ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

“YouTubeテレビ”続々 Wiiでネットとテレビが融合

» 2007年03月05日 14時27分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 YouTubeなど動画投稿サイトの人気映像を、テレビで見るための新サービスが続々と登場している。YouTubeのAPIを活用し、WiiブラウザとWiiリモコンで簡単に操作できるようインタフェースを工夫したもので、テレビ番組を見るように気軽に動画を楽しめるのが特徴だ。サービス提供元は、小規模なベンチャー企業や個人ばかり。2年ほど前に注目を集めた、大手ネット企業によるテレビ局買収劇とは異なる次元で、ネットとテレビは着実に融合してきていると言えそうだ。

画像 はてなのRimoはWiiに完全対応した

 Wii対応の動画サービスで先陣を切ったのは、2月16日に公開されたはてなの「Rimo」(リィモ)だ(関連記事参照)。YouTubeの人気動画をエンドレスに再生できる仕組み。リモコン型のシンプルなインタフェースで、テレビのように気軽にダラダラと見られるサービスを目指した。Rimoはサービスインと同時に話題を集め、ユニークユーザー(UU)数は3日で10万人を突破。総アクセスの16%がWiiからの接続だったという(関連記事参照)

 翌16日には、個人が構築した同様なサービス「DARAO」が登場。YouTubeまとめサイトで取り上げられた動画も一気に見られるのが特徴で、Wiiに最適化はされていないもののWiiでも閲覧でき、Rimoと同様、テレビを見るように受け身で楽しめる。京都のベンチャー企業・ドラゴンフィールドも28日、同社のブックマークサービスで人気の動画を、Wiiで連続再生できるサイト「CGM TV! DOGGAWii(ドガウィー)〜みんなのチャンネル〜」を公開。paperboy&co.の家入一真社長ら2人によるユニット「milkyway」からも3月2日、テレビ番組表のようなインタフェースで、WiiからYouTube動画を見られる「oreseg」(オレセグ)が登場した。


画像 DARAO
画像 CGM TV! DOGGAWii(ドガウィー)〜みんなのチャンネル〜
画像 oreseg

 これらのサービスはすべて、小規模なベンチャー企業や個人の手によるものだ。はてなは従業員20人あまりで、Rimo開発にたずさわったのは20代の技術者2人。ドラゴンフィールドも従業員6人のベンチャー企業であり、DARAOやoresegに至っては個人が構築したサービスだ。

 YouTubeのAPIを利用したこういったサービスは、構築自体はそれほど難しくないようだが、YouTubeをめぐる著作権問題がすっきりしないこともあり、大企業には手を出しにくい分野。APIの活用に長け、リスクを織り込みながらも素早く動けるベンチャーの優位は、しばらくは揺るぎそうにない。

 大手ネット系企業は、ネット上の動画配信に力を入れているが、テレビには進出し切れていない。2005年秋以来、楽天はTBSとの提携の道を模索し続けているが、大きな成果は見えていない(関連記事参照)。ヤフーの「Yahoo!動画」やUSENの「GyaO」などテレビコンテンツをネット配信する仕組みは整ってきている。だがその逆――テレビでネットコンテンツを見る、という動きは鈍い。

 松下電器産業やソニー、シャープなどが出資するテレビポータルサービスも、テレビで動画配信などが可能なポータル「acTVila」(アクトビラ)構築を進めているが、ビデオオンデマンド(VOD)による映像配信が2007年度内、コンテンツダウンロード開始が2008年度内とまだまだ先の話。ネット上の変化のスピードと比べると、かなりのんびりしたスケジュールと言わざるを得ない。

 Wiiやプレイステーション3などWebブラウザを持つゲーム機を活用してネット上の動画を見られるサービスは今後も増えていく可能性があり、生き残りに向けた機能強化・ユーザー囲い込み競争が起きていくだろう。こうしたサービスが遠くない将来、競争の中で進化を続け、多数のユーザーを集めた時、ゆっくりと動いてきた大企業には付け入る隙がなくなっているかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.