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エプソン「EH-TW8300W」で分かったHDRコンテンツとスクリーンの相性山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2016年10月27日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]
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 8月の本連載で、 HDR(ハイダイナミックレンジ)対応のファームウェア・アップデートを果たしたJVCのプロジェクター「DLA-X750R」の仕上がりの良さについて触れた。

 その後、同社から家庭用モデルとしては初となる4Kリアル画素のD-ILAパネルを搭載した、350万円の超高級モデル「DLA-Z1」が発表され、AVファンの間で大きな話題となっている。

ネイティブ4Kパネルを搭載した「DLA-Z1」

 青色レーザー光源を蛍光体に照射し、青と黄色の光を得たのち、その黄色光からダイクロイック(分光)ミラーを用いて赤色と緑色の光を生成して3原色を得る仕組み。このレーザー光源によって3000ルーメンと2万時間の光源寿命、さらにデジタルシネマで定められたDCI-P3色域で100%、BT.2020色域で80%のカバー率を誇る広色域を達成している。また、注目すべきは超高級機にふさわしい本格的な光学ブロック。新開発のオールガラスの16群18枚構成のレンズブロックが搭載されている。

 12月発売を目指して本機担当エンジニアたちは画質チューニングに一意専心の日々のようだが、10月前半にその画質を垣間見る機会があった。まず印象的だったのが、新開発のオールガラス・レンズブロックによって得られる精細感の表現。HDR コンテンツのパフォーマンスについては、DLA-X750R以上の可能性を感じさせるものの、これからの追い込みに期待したいと思わせる出来だった。最大輝度1800ルーメンのDLA-X750Rが奇跡的なHDR表現を身につけていただけに、DLA-Z1への期待は大きい。

 また、この春北米でいち早く発売が開始されたソニーのHDR対応超弩級プロジェクター「VPL-VW5000」が、11月下旬から日本でも入手可能になったことにも注目したい。青色レーザー光源を2色の蛍光体にぶつけて3原色を生成し、加法混色によってフルカラーを得るという仕組みはDLA-Z1同様だが、こちらの最大輝度は5000 ルーメンで価格は800万円。その画質は見応え十分だが、ファンノイズはかなり大きい。いずれにしてもDLA-Z1、VPL-VW5000ともに値段を考えれば、おいそれと手を出せるものではないだろう。

ソニーの超弩級プロジェクター「VPL-VW5000」

 一方、筆者が実際の画質とプライスタグを見て、これなら多くの映画ファンにお勧めできると確信したのが、8月に発売が開始されたエプソンの「EH-TW8300W」だ。実勢価格約40万円とかなり手頃な製品だが、その4K&HDR画質の出来はとてもよく、 100〜120インチクラスのスクリーンをお使いで、プロジェクターの買い替えをお考えの方には恰好の製品だと思う。

エプソンの3LCD方式のホームプロジェクター「EH-TW8300W」は39万9980円(税別)

本機は、画質と使い勝手のよさでAVファンの定番機となっていた、透過型液晶パネル採用「EH-TW8200」の3年ぶりのフルモデル・チェンジ機。表示パネルは0.74型フルHD仕様の高温ポリシリコンTFT液晶パネルと従来通りだが、フレーム単位で半画素分斜め方向にずらす独自の「4Kエンハンスメント・テクノロジー」を組み合わせることで4K相当の高画素化を実現している(この4KエンハンスメントはOFF にすることも可能。その場合はフルHD表示となる)。

 この画素ずらしによって4K相当の解像度を得るというのは、JVCのDLA-X750Rや同社の「EH-LS10000」同様だが、反射型液晶タイプでレーザー光源を使用したEH-LS10000は、HDR対応機に生まれ変わって、型番が「EH-LS10500」となって11月末から発売が開始されるという(明るさ1500 ルーメン。約80万円)。

エプソン「EH-LS10500」

 EH-TW8300Wの光源は250Wの高圧水銀ランプで、明るさは2500ルーメンとDLA-Z1に迫る最大輝度が実現されている。ちなみに型番末尾のWはワイヤレス伝送の意で、本機は世界初の4Kワイヤレス伝送を実現したモデルとなる。ただしこの場合、伝送速度は9Gbpsに制限されるので、4K/HDRコンテンツは映画などの24p(24フレーム/秒)収録作品の伝送に限定される。10メートル以上の長尺HDMIケーブルを使った4K伝送時のトラブル発生事案をよく聞くだけに、4Kワイヤレス伝送を歓迎する向きは多いかもしれない。

4K対応のWireless HDトランスミッター。すっきりしたホームシアターを実現できる

 透過型液晶パネル採用機で気になるのは“黒浮き”だが、レンズブロック内の迷光を抑えるエプソン高級機でお馴染みの「ディープ・カラー・テクノロジー」に磨きがかけられていて、不満を抱かせない漆黒の表現が得られている。また、絵がらに応じてランプの光量を制御するオートアイリスが刷新され、ダイナミックレンジの一層の拡大も図られている。

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