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タイムシフトの次は“場所シフト”〜小さくなったロケーションフリーTV「LF-X5」レビュー(3/3 ページ)

» 2005年02月28日 07時12分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 HOTSPOTといえば、デュアルバンド対応のアクセスポイントを設置していることでも知られる。ただ、今回は2.4GHz帯だけの店舗だったのか、あるいはアクセスポイントが遠かったのか(アクセスポイントは階下にあった)、IEEE 802.11bで接続した。RBB Todayの「Speed TEST」で計測してみると、スループットは2.98Mbpsだ。

 Webブラウザを立ち上げ、いつものようにIDとパスワードをソフトウェアキーボードで入力すると、問題なくWebを閲覧できた。パソコンに比べて縦方向の解像度が少ないから妙な感じだが、表示スピード、画像やフォントの処理などもパソコンと遜色ない。ブックマーク機能はもちろん、タブ形式のインタフェース、文字サイズの拡大機能なども搭載しており、ニュースなど通常のWebサイトを閲覧するには十分な機能を持っている。なお、WebブラウザはLF-X5から新しくなり、PDFの表示をサポートしている。ちょっと調べものをしたいが、パソコンを立ち上げる時間がもったいない時などには便利に使えるだろう。

photo ID、パスの入力はソフトウェアキーボードで行う
photo 無事、接続完了。Webページの閲覧も縦方向が短いほかは、とくに支障なし。タブも便利だ

 さて、外部から自宅のテレビ映像を見るためには、「NetAV機能」を使用する。NetAVは、LF-X1から搭載された機能で、インターネットを介してワイヤレス伝送時とほぼ同じことが可能になる。具体的には、端末の認証から、回線速度に合わせた動画エンコード、暗号化、そして動画送信といった各種サーバ機能を一括提供してくれる。

 こう書くと難しそうだが、設定作業はすべてウィザード形式のため、面倒なことはほとんどない。ブロードバンドルータの設定が行える人なら迷うことなく設定できるはずだ。

 問題になりそうなのは2点だけ。1つは、外部から自宅にアクセスするため、固定IPアドレスを取得するか、DDNS(Dynamic DNS)サービスを利用する必要があること。一般的なブロードバンドサービスでは、グローバルIPアドレスを動的に割り当てているため、再接続などで切り替わってしまう可能性がある。そこで、あらかじめ登録したドメインと変更されたIPアドレスを自動的に結びつけてくれるのがDDNSサービスだ。DDNSにはフリーのサービスも存在するが、So-netもユーザー向けに低価格(月額210円)のDDNSサービスを提供しているから、こちらを利用するのも手だろう。

 もう1つは、ブロードバンドルータの下にベースステーションを配置する場合、ルータ側でポートフォワーディングの設定を行う必要があること。デフォルト設定は5021番ポートを使用するが、これは設定時に変更可能だ。ちなみに、ソニースタイルでは「ネットワークの設定なんて全くわからん」という人たちのために、ブロードバンド回線からNetAV機能まで一括して設定してくれる「訪問設置・お任せパック」(2100円)というサービスも用意している。

 話を元にもどそう。WebブラウザでHOTSPOTの認証を行ったあと、画面下にある「NetAV」ボタンをクリックする。認証とバッファリングの表示が出て、しばらくすると無事にベースステーションに接続できた。さすがにフル画面表示では少しコマ落ちが見られたので、画面サイズを1段階小さくしてみたところ、今度はスムーズな動画を楽しむことができた。

 回線速度に対してちょっと動画品質が落ちすぎているような気もするが、こればっかりはネットワーク環境次第だ。インターネットでは、どこがボトルネックになるか分からない。ホットスポットからスピードテストのサーバまでは3Mbps近い速度が出ていたため、今回の場合は自宅のCATV接続環境が遅かったのかもしれない。韓国ドラマの配信が流行しているためか、最近は極端に遅くなる時間帯がある。

photo 一応証拠写真。HOTSPOTのあるコーヒーショップです
photo 宅内(802.11a、上)とホットスポット(802.11b、下)で接続したときの画質を比較してみた。回線速度によって動画のビットレートを変更していることがよく分かる

 ソニーによると、LF-X1を購入した人の多くは、海外出張のビジネスマンだという。仕事を終えてホテルに帰った後、あるいは仕事前に日本のテレビ番組を見たい。また、長期出張の場合は、ニュースなどで国内の動向を知っておく必要もあるだろう。DVDレコーダーと接続しておけば、時差を気にすることもなく、お気に入りのテレビ番組を海外から視聴できる。タイムシフトと同時に“場所”をシフトすることができるわけで、たしかに、そうした人たちにはうってつけのテレビだ。

 しかし、一般の人たちにとってLF-X1のサイズと重さはネックだ。少なくともホットスポットに持っていこうなどとは思わないだろうし、出張鞄に入れのもちょっとためらうかもしれない。それに対して、LF-X5のサイズは魅力的。たとえば、仕事場に拘束される時間だが、サッカーの試合だけはリアルタイムで見たいとか、そんな理由でLF-X5を選択するのもアリ(誰のことだろう?)。フットワークの良さは、確実に利用シーンを増やしてくれる。欲を言えば、オプションで「お風呂ジャケット」が出てくると、さらに利用シーンは広がるのだが……。

 また、個人的には、AVルームに持ち込んで、Webも閲覧可能な“第2の画面”として、あるいはタッチパネルリモコン端末として使ってみたいと感じた。イメージとしては、「プラズマ<ベガ>HZシリーズ」に付属していたエアタクト端末だ。タッチパネルリモコンのプリセットが充実すると、かなり現実的な使い方になると思われる。

 ソニーでは、将来的にノートパソコンや「PSP」をNetAV端末にすることも検討しているという。これが実現すると、出張鞄はさらに軽くなるし、仮にベースステーションの単体発売が実施されれば、大幅な価格ダウンも期待できるはず。ちなみに、LF-X5でも、ベースステーション設定の中に“端末の追加”という項目があったため、後はクライアント側の対応次第だろう。パソコンを対象にすると、コピーワンス番組の伝送など課題も出てくるが、そうした展開にも大いに期待したい。

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