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CESで分かった、2009年のトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2009年01月23日 11時15分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

テレビ画質の進化

麻倉氏: テレビ技術の進歩が画質に対しても寄与してきたことは間違いないのですが、これまでは画面サイズや薄さという部分に目が行きがちでした。今回のCESでは、ハイエンドではなく中級機クラスにまでLEDバックライトや240Hz駆動が一般化する様子が現れており、技術の進歩が高画質化へ寄与していることを強く感じました。

photo Samsung Electronicsは「LED LCD TV」と銘打って、大々的にLEDバックライトの採用を開始した

 あまりにLEDバックライトや240Hz駆動を実装した製品が増えたため、それらの技術を備えないことがビハインドであるように感じられるほどです。ですが、240Hz駆動については、「本物か擬似か」も話題になりました。

 120Hz駆動ならば1枚ですが、240Hz駆動ともなると中間画像を2枚生成する必要があるのですが、これはかなり技術的な困難を伴います。ソニーは最初にそれを実現しましたね

 東芝はパネル自体は120Hz駆動ですが、同時にバックライトを明滅させることで残像による動画ボケを抑制するとしています。LG Electronicsの方式も同様です。また、LEDバックライトは既に珍しいものではなくなり、全白/全黒の比較ではありますが、100万:1や200万:1といったコントラスト比の数値競争も始まっています。

 パナソニックは「Neo PDP」の進化形を展示しましたが、Neo PDP自体、基本的な考えはプラズマパネルの発光効率を高め、画質や省エネ性能の向上を図るというアプローチです。プラズマについてはこれまで画質についてのエクスキューズが少なかったので、CES全体を通じてみれば、相対的に液晶陣営が努力を重ねているという印象です。

photo 超解像の4K2Kへの適用を示した東芝

 メーカーごとに目をやれば東芝の勢いが目につきます。その象徴が超解像でしょう。日立製作所も展示こそしていましたがその内容はCEATECと同等で、この分野では東芝の独走状態です。既存製品(REGZA ZH7000など)に実装されている超解像は地上デジタル放送の1440×1080を1920×1080とするための手段として使われていますが、4K2Kへの適用がひらかれたのは大きなトピックです。

 ポストフルHDの話をすると、3Dという視点もありますが、これは画質ではなくエンターテイメント性を高めるというテーマの話であり、来る次世代の大画面である4K2Kを実用的なものとする手段がとうとう姿を現したのです。商用としての4K2Kの世界が近づいてきたことを感じさせますね。

 4K2Kのディスプレイが登場するころとなっても4K2Kのコンテンツは非常に数少ないでしょうから、フルHDからの超解像処理が欠かせなくなります。単なる従来型のアップコンバートでは、もったりとした、甘い映像になってしまうことは既に分かっていますが、東芝の4K2K超解像は細部のディテールも失われず、かなり良好なパフォーマンスを見せていました。ただ、試作段階のためか、現時点ではノイズや輪郭強調が目立ったことも確かです。今後、4K2Kにふさわしい超解像として、それらの改善が求められます。

 ただ、東芝ではCellを利用することで、超解像のほかにも、全チャンネル録画や手かざしといった新しいユーザーインタフェースも実装していこうと意欲を示しています。加えて、Cell TVはPLAYSTATION 3を除いた初めてのCell搭載AV製品であることからも期待したいですね。昨年の東芝の展示からはHD DVDの撤退でかなり残念な感じを受けましたが、今年は世界的にも最高水準の展示内容でした。

photophoto 東芝の展示していた手かざしインタフェース(写真=左)、折り曲げられる有機EL(写真=右)

 まだ部材レベルではありますが、ソニーがハワード・ストリンガーCEOのキーノートで披露した、折り曲げられる有機EL「Flex OLED」も注目したいですね。ソニーブースに展示されていたのは、120×160ピクセルとまだ小さなものでしたが、曲げることが可能になれば、折り曲げられるテレビやブックリーダー、PCなども可能になります。デバイスの進化が製品の形を変えるという例といえるでしょう。

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