コラム
» 2005年07月01日 11時12分 UPDATE

西正:注目すべきBBCの試み――テレビ局が提供するタイムシフト視聴 (1/2)

ネットとテレビの融合は、わが国でも大きなテーマとして注目されているが、英BBCが注目すべき先進的な実験の準備をしていることが明らかになった。今後のわが国の方向を探る上でも見逃せないこの実験について、検討してみることにしよう。

[西正,ITmedia]

「ネットとテレビ」を融合するBBCの実験

 英BBCは9月をめどに、見逃したテレビ番組や聞き逃したラジオ番組を、「放送から7日以内ならネット経由でパソコンから視聴できる」というサービスの実験を開始することを明らかにした。ネットとテレビの融合が難しいと悩んでいる日本の関係者からすれば、驚くべき実験だ。

 実験期間は9月から12月までの3カ月間で、モニターの対象は5000人規模に及ぶ。モニター全員に動画再生ソフトの「インタラクティブ・メディア・プレーヤー」を配布し、モニターは視聴したかった番組をネット経由でダウンロードして入手する方式を採る。電子番組表(EPG)機能とセットのサービスであり、7日先までの放送番組を対象に予約可能としている。

 ただし、この実験はタイムシフト視聴としての利用が前提となっている。だから、“タイムシフトのタイムシフト”までは不要だろうという考えに基づき、著作権管理技術(DRM)によって、7日間が経過すると再生もコピーもできない仕組みになっている。

 配信はBBCのサーバ運用負担を抑える狙いから、ファイル交換のようなP2Pによる方式が予定されており、テレビ番組が190時間分、ラジオ番組は310時間分までストックできるようになっている。

 BBCは実験中及び本サービス移行後も、公共放送として、受信料負担者への追加サービスとして実施することとしており、海外からは利用できないようにしている。

BBCと日本、何が違うのか?

 放送番組をめぐる著作権の取扱いそのものが、英国と日本で大きく異なるとは思えない。「著作権を保護すべきである」という考え方自体は、先進諸国間ではほぼ共通認識となっているからだ。そういう意味で、実験後のBBCがどこまでサービスを展開していくのかという点については、大いに注目されるところだ。

 一方、日本でこれと同じことをやろうとしたら、少なくとも現状ではかなり厄介なことになるのは間違いない。実験であっても、二の足を踏まざるを得ないのではなかろうか。著作権の取扱いという面からは、ネット経由である点、7日間のタイムシフトが可能となっている点の2つの点が問題視されることになるだろう。

 ちょっと意外かもしれないが、権利者の許諾を得る上で苦労しそうなのは、ネット経由で流すからということよりも、7日間のタイムシフトを可能にすることの方である。

 そもそも今のテレビ番組については、ファーストランと一定期間内に一定回数の再放送を行うことの権利許諾しか得ていない。それを超える利用となると、それがインターネットであろうと他メディア、例えば、CS放送やパッケージ物であろうと、個別に別立ての処理が必要になってくる。

 映画のように、オールライツで最初に関係者の権利を押さえてしまうことが出来れば、権利処理の問題も随分と違ってくるだろう。しかし、テレビ番組の著作権処理は、以前にも触れたがブランケット処理という方法が使われており、放送として流すためだけに便利なルールになっている。それが逆に足枷となって、他のメディアへの展開を難しくしてしまっている感がある。

 放送に限っての話ならば、ブランケット処理はコストも手間もかけず、著作権団体に払う金額もミニマムにし得るという意味で、非常に効果的なルールだったのであるが、放送が放送だけで完結しない多様な展開が可能になってきた時代にあっては、逆に他メディアへの展開の制約になってしまっているのだ。

 BBCの実験についてだが、仮にBBCが放送する全部の番組が対象になっているとすると、それは相当大変な権利処理が必要になるし、たとえ実験であっても許諾しないという権利者は必ず出てくるに違いない。

 つまり、ニュース番組も含めて、番組の出演者をはじめ、ありとあらゆる関係者に、「ご出演いただく番組は7日先までこういうVOD的な見方をされる可能性がありますよ。それで構いませんね? これだけの出演料の中で全部OKですよね?」と言って、それで了解が得られて初めて出演してもらうことになるので、実験であることを前提にしているとは言え、かなり難しい挑戦であることは間違いない。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.