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「2011 International CES」をめぐる情報の見え方本田雅一のTV Style

» 2011年01月12日 16時33分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今年一年の家電業界を占う「2011 International CES」が終了した。毎年、各社がその年にどんな製品作りを目指しているかを示す場でもあるCESだが、今年は情報がやや錯綜(さくそう)しているように思える。スマートフォンをはじめとするネットワークに接続されたインテリジェント機器が普及してきたことで、家電とPC/IT、携帯電話といった異なる分野の境目があいまいになってきているからだ。

 業界が違えば同じ話でも物事の見方は異なる。PCや携帯電話の業界から見れば、新しいハードウェアや機能が1年経過しても普及していないようでは、もうその話は終わり、と判断されてしまう。例えば、新世代の携帯電話ネットワークの導入となると、門外漢は“こんな高価なネットワークは普及しない”と、携帯電話業界の人からすれば無視できない言い方をすることもある。

CESの展示は、今年も3Dがメインだったが、ネットワーク機能の充実したスマートテレビなどの動きも大きくなった

 テレビでの場合も同じで、長期サイクルでゆっくりと買い換えが進むことや、小型、中型、大型で異なる顧客層、またハイエンドからローエンドまで製品の幅広さといった事情があり、他に似た商品カテゴリーは少ない。ところがデジタル化された身近な製品ということで、どうしても他ジャンルの製品と同一視してしまい、製品メーカーと消費者、それにその間をつなぐメディアの間で考え方の食い違いが起きやすい。

 次回から今年のInternational CESで見られたトレンドについて、順を追って話をしていきたいが、まずはいくつか、前提となる情報を整理することから始めたい。

 ある家電メーカーの関係者は、International CESの2日目に視察に訪れた時、「もしかして3Dテレビばかりの展示が自分たちだけだったらどうしよう? もしかして孤立してるのか?」と心配しながらラスベガス入りしたという。というのも、“3D関連の展示はなくなり、特に世界市場でシェアを奪っている韓国勢は、すっかりスマートテレビばかりの話題になっている”と伝えた記事があったからだ。

 また、別のPCベンダー幹部は、「いったいなぜこんな記事が出るのか、その根拠が分からない」と憤慨していた。それは、Windows 8がARM版をリリースすると発表したことを受け、“マイクロソフト自身がPC時代の終息を認めた”と伝えるニュースがあったからだ。

 ところが、実際には現地での状況は全く違ったものだった。

 例えば、おそらく最も多くの3Dテレビを展示していたのはサムスンだ。サムスンは今年販売するテレビのうち、46型以上の大半が3Dになると話していた。彼らの心配ごとは、赤外線からBluetoothへと同期方式を変更した新3Dメガネの供給が不足しそう、ということである。ライバルのLG電子もまた3Dテレビの展示が多く、テレビを紹介するメインのステージは3Dだった。当然、3Dフォーマットの策定に深く関わってきたソニー、パナソニックはもちろんである。

米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏

 一方、マイクロソフト、スティーブ・バルマー氏の基調講演前に行われた記者会見で、次期Windowsの適応領域を拡げるためにARMをサポートするとの説明が行われ、PCプラットフォームに収入の多くを依存するインテルも、Windowsプラットフォームの強化と適応範囲拡大がPC全体の利益になるとしてエンドースのメッセージを発していた(→ARM対応ですべてのデバイスにWindowsを──Microsoft基調講演)。

 確かにアプリケーションがPC上からネットワークサービスへと移り、フロントエンドツールとして「iPad」のような製品が使われるようになると、PCはネットワークサービスを利用する唯一の製品ではないという印象を持つかもしれないから、上記のニュースのような見方をした人がいても不思議ではないだろう。しかし、PC需要は昨年、過去最高を記録したことも忘れてはならない。

 1つ言えるのは、デジタル製品がネットワークに溶け込み、カテゴリーの境目がなくなってきたこと。より多様性が増し、1つの切り口だけでは物事を表現できなくなってきている、ということだろう。

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