ITmedia NEWS >

進化した正統派スタイリッシュコンパクト――「IXY DIGITAL 800 IS」の開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(3/3 ページ)

» 2006年05月11日 20時28分 公開
[永山昌克,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

「線」にこだわったストリームデザイン

――IXY DIGITAL 800 ISのデザインはどのような経緯で決まったのですか?

信乃氏: 今春は、IXY DIGITAL 800 ISのほかに「IXY DIGITAL 80」と「IXY DIGITAL 70」を同時期に発売しました。この3機種のデザインを決める際に、それぞれにどんな個性を持たせるかをまず考えました。3台を共通のデザインに仕上げることは簡単ですが、当社のデザインとしては、同じにするつもりはありませんでした。

 IXY DIGITALのデザインには、大きく分けて2つの方向があります。ひとつは、以前から採用している特殊ステンレス合金SUSの外観を生かしたソリッドで四角いイメージです。IXY DIGITAL 80とIXY DIGITAL 70の2台はこの路線を採用することにしました。特にいちばん下のIXY DIGITAL 70は、「定番のIXY DIGITAL」と位置づけ、いつの時代にも変わらないベーシックなデザインを目指しています。

 もうひとつの方向は、ボディを連続曲面で仕上げる「カーバチャーデザイン」と呼んでいるものです。昨年のIXY DIGITAL 600/700は、1/1.8インチのCCDを搭載した最高機種としてカーバチャーデザインを採用しましたが、今回のIXY DIGITAL 800 ISは、1/2.5インチの最高機種として、このカーバチャーデザインを受け継ぎながら、3層のレイヤー構造という新しい試みを取り入れています。

板羽氏: 商品企画としては、IXY DIGITAL 800 ISには上位機種としてのラグジュアリー感や高級感を持たせつつ、同時に光学4倍ズームやISといった機能面での先進性をアピールできるようなデザインをお願いしました。最近は、他社製品も含めてコンパクトデジカメのスペックが向上しているため、お客様の選択のポイントとしては、見た目の印象やデザイン性がいっそう重要になっています。

――カーバチャーデザインを進化させた、この新しいデザインの狙いは?

高橋氏: たとえISを搭載しても、ボディが持ちにくい形状であれば手ブレが生じてしまいます。きっちりとホールドできるデザインであってこそ、ISとの相乗効果で手ブレをいっそう軽減できると考えています。そこでまず、モードダイヤルをボディに埋め込み、右手親指を置くスペースを確保しました。また上から見ると、グリップ側に向かってわずかですが徐々に厚みが増し、かつボディ全体が反っていることが分かると思います。側面に傾斜を付けたことや、角のアールを大きくしたことも含め、これらはボディのグリップ感を高める狙いがあります。

 また従来のカーバチャーデザインに対して、このIXY DIGITAL 800 ISでは「ストリームデザイン」という呼び方をしています。これは、ボディを構成する様々なラインが流れるようにデザインされているという意味です。IXY DIGITALでは外装にステンレスを採用しているため、それをプレス加工して組み合わせると、どうしても継ぎ目の線が生じてしまいます。これらの線を隠すのではなく、線自体をきっちりとデザインしようと考えたのです。

photo キヤノン 総合デザインセンター コンシューマ商品デザイン部の高橋鋼政氏

――前面と背面、および中間部で3層に分かれたデザインは、これまでのIXY DIGITALのデザインからはかなり変化した印象を受けますね。

高橋氏: 3層のレイヤー構造については、まず背面をブラックにしたいという考えがありました。曲面を生かした全体のフォルムの中で、四角い液晶モニターの角や直線が主張しすぎないようにするためです。電源を入れ液晶を表示した際に、画面がより引き立って見える効果もあります。

 さらに部分的にブラックにしたことで、ボディが引き締まって見えるはずです。IXY DIGITALは画質にこだわってストレートな沈胴式レンズを採用しているため、ボディを薄くするには限界があります。店頭で他社の薄型モデルに並んだ場合、実際には薄くはなくても、さほど厚みを感じさせないデザインであり、かつしっかりと握りやすい形状であることをアピールできると思います。

 このブラックの部分は、電着塗装と呼ばれる、メッキに近い塗り方を採用し、しっとりとした光沢感を出しました。一方、前面は純粋なシルバーではなく、青緑の塗料を混ぜることで、深みのあるシルバーに仕上げています。そして中間部は、ややシャンパンがかったシルバーです。ここにはいったん塗装した後に、上からトップコートを加えています。

 IXY DIGITAL 800 ISは、IS、光学4倍ズーム、高感度という3つの新機能を搭載しましたが、この3層構造のデザインはその3つを象徴していると考えてください。最近のコンパクトデジカメは、デザインやサイズが同じようなものになりがちです。しかし、IXY DIGITALは、IXY DIGITAL以外の何かに似ていることは決して許されません。独自性と存在感を追求した結果のひとつが、このIXY DIGITAL 800 ISのデザインなのです。

photo 中央の黒いワックスモックは、最も初期の段階で全体の形状を確認するためのもの。左のシルバーのワックスモックは、次の段階でストロボやファインダー窓の位置関係を把握するためのもの。右はデザインのイメージがほぼ固まったモックアップ
photo 左はモックアップで、右が実際の製品。ストラップリングやファインダー窓にやや違いがあるが、ほぼそのままの形で実現されたことが分かる
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.