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NexTV-F、4K試験放送の準備は「順調」

» 2013年12月26日 21時25分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は12月26日、2014年度に開始予定の4K衛星放送に向け、実際の衛星放送環境を模したデモンストレーションを報道関係者に公開。試験放送に向けた“中間報告”として、準備が順調に進んでいることをアピールした。

会場になったスカパーJSATの東京メディアセンター(左)。あいさつに立ったNexTV-Fの元橋圭哉氏(右)

 今年5月に総務省「放送サービスの高度化に関する検討会」が作成したロードマップでは、2014年度中に高度狭帯域衛星デジタル放送による4Kテレビの試験放送を、そして2016年には高度広帯域衛星デジタル放送による8Kテレビの試験放送を実現することが提起されている。これを実現するため、放送局や家電メーカーなどを含む産学官の“オールジャパン体制”で組織されたのがNexTV-Fだ。あいさつに立ったNexTV-Fの元橋圭哉氏は、「現在は必要な機材の調達やチューニングを行っている。放送ギリギリまでチューニングを行い、素晴らしい映像をお届けすることを目指したい」と話している。

 公開したデモンストレーションは2種類。1つは、東経124/128度CS衛星を利用する高度狭帯域衛星デジタル放送を想定したもので、カメラで実際に撮影した映像をリアルタイムでHEVCエンコードし、疑似衛星回線で伝送する。映像の符号化方式は、現在のH.264比で約2倍の圧縮率を誇る「HEVC」(High Efficiency Video Coding、H.265)。それを本番同様、MPEG-2 TS(トランスポート・ストリーム)に多重化し、衛星放送に類似した変調/復調も行っているという。なお、高度狭帯域方式では、一般的な45センチ前後のパラボラアンテナで受信できる。

 NexTV-Fの顧問で、また総務省の情報通信審議会・放送システム委員会で主査も務める東京理科大学の伊東晋教授によると、今回の映像はビットレートが35Mbps程度で、「衛星のトランスポンダー1つの容量は40.5Mbpsのため、映像に十分(な容量を)まわすことができる」という。

デモの概要(左)。東京理科大学の伊東晋教授(右)

その場で撮影した映像をリアルタイムエンコードして模擬伝送している。4Kならではの精細感に60フレームのスムーズな動きを見せていた

 HEVCデコーダーを介して4Kモニターに映し出された映像は、3840×2160ピクセルの毎秒60フレーム(4K/60p)で、カラーフォーマットは4:2:0(YCbCr 4:2:0)。「放送フォーマットはまだ議論中で、春にはフィックスしたいと考えているが、4K/60p 4:2:0になるのではないか」。

2016年の到達点を“画質”で示した

 もう1つのデモンストレーションは、NexTV-F参加企業が共同開発を進めている4K/60pリアルタイムエンコーダーLSI(1チップ化)に向け、その圧縮アルゴリズムをソフトウェアでシミュレーションしたというもの。各放送局が作成した4K番組をショートクリップにして、事前にソフトウェアエンコードした映像を4Kモニターに映し出していた(権利処理の都合で写真は掲載不可)。

 リアルタイム符号化におけるアルゴリズムは、圧縮効率と画質の向上を目指して研究開発と各種パラメータのチューニングが続けられており、今回のデモは「いわば、2016年の到達点を“画質”で示したもの」。ビットレートはこちらも35Mbps程度だ。そしてLSIが完成した暁には、マルチLSIにより8K映像のリアルタイム符号化にも活用する計画だ。

4K/60pのハードウェアリアルタイムエンコーダー開発に向け、の圧縮アルゴリズムをソフトウェアで再現した

 ただし、2016年の8K試験放送時に使用する広帯域衛星放送システムでは、BSの1トラポンで8Kを1チャンネル、そして4Kを3チャンネル同時に送出することも視野に入れており、この場合は4K/60pを25Mbps程度に圧縮する必要がある。伊東氏は、「HEVCはそれくらいの実力は持っている符号化方式。技術者は悲鳴を上げそうだが、まだ余裕はあると考えている」とハッパをかけた。

 「それでも、少なくとも来年の4K試験サービスには十分に“使えるレベル”に近づいた。実際の試験放送ではさらにワンランク、ツーランクほど画質が上がるだろう」(同氏)。

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