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東芝が主張する、記録型HD DVDが32Gバイトで十分な理由東芝「DVDの父」がホンネで語る次世代DVD論(後編)(2/2 ページ)

» 2004年04月26日 16時04分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 「来年末に発売予定のHD DVDレコーダには、もちろんエンコーダも搭載される。H.264エンコーダ搭載機となるだろう。再生CODECは三つを同時に搭載する必要があるが、エンコーダは片方で構わないためWMVエンコーダは搭載されない」

 コスト的に競争力があるという話だが、具体的なターゲット価格はもう決まっているのだろうか? また再生専用機も発売予定があるのだろうか?

 「システムコストとして、現在のハイブリッドレコーダーよりも高くなる要因は、青紫レーザーと新規開発となるピックアップだけだ。レコーダーは1号機からハイブリッド型で、価格は20万円以下になる。再生専用機は2006年中頃、10万円以下で投入される予定だ」

記録型メディアの価格はDVD-RAMより安くなる

 製品立ち上げ時には、どうしても記録型メディアの流通価格は高くなりがちだ。これは最終的には量産でしか解決できないものだが、ベースとなる“製造原価”の面で記録型HD DVDは安価に製造できるものなのだろうか。

 「HD DVD-ARWは現在のDVD-RAMよりも安くなる。RAMよりも作りやすい。発売直後はもちろん流通量の違いによって、高い価格が付けられると思う。しかし、コスト面では高くなる要素はほとんどない。常識的な価格になる。DVD-RAMは1998年2.6Gバイトを発表し、必死で改善して2000年にやっと4.7バイトになったが、メディア側のコストは増大した。HD DVD-ARWはそれよりもずっと歩留まりが良い」(山田氏)

 HD DVDは多くの規格が策定待ちの状態になっている。物理フォーマットだけを取っても、ROMとARWの1層のみが確定しているだけだ。論理フォーマットも含めたすべての規格の策定は、製品計画に沿う形で進めていくことができるのだろうか?

 「HD DVDの規格がすべてそろうためには、DVD Forumでの議論が必要となる。これには今年末まで時間がかかるだろう。しかし、その背景にある技術に関しては、直ぐに製品へと応用できる状況にある。われわれは次世代光ディスク製品を、実験室レベルではなく量産設備のある部門で追い込んであり、量産に必要となるマージンを最初から織り込んで開発している。こうしたマージン、信頼性の高さは最後に必ず効く上、DVD Forumにおける議論後に小修正が必要な場合でも柔軟に対応できる」(同氏)

“高圧縮CODECは十分な画質だ”と山田氏

 映画などのパッケージ製品では、MPEG2で高ビットレートにした方が画質が良いとの意見を、BDF関係者だけでなく、映画スタジオやDVD制作会社などからも耳にする。しかし、HD DVD-ROMの1層15Gバイト、2層30Gバイトでは、高ビットレートのMPEG2では容量的な余裕が少ないのではないか?

 「評価する人間によって意見は異なるものだ。われわれの調査では、D-VHSの24Mbps/MPEG2よりも7Mbps/VC9(WMV9のこと)の方が良いとのコメントを映画スタジオからもらっている。ここでフィルムグレイン(フィルム粒子)の話がよく出てくるが、ランダムノイズをいかにコンテンツに含ませるか?といった議論はあまり現実的ではない。(制作者の意図はともかく)圧縮映像の評価テストを行うと、一般ユーザーはノイズが少ない方が良いとの意見を持つ人が多い。WMVやH.264には、深いループフィルタがかかるため粒子感は少なくなるが、普通のユーザーはこちらを好む人が多い」

 「現実に、ハリウッドの映画スタジオでも、わざわざノイズフィルターをかけて粒子を消しているところがある。さらにこれから先のことを考えれば、コンピュータグラフィックスやカメラのデジタル化などで映像がクリーンになり、圧縮効率はどんどん上がっていく傾向だ。8.5Mbpsで済むコンテンツであれば、それで十分。さらに細かなディテールが欲しければ、15Mbpsにすればいい。いずれにしろボーナスコンテンツを含め、最大30Gバイトあればそれ以上の容量が必要となることはない」

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