時代に、根強いレガシーが残っていた日本の小売業界にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ始めた。

 手書きの注文伝票や「Microsoft Excel」で手組みされたシフト表、仕入れ先によってフォーマットが異なる販売管理票、処理の遅い注文システムなどが消え、エコでスマートな「as a Service」型のソリューションが流通や小売業に革新をもたらしつつある。時代に合わせて新しいテクノロジーを取り入れ、これからのあるべき姿を探る小売業界を追った。

「デジタルは消費者の期待を根本から変えた」

 米国の調査会社Forrester Researchは2018年7月に発表した「小売店の変革に関する報告書」の中で「デジタルはあらゆるタッチポイントを横断する消費者の期待を根本から変えた」と述べた

 Amazonの登場によって本屋に「そこにある本が買える」以上の付加価値が必要になったように、デジタル技術は消費者の期待を根本から変えてきた。その期待に応えるべく、日本の小売業も変化を続けている。

全国チェーンの強みを生かし、実証用の路面店であらゆる施策を試験導入

 「セブン―イレブン麹町駅前店」(以下、麹町駅前店)はセブン―イレブン ジャパン本社に最も近い直営店の一つ。直営店は全国に400店舗ほどあり、本部の社員をマネジャーに育成する「トレーニングストア」として機能している。その中でも麹町駅前店は、新しい技術や仕組み、商品を試験導入する「実証店舗」だ。

実験店舗「セブン―イレブン麹町駅前店」オープン――NECの「設備稼働管理」「棚定点観測」を採用

 セブン―イレブン・ジャパンは省人化の試みとして、麹町駅前店の有人レジをこれまでの6台から4台に削減し、セルフレジ5台を新設した。セルフレジのうち3台はキャッシュレス専用で、これは同社にとって「ほぼ初の試み」(セブン&アイホールディングス コーポレートコミュニケーション本部 広報センター 戸田雄希氏)だという。

 同店舗では顧客分析のため、NTTデータやNECのソリューションによって棚監視や顧客の動線分析をしている。NTTデータやNECはいずれも自社従業員をテストユーザーとした実証店舗の導入を始めているが、一般の買い物客をテストユーザーとする路面店での実証はセブン―イレブン・ジャパンが先駆けたかたちになる。

天井には監視カメラとは別に、NTTデータの棚定点観測用ドームカメラ(左)とNECの導線分析カメラ(右)が設置

 省人化が進めば、これまで工数としてカウントされていなかった雑多な手作業のコストが相対的に重くなる。そこで麹町駅前店では、手作業での値札入れ替えを不要にする電子ペーパー値札による商品の表示管理や揚げ物のセルフピックアップ什器、前出し陳列ばねなどのアナログ設備も試験的に導入している。

 「現場にとって本当に必要な仕組みをブラッシュアップし、最終的には2万店を超える全国店舗への展開を見込む」(戸田氏)という。

電子ペーパー値札 紙にしか見えない電子ペーパーの値札。マスタデータと連係し、価格改定時の印刷やカット、入れ替えを不要にする。
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