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登場迫る新たな2層DVD「DVD-R DL」って何だ?(3/3 ページ)

» 2005年01月28日 21時49分 公開
[北川達也,ITmedia]
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 「Format1(シーケンシャル記録)では、ROMとの再生互換性を取るためにマルチボーダーをなくしました。レイヤ1が埋まっていないので、マルチボーダーを切る意味がなくなったのです」(谷川氏)

 つまり、インクリメンタルレコーディングでは、記録できるボーダーは1つのみとなったというわけだ。このため、ディスクアットワンスかインクリメンタルレコーディングで記録したメディアをファイナライズするときは、基本的にレイヤ1の空き領域は、すべてダミーデータで埋める必要がでてくる。

 「レイヤ0の途中までしか書いていない時は、シフテッドミドルエリアと言って、ミドルエリアを手前に延ばすことを許しています。ただ、レイヤ0をすべて記録し、レイヤ1にも記録を行った場合には、残りは(ダミーデータで)埋めるしかありません」

 「なぜこうするのかというと、ひとえにROMとの再生互換性確保のためです。つまり、DVD-VideoのROMは、こういう構造になっていますので、必ず、残っているところは埋める必要があるからです」(谷川氏)

 空き領域をダミーデータで埋めてしまうのは、何とももったいないよう気がするが、DVD+R DLでも基本的には同じ方式が採用されており、これは、致し方ない点だろう。谷川氏も「市場に出ているレコーダはハードディスク搭載型が主流で、ダイレクトにDVDへ記録しているケースはほとんどないでしょう。記録する際には、ディスクいっぱいに埋まるように使うひとが多いと思いますし」と、それほど大きな影響はないだろうと指摘する。

 新設されたLayerJump Recordingは、VR記録などの追記系の記録で使用されることになる。

 「積極的にLayerJump Recordingを使うのは、リアルタイムファイル、つまり、エンドが分からない場合ということになります。記録する時間があらかじめ分かっていれば、半分のところでレイヤを折り返して、ディスクをターミネイトできます。しかし、記録がどこまで続くか分からない場合には、LayerJump Recordingというレイヤの0と1をクルクル回すような方式で記録して、最後に残ったところだけ、クローズするときに埋めるという方法が採れます。クロージングタイムが短縮できるわけですね」(谷川氏)

 ちなみに、LayerJump Recordingを使用するときの記録長は、可変長が採用される予定だ。「ジャンプポイントは、PCではいわゆるファイル÷2でよいと思うのです。VR記録の場合は、レコーダの持っているバッファなどを考慮して、固定長で回してやればよいというわけです」(谷川氏)

DVD-R DLの再生互換性と今後の展開について

 ここまで説明したように、DVD-R DLの物理的なデータレイアウトは、2層 DVD-ROMと互換性を保てるように工夫されている。だが、実際の再生互換性は、これだけで、決まるわけではない。その点について、谷口氏は次のように説明してくれた。

 「ブックタイプは今のところDVD-Rとする予定です。ただ、再生互換性は実際に2層のメディアをプレーヤがどう認識するように実装されているかで決まります。現時点、DVD-Videoモードで書いている限りは、DVDプレーヤにおける再生互換性は80%から90%近くであると認識しています」

 ただし、谷口氏が指摘しているように最終的には、ドライブがどのようにしてメディアを認識するかによって、再生互換性は異なる。DVD-R DLは、ブックタイプこそ「DVD-R」だが、レイヤ数は「2」となっており、シングルレイヤのDVD-Rとは明確に異なる。

 実際、DVD+R DLの時に見られたように、「ディスクのフラグをみて記録しないようにハジいてしまう、存在しないフラグとして認識してしまいメディアを認識できなくなる」(谷川氏)機器が現れる可能性は十分にある。

 また、マルチボーダーによる追記は、新方式での記録と言うこともあり、新たな対応ドライブが必要になるようだ。「DVD-Rのシングルレイヤのマルチボーダーでもそうでしたが、既存のドライブで、“ファーストボーダーだけが読めればよい”というのがありました。LayerJump Recordingを使っても、ファーストボーダーのみは既存のドライブでそのまま読めるはずです。ただし、マルチボーダーの読み込みには対応ドライブが必要です」(谷川氏)

 DVD+R DLと同様に、書き込み速度の高速化も予定されているが、明確なところは決まっていないようだ。「技術的にはレーザー次第ですね。DVD-R DLメディアは(シングルメディアに比べて)感度がほぼ半分ですから、現状のシングルレイヤの16倍速用レーザーでは、8倍速を超える速度は無理です。8倍速でも、現在のレーザーではギリギリかちょっと足りないぐらいです」(谷口氏)

 民生用のレコーダに向けた製品展開については、「現在のところ未定」としながらも、規格の策定状況からみて、夏頃の登場については、両氏共に否定も肯定もしなかった。

 「市場原理なので、レコーダでたとえば1社がサポートを始めれば、ほかのメーカーも対応せざるを得ないと思います。メディアそのものについては、値段が下がらないとどうしようもないですが、機能としての普及は、最初の一歩を踏み出すと後は早いと思っています」(谷川氏)

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