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» 2007年09月11日 12時00分 UPDATE

新発想の業務フローチャート作成術(2):業務フローチャートに例外処理を描き切れない理由 (3/3)

[松浦剛志(プロセス・ラボ),@IT]
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新しい視点による業務フローチャートへの展開

 今度は、「担当者や担当部署によって仕切られたスイムレーンに作業をプロットする」という従来の発想を捨て去って、業務フローチャートの記載ルールを考えてみよう。

 「要素」と「流れ」の組み合わせによって、従来の様式以外の業務フローチャートを作ることができる。

 例えば、先ほどの例を取りながら、以下の定義に従うと、どのような業務フローチャートが出来上がるだろうか?

要素
分類
ルール
誰が 絶対的記載事項 スイムレーンにより定義し、スイムレーン内に担当印をプロット
どうする 絶対的記載事項 専用のスイムレーンを作り、そのレーン内に枠としてプロットし、枠内に動作を体言で簡潔に記載
何を 補助的記載事項 紙ドキュメント・情報システムのみを「どうする」のそばに、記号としてプロットし、記号内に名前を簡潔に記載
流れを示す要素=どうする・誰がの2つ

 この定義により作成される業務フローチャートは以下のようになる。

r2image031.jpg 図3 新たな記載ルールに基づく業務フローチャート

 いかがだろうか? なじみのない形であるが、業務フローチャートの本来の目的である「業務の流れ、つまり業務プロセスを可視化」という視点では、目的を果たしていることが分かるだろう。

 さらに、この図において特徴的なことがあるが、気付いただろうか? 業務フローチャートの構成単位である作業を平面上の1点で表すという固定概念に縛られていなかっただろうか?

 この図では、作業を2つのスイムレーンに書かれた2つの点から説明しているのである。どういうことか構造的に説明すると、以下のようになる。

r2image041.jpg 図4 「誰が何をどうする」を「誰が」と「何をどうする」に分離

 図のように、作業の要素である「誰が、何を、どうする」を1つの点で示していたものを、「誰が」と「何をどうする」にそれぞれ分離して、2つのスイムレーンにプロットされた2つの点から表している。

お絵描き的発想からの脱却

 こうして見てくると、業務フローチャートの固定概念から解放されたのではないだろうか? 要点を繰り返すと、まず、業務フローチャートは、「要素」と「流れ」の組み合わせで、どのような様式でも描くことができる。作業を示すために、必ずしも1つのスイムレーン内に点としてプロットする必要はないのである。

 さて、ここまでの展開を端的に図に示すと、以下のようになる。

r2image051.jpg 図5 従来の発想にとらわれないフローチャート

 新しい発想による様式では、バリエーションを表す「流れ」がシンプルになっているので、「例外処理、つまり多数のバリエーションが盛り込める」ことも直感的に理解できるだろう。バリエーションを表記すると、以下のようになる。

r2image061.jpg 図6 例外処理を描き込んだ新発想の業務フローチャート

 さて、この上の図であるが、これをパソコンで描いてくださいといわれたら、どんなアプリケーションを利用するだろうか? 半数程度の人が、Excelを使って描き始めるだろう。フローがシンプルになったおかげで、PowerPointなどの描画の世界から、表計算の世界に移行したのである。

 Excelで表記できるようになると、印刷範囲の設定も容易、スクロール機能も縦横自在、しかも行列の挿入削除も自由自在なので、例外処理を盛り込む困難性がますます排除できるようになる。

 ここで、先ほどの商社の例を、従来の様式により例外処理を盛り込むとどうなるか、イメージしてほしい。3人の担当者のうち、金井さんと松岡さんの話の中に「問題がなければ」というくだりがあったことに気付いて、「問題があればどうなるのだろう?」と思った人もいたであろう。この例でいえば、「問題があれば」という場合が、例外処理に当たる。このような例外処理を、従来の様式による業務フローチャートで描くと以下のようになる。

r2image071.jpg 図7 従来の様式で例外処理を盛り込んだ場合のフローチャート

 ただし、これはごく略式である。(1)例外処理の分岐は1カ所のみ、(2)「誰が」「どうする」のみで「何を」は省略してある。例外処理が何個所も何パターンもあり、作業のそばに「何を」をプロットしたら、どうなるだろうか。描き切れなくなったり、線が絡み合ったりして、見た目も煩雑なものになることが、イメージできると思う。

 今回の記事で、業務フローチャートに対する固定概念を取り払うことができたと思う。次回は、構成要素、流れ、作業を表す点という3つの切り口から業務フローチャートをとらえることで、業務フローチャートの「粒度の定義」を「どのように均一に定義することが可能になるのか?」について考える。

 業務フローチャートを実際に描き始めたものの、きちょうめんな人と、おおらかな人との意識合わせに悩んでいる方へのヒントとなるだろう。

著者紹介

松浦 剛志(まつうら たけし)

株式会社プロセス・ラボ 代表取締役

京都大学経済学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)審査部にて企業再建を担当。その後、グロービス(ビジネス教育、ベンチャー・キャピタル、 人材事業)にてグループ全体の管理業務、アントレピア(ベンチャー・キャピタル)にて投資先子会社の業務プロセス設計・モニタリング業務に従事する。

2002年、人事、会計、総務を中心とする管理業務のコンサルティングとアウトソースを提供する会社、ウィルミッツを創業。2006年、業務プロセス・コンサルティング機能をウィルミッツから分社化し、プロセス・ラボを創業。プロセス・ラボでは、業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った、業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。



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