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» 2010年04月23日 15時13分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:3Dテレビの“鉄則” プラズマテレビ編 (1/3)

各社の先陣を切ってパナソニックからフルハイビジョン3D対応のプラズマテレビ“VIERA”VT2シリーズが発売された。見るテレビから“体験するテレビ”への進化は、テレビにどのような変化を求めたのか。“画質の鬼”麻倉怜士氏のインプレッションをお届けする。

[聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]

 各社の先陣を切ってパナソニックからフルハイビジョン3D対応のプラズマテレビ“VIERA”VT2シリーズがいよいよ発売された(→関連記事)。“画質の鬼”と呼ばれる麻倉氏の目には、パナソニックの3Dテレビはどのように映ったのだろうか。さっそくインプレッションを聞かせてもらった。

photo 試聴機はパナソニック「TH-P54VT2」

――いよいよ3Dテレビが発売されました

麻倉氏:パナソニックの3Dテレビは、初期からチェックしています。最初に見たのは、2008年の夏ごろ。「CEATEC JAPAN 2008」を前に、3D対応の103インチプラズマ試作機をチェックする機会がありました。SDからHDに進化したときはまた違うリアリティーを感じたことを印象深く覚えています。ただ、そのときは二重像(クロストーク)が多く見えていましたね(→関連記事)。

 今回、試聴したVIERA(54インチのVT2)について言えば、クロストークはとても少なくしていますね。もともとプラズマは、液晶よりもクロストークに強いという特長があります。液晶は画面の上から1本ずつ描画していきますから、応答速度が遅いと部分的に左右の絵が混ざって二重像になりやすいのですが、プラズマは面発光で全体をドンと描きます。それがクロストークを抑えることにつながります。

 蛍光体も大きな改善点です。蛍光体というのはブラウン管の時代から使われていますが、以前は「30年に1回しか変わらない」などと言われるほど進化が遅いものでした。とくに緑の蛍光体は発光時間が長く、私が使っているパイオニアのモニターでも、白いテロップが流れると緑の尾を引いたりします。

 3Dテレビでは、この蛍光体がクロストークの原因になっていました。ですが、パナソニックは、蛍光体の発光時間を従来の4分の1にまで短くしたそうです。それが効いて、クロストークの少ない快適な3D映像になりました。

photophoto 今回試聴したセット。プレーヤーとして、同社のBlu-ray Discレコーダー「DMR-BWT3000」を利用している

――クロストークが問題になる理由を改めて教えてください

麻倉氏:われわれは普段、立体の世界にいるので、ものが立体的的に見えるのは自然なことです。しかし3Dテレビは、2Dの中で立体視するもの。右目用、左目用の映像を交互に表示して、片方を液晶シャッターでふさぐ(アクティブシャッター方式の場合)。これはとても人工的なことで、ならば、なるべく脳に負担をかけないようにする必要があります。クロストークは大きなストレスになりますから、3Dテレビの大きな課題なのです。

 人間の目が立体を感じる仕組みは、大きく4つあります。1つは良く知られている「両眼視差」、近くを見るときほど目が内側に寄り、遠くを見る場合は離れるといった「両眼輻輳(ふくそう)」の仕組み。遠景・近景にピントを合わせる「フォーカス調整」(水晶体の焦点)、そして「運動視差」です。運動視差というのは、対象物が近くを通るときは動く距離が長く、遠い場合は短いといったことです。これは2Dでも、映像によってはすごく立体的に感じます。

 3D映画「アバター」がヒットした秘密の1つに、“視差が少ない”から視覚心理に無理をしていないことが挙げられます。大きく飛び出したり、引っ込んだりはあまりしませんが、例えば“手前の鳥は早く飛び、遠い鳥は遅い”といったように、運動視差など人間の知覚心理をうまく利用して巧みに立体感を出していました。見る人にストレスをかけず、立体を感じてもらう。それは完全に狙ってやっていますね。

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