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BRAUNが「家電デザインのルーツ」といわれる理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(4/4 ページ)

» 2015年10月21日 00時05分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 「ブラウンのデザイナーは、短期的なトレンドではなく、長期的なメガトレンドを常に観察しているからです。10年〜15年先、つまり深夜、航行する船が遠くの明るい灯台を見つめるように、ある程度遠くの目指すところを見つめ続け、変わらないだろうという方向性を読み込み続けているからです。だから、よくブラウン製品を長く愛用し続けている方に、“30年以上、この製品を使い続けているんです”と言われるのですが、デザイナーとしては非常にうれしいことです。それが今のキッチンに並んでいても何の違和感もなく、時間を感じさせないものであるからです。よく『ブラウンの家電は英国執事のような存在であれ』といわれます。後ろにいて見守っていてはくれるんですけど、用事がある時だけその存在に気づくようなものでありたいということから、すべてを削ぎ落としていて、不必要なものをすべてなくしているから心地良いんです」

 ブラウンは、なぜ常に革新性を追求することができるのか?

 「これはブラウンのデザイナーのDNAを表す言葉として『ブラウンニアーナ』という言葉があります。これは今までと違うことをやることにマニアックであれ、というような感じの表現を挿します。ブラウンのデザイナーというのはその素質がないとなれません。過去にシェーバーを35年間デザインし続けたエキスパートもいました。そういう状況で新しいデザインをし続けるのは、かなり大変なことだと思いますが、どんどん新しいことをやり続けることが、自分たちの癖みたいなものとしてDNAに刻まれているのです。だからこそ、新しいテクノロジーが出てきたら、いち早く使いたいし、いち早くそれを使って、デザインをすることを自分たちの生き様としている人がほとんどなのです」 

 ブラウンは、ディーター・ラムスという偉大なデザイナーによって、家電デザインのルーツとしての存在を確立した。そして、「ストレングス・オブ・ピュア」という新たなデザイン言語により、これからも家電デザインのルーツと呼ばれ続けるだろう。今回、ドイツ・クロンベルグの「ブラウンコレクション」を訪ねたことで、それを改めて確信したのであった。


Appleのジョナサン・アイブも影響を受けたブラウン製品たち

 米Appleでインダストリアルデザイングループのトップを務めるジョナサン・アイブ。スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した1997年に同職に就任して以来、iMac、MacBook、iPod、iPhone、iPadなど、現在の主要製品をデザインしたことで知られているが、それらの多くは、実はブラウン製品のデザインに強くインスパイアされて生み出されたものだというのは有名な話。それらをいくつか紹介する。いいデザインというのは、デザイン言語が共通であるということを理解してほしい。

「ポータブルラジオ T1000」

 ポータブルラジオ「T1000」は、ディーター・ラムスの代表作の1つ。セミプロ向けの高性能マルチバンド・ラジオ受信機で、世界のすべての周波数をカバーするという意味から「ワールドレシーバー」と命名される。ツマミやボタンをフタでカバーするところやシルバーと黒の配色が「MacBook Pro」のデザインに通じるという

計算機「ET44」

 計算機「ET44」は、基本機能である数字とほかの計算機能のボタンの色を変えた機能的な電卓。初代iPhoneの計算機アプリは円形ボタンやオレンジ色の“=”ボタンなど、ほとんど同じデザインだ。ちなみに後継モデル「ET66」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクション

ポケットラジオ「T3」

 ポケットラジオ「T3」は、白色の長方形に円形のダイヤル、そしてスピーカー部分の小さなパーフォレーションを正方形を構成。縦にして四角形を液晶画面、円形をクリックホイールにあてはめれば、まさに初代iPodだ。簡潔なデザインは、まさにレス・バット・ベターの代表的アイテム


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