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ATIを取り込んだAMDの次なる目標

» 2006年10月26日 14時13分 公開
[Scott Ferguson, Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 米AMDがカナダのグラフィックスチップメーカーATI Technologiesの54億ドルの買収を完了した。同社幹部によれば、この買収により、両社はプロセッサ製品の柔軟性とエネルギー効率を高められる。

 買収計画が発表されたのは7月24日。業界観測筋は、この買収により、AMDはプロセッサ市場での地盤を強化し、より緊密に統合されたプロセッサやその周辺チップセットを提供できることになるととらえている。

 AMDは10月25日に買収手続きの完了を発表した

 ATIのグラフィックスチップ、チップセット、周辺チップにより、AMDはそうした技術を自社のプロセッサと組み合わせて、PCの入出力機能をより上手に処理できるようになる。

 それにより、AMDは同社のプロセッサを採用しているコンピュータメーカー向けに新しいPCプラットフォームを提供できることになる。声明によれば、AMDはそうした新しい統合型プラットフォームを、商業用、モバイルコンピューティング、ゲーム、メディアなどの市場に提供していく方針という。

 さらにAMDは、中央演算処理装置(CPU)とグラフィックス処理装置(GPU)をシリコンレベルで統合した新しい設計の新種のx86プロセッサを開発する計画だ。同社によれば、このプロジェクトは「Fusion」と呼ばれ、より優れたステップ関数増加とワット当たり性能を提供できるという。

 Fusionプロセッサは2008年末か2009年初頭に登場する見通し。

 AMDは12月14日にイベントを開催し、より詳細な製品ロードマップを発表する計画だが、同社アドバンストマーケティング担当副社長のパット・ムアハウス氏によれば、同社は来年、AMDとATIのエンジニアらのより緊密な共同作業によるメリットを生かした各種の新製品を投入する予定という。

 「われわれは隣人ではなく、家族になった。これからは、エンジニアもより緊密に連携できる」と同氏。

 またムアハウス氏によれば、AMDは既にプラットフォーム開発や技術サポートなどの分野については、ATIの社員をAMDの対応部門に統合する作業を開始している。

 AMDは2007年には、Microsoftの次世代Windows「Vista」向けに最適化され、安定したイメージプラットフォームを提供する企業PC向けの製品を発表する計画だ。

 現在、3D技術は主にゲームや設計の分野で用いられているが、Vistaの登場により、3Dグラフィックスはコンピュータユーザーが目にするほぼすべての要素に組み込まれることになるだろう、とムアハウス氏は指摘している。

 同氏によれば、AMDはより高性能なグラフィックス機能とより長いバッテリー寿命を備えたモバイルプロセッサ「Turion」の投入も予定している。

 さらにAMDは2007年には、高性能コンピューティングなどの分野で主要技術となる、「Torrenza」プログラムに準拠したストリーミングコンピューティングのプラグインを発表する計画という。

 AMDはTorrenzaプログラムの下、自社のプロセッサ技術の主要な要素を公開し、コプロセッサやそのほかのシステムコンポーネントが直接接続できるようにしている。

 ムアハウス氏によれば、その結果、例えば、デスクトップPC対ワークステーション対ゲーム機といったように、特定の用途に合わせたプロセッサ技術の設計における柔軟性が向上している。

 TorrenzaはAMDのCoherent HyperTransport技術をベースとしており、これにより、プロセッサはフロントサイドバスを経由しなくても、ほかのプロセッサやメモリとの間で直接やり取りできる。

 フロントサイドバスを排除すれば、電力を消耗するコンポーネントも取り除けるため、エネルギー効率の改善にもつながる、とムアハウス氏。

 また同氏によれば、AMDはATIを買収するとはいえ、ユーザーに選択肢を提供できるよう、今後もBroadcomのServerWorks事業部門やNVIDIAなど、グラフィックスチップメーカー各社との提携を継続する方針という。

 例えば、AMDは11月には、NVIDIAの技術を採用した4x4デスクトップエンターテインメントプラットフォームを投入する計画だ。

 なお、AMDは世界最大のプロセッサメーカーであるIntelと係争中だ。AMDは10月18日に第3四半期決算を発表したが、同社の7〜9月期の利益は前年同期よりも増加し、プロセッサの出荷台数も前年比18%増となっている。

 AMDとATIの合併はPC価格の低下にもつながる可能性がある。また、この買収により、AMDはプロセッサの製造を合理化、簡略化することもできるだろう。

 AMDは最近、Dellとの間で、自社のプロセッサをDellのPCとサーバに提供する契約を締結した。Dellは10月23日には、サンフランシスコで開催中のOracle OpenWorldカンファレンスで、AMDのOpteronプロセッサを搭載する第1弾のサーバを発表している。

 IBMHewlett-Packard(HP)Sun Microsystemsなど、そのほかの大手サーバベンダー各社は既にOpteron搭載システムを提供している。

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