ITmedia NEWS >

マルチメディア教材は“画面の外”へ――歴史と現在をつなぐHMD(2/2 ページ)

» 2005年04月04日 15時14分 公開
[岡田有花,ITmedia]
前のページへ 1|2       

RFIDを活用、“モノ”が自身を語る

 HMDや映像コンテンツに、RFIDによる位置検出技術を加えた新教材も現在研究中だ。東大院学際情報学府修士2年生の飛弾信崇さんがベネッセの寄附講座「東京大学大学院情報学環・ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)」で研究している「モノ語りシステム」がそれ。

 “モノ自体が自分のことを解説する”というのがモノ語りシステムのコンセプトだ。HMDとRFIDリーダーが接続されたVAIO Uと、RFIDタグを3つを貼り付けた三葉虫の化石を利用する。

 RFIDリーダーのそばで化石持つとリーダーが検知。HMDに三葉虫の映像が現れ、「われわれは人類が誕生するはるか昔に生まれた」などと語りかけてくる。持ち方を変えると解説映像や音声が変化。頭部を持つと目について、他の部分を持つと三葉虫の生態や地球の歴史について語ってくれる。実際の化石と映像とを重ね合わせて見ることで、まるで化石自身が語りかけているかのような不思議な感覚が味わえる。

三葉虫の化石の裏にRFIDタグを3つ添付
三葉虫を持つ角度を変えると、HMDに映し出される映像が変わり、解説音声が流れる
映像コンテンツの例

 モノ語りシステムの応用分野は広い。地球儀にタグを貼り付け、触っている地域の解説を聞いたり、一見しただけでは使い方が分からないような道具にタグを貼り付けて、道具自身に使い道を語らせるなど、「RFIDタグをつければ、何でも教材になる」(山内助教授)。今後は改良を重ね、夏休みごろに博物館で実証実験を行う計画だ。

 「将来は、VAIO Uの代わりに携帯電話を接続したい」(飛弾さん)。いつでもどこでも学習できる教材を目指す。

マルチメディア教材は“画面の外”へ

 マルチメディア教材研究の分野では現在、ITを使ったメディアコンテンツと現実世界の学びとの融合が進んでいるという。例えば、カメラと画像認識機能付きPDAを持って外出し、見つけた生物を撮影すれば、その場で生物名や生態が分かる教材や、GPS機能つきPDAを持って広場に出、仲間と協力して狩りを行い、動物生態をシミュレーションする教材などが研究されている。

 「キーワードは“画面から出よう”。画面に表示するだけのマルチメディア教材は、1980年代に完成度の高いものが発表されており、すでにでやり尽くされた」(山内助教授)――CD-ROMやインターネットとPCを使った音声・映像だけの教材には学習者側も慣れ始め、強い力を持たなくなってきているという。「田舎の分校に始めてTVが導入され、教育番組が放映されたとき、生徒は釘付けになったというが、今やTVの教育番組は当たり前」(山内助教授)。コンテンツを使ったマルチメディア教材も、慣れの問題にぶつかり始めた。

 HMDやRFIDなど新しい技術を活用し、現実世界と情報科学とを融合させた新鮮な教材の開発が今、求められているようだ。

山内助教授(左)と飛弾さん。飛弾さんは工学部出身で、ディスプレイを研究していたという
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.