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「新K2技術」で活きる“ウッドコーンの音”――JVC「EX-HRシリーズ」

» 2014年06月19日 16時41分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 JVCケンウッドは、ウッドコーンオーディオシステムの新製品として、CDドライブ搭載の「EX-HR9」など3製品を6月中旬から順次発売する。2011年に発売した「EX-AR9」などの後継となるスタンダードモデルだ。

最上位の「EX-HR9」(左)。中位機の「EX-HR7」(右)

 3年ぶりのモデルチェンジにあたり、JVCは高い目標を設定した。それは「ハイレゾ対応モデルでハイレゾ音源を再生したときの感動を、CDでも味わいたい、ということだ」(開発を担当したJVCオーディオ事業部の今村智氏)。レシーバーには、独自のアップサンプリング&ビット拡張技術である「新K2テクノロジー」と、1月に発売したハイレゾ対応モデル「EX-N50/N70」と同じデジタルアンプ「新DEUS」を搭載。S/Nや高域の再生帯域を改善する。

新K2テクノロジーの概要と効果。3モデルのレシーバーに搭載している

 組み合わせるスピーカーは、最上位の「EX-HR9」と下位モデルの「EX-HR5」がフルレンジ1発のキューブ型。しかし中位モデルの「EX-HR7」は2Wayのブックシェルフ型スピーカーのため、一見どれが上位機なのか分かりにくい。

 実は、「EX-HR5」と「EX-HR7」のスピーカーは、今年1月に登場した“ハイレゾ対応モデル”「EX-N50」および「EX-N70」のものと共通だ。対して「EX-HR9」のスピーカーは、“究極のフルレンジ”を目指して開発した「EX-AR9」のスピーカーをベースに、ハイレゾモデル開発で培ったノウハウを加えた。

 例えばキャビネット内にある響棒。上部のスプルース響棒などは「EX-AR9」から継承したものだが、新たにバッフル裏のチェリー材響棒が厚くなった。「ハイレゾモデル開発時、ここを厚くするとハイレゾの高域に効くことが分かった。今回はCD音源がメインだが、新K2テクノロジーでアップサンプリング&ビット拡張処理した音源にも効く」(今村氏)という。このほか、スピーカーターミナルにダブルナット構造を採用し、接触抵抗を極力小さくしたことも新しい。「鮮度の高いエネルギッシュな音になった」。

「EX-HR9」のユニットは、EX-AR9と同じ90ミリ径の「異方性振動板」を採用している。木製の振動板は木目の繊維方向によって伝搬速度が異なるため、振動板の上下左右に“羽根”を取り付け、上下の羽根を少し細くすることで水平方向の指向特性を改善、音場空間が広がるという(左)。バッフル裏のチェリー材響棒が厚くなった(右)

「EX-HR9」に採用された技術。センターキャップの内側にメイプルの木片吸音材を装着したり、木製センターキャップやウッドボイスコイルボビンなどは従来機から継承したもの

 JVCは、フルレンジのウッドコーンスピーカーに強いこだわりを持ってきた。それは、“小口径スピーカーならでは”の定位感と自然な音場の広がりに加え、木製振動板が本来持つ「音の先鋭感、立ち上がりの良さ」といったメリットを活用するのに適しているからだ。

開発を担当したJVCオーディオ事業部の今村智氏

 「2Wayモデルでは、ウーファーとツィーターで分担するためにネットワーク回路で(音楽信号を)分けなければならない。するとウッドコーン本来の先鋭感が犠牲になってしまう」(今村氏)。それを回避するため、プレミアムモデルの「EX-A300」ではバイアンプ&バイワイヤリング駆動を採用したが、「あまり一般的ではない」ことやコスト面の問題もあってスタンダードモデルには使えないという。

 では、2Wayスピーカーを採用した「EX-HR7」や「EX-N70」がダメかといえば、そうではない。今村氏によると、ハイレゾモデルの開発を通じてもう1つ分かったことがあるという。それは「ハイレゾ音源、あるいは新K2技術でハイレゾ相当の情報量になった音源では、ネットワーク回路を介してもウッドコーンの持つ先鋭感があまりスポイルされない」ということだった。つまり、K2技術と組み合わせることで、ウッドコーンならではの音と2Wayのワイドレンジを、低価格なCDモデルでも楽しめるようになったといえるのかもしれない。

「EX-HR5」(左)

型番 EX-HR9 EX-HR7 EX-HR5
実売想定価格 11万円前後 10万円前後 8万円前後
発売時期 6月中旬 8月上旬 6月中旬

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