ITmedia NEWS >

買いたくても買えない? エコポイント狂騒曲本田雅一のTV Style

» 2010年12月06日 13時08分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 12月からエコポイントが従来の半額になるとあって、凄まじい勢いで売れたテレビ。量販店に話を聞いてみると例年の5倍以上の売れ行きだったという(→関連記事)。さらにBlu-ray Discレコーダーもテレビと一緒に売れ、あるメーカーは昨年の3倍もの数を用意していたにもかかわらず、売り切ってしまったそうだ。

「薄型テレビ全体の販売台数・金額前年同月比と平均単価」(出典=BCN)。11月の薄型テレビの販売台数は前年同月比で505.3%、販売金額は同381.6%となった

 もちろん、これは将来の需要を先取りしているだけで、メーカーは喜んでいるわけじゃなかった。あまりに例年とは異なる振る舞いで一度に大量に売れるため、需要予測がしにくい。また競争も激しくなるため、一部では価格低下が行き過ぎる傾向もあった。一方、消費者にとっては価格が安く買えるのだからお買い得ともいえるが、ここまで極端な状況になると、喜んでばかりはいられない状況も出てくる。

 このエコポイント商戦で購入した人たちは知っていると思うが、人気商品は早々に売り切れてしまい、購入したくとも買えない、売りたくても売れない状態になってしまった。11月中に販売契約さえしておけば、納品時期が12月以降でもエコポイントはもらえたのだが、年末年始のテレビ番組は新しいテレビで見たいものだ……などと言っていたのも11月初旬の話。月末が近付くと、年内はもとより、来年に生産出荷されるテレビまで売れるようになり、とうとう”完売”となるモデルが続出した。来年2月以降に生産出荷されるテレビまでエコポイントが付いてしまうと、政府が用意したエコポイント関連の予算をオーバーしてしまう可能性が出てきたため、メーカーに2月以降分の販売自粛を求めたという話まで聞こえてきた。

10月までの単月エコポイント発行点数。11月分の集計結果はまだ出ていない(出典は環境省)

 11月後半のメーカー別シェアを見ても、テレビやレコーダーで、普段は上位に顔を見せないメーカーの製品が上位にくる(お目当ての製品が売られていないため)といった現象まで起きた。メーカーも販売店もある程度余裕を持って予測はしていたものの、エコポイントの運用方針変更もあって、すべての予定が狂って狂乱状態だったということだろうか。

 ここまで来ると、たくさん一度に売れるチャンスだから値段が下がるなどと言ってはいられない。年末年始に新しいテレビで番組を見れないだけでなく、品物が圧倒的に足りない。「どんなテレビでもいいから欲しい」という方はともかく、買いたい製品を大まかに決めて店頭に臨んだ人の中には、残念な思いをした方も少なくないだろう。しかも来年1月末分までは売り切っているのだから、12月、1月になって2月以降の分が出てきたとしても、あまり現実感のない先の話になってしまっては気持ちもなえるというものだ。

上位モデルを狙うなら、来年末まで待ってもいい

 ということで、エコポイントが半額になっても、どうせ買い換えるものなら、今のうちに買い換えてしまえ! と、まだ販売されている隠れた人気モデルでもピックアップしようと思ったのだが、これだけ主要製品が売り切れていると、それもあまり意味がない。

 この連載に目を通そうという方は、きっと自分でこだわって製品を選びたいという方だろう。ならば、ゆっくり腰を落ち着けて春以降に購入してもいいのではないだろうか。とくに高画質・高機能を求める向きは、アナログ停波後の方が良い買い物ができる可能性が高い。アナログ停波祭りで一気に需要が高まっているのは、こだわり派向けの高級機よりも普及機が多いからだ。

10月までの年齢別エコポイント発行件数(個人申請、累積)。やはり中高年層の割合が高いようだ(出典は環境省)

 言い換えれば、来年の年末商戦は普及機の需要が先取りされた後ということになり、メーカーは画質や機能を強化した高付加価値製品に力を入れてくると考えられる。高付加価値製品と言っても、従来のコストの枠組みの中での話だから、とても現実的ではない値段のテレビ……という意味ではない。上位モデルを狙うなら、欲しいものが売り切れた時期に急いで買うのは得策ではないだろう。

 一方、なんでもいいから、即ち条件に合うテレビならどんなものでも……というのであれば、言うまでもない。エコポイントが半額でもいいから、出ている時期に購入したいものだ。実際にお店に行って在庫状況を確認しながら、狙いのサイズと予算で出物を探すほかないだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.