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» 2007年11月28日 22時29分 UPDATE

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」に反対意見集まるが…… 埋まらぬ「権利者」vs.「ユーザー」の溝 (3/3)

[岡田有花,ITmedia]
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 「小六委員からは『税金のように考えて』という話もあったが、それは『みんなが映画も音楽も好き』という前提での話に聞こえる。僕は音楽が好きだから『自由な私的複製を許す代わりに補償金を支払って』と言われるのは個人としてはアリだが、そこまで興味のない人が、補償金として支払わされるのは理解できないだろう」(津田委員)

 小六委員は「私的録音録画補償金は文化的なものを保護するという前提に立っているはず。文化を愛好する人は3分の1しかいないとしても、残りの3分の2の人に対して、文化が何らかの貢献をしていないとは言えない。3〜4割の人が必要としているのなら、その前提に立って考えたい」と再び文化論をぶつけた。

 「3割に配慮するなら残りの7割にも配慮すべき。7割の人が納得できるロジックを示さないといけない」と津田委員。小六委員は「7割の人にも理解してもらうため、広報や説明をしていく必要があるだろう」とした。

DRMあれば補償金不要?

 DRM付きコンテンツについて、補償金を徴収するのは著作権料の二重徴収に当たる可能性がある――という意見が主にJEITAやユーザー側から出て、中間整理にも記載されていた。日本音楽事業者協会は、権利者側としては珍しくこれに賛成。「配信契約によって消費者の録音・録画を管理することができるため、30条の適用除外としても(補償金の徴収対象外としても)いい」とする。

 対して、JASRACや実演家著作隣接権センター、ポータルサイト事業者などは、「ビジネスの動向を見ながら検討するべき」と慎重な立場だ。JASRACは「当協会の許諾は消費者の受信端末への複製まで」とし、二重徴収との指定は事実に反する」と反論する。

 椎名委員は「二重取りだと何年も前から言われていたが、現状、主なダウンロード先はPC。PCは補償金の徴収対象になっていない。『PCが対象となったときに初めて、二重取りの懸念があると言った方が正しいだろう」と指摘する。

 「二重徴収だから補償金は不要」という意見に真っ向から反論する権利者団体も。日本音楽事業者協会は「30条は権利制限であり、補償金のバランスを考えずに一方的に廃止するのはナンセンス。権利者の受忍限度をはるかに超えた現状では、補償の必要性があるのは言うまでもない」とする。

 日本映像ソフト協会や実演家著作隣接権センターは「DRMによる複製制限と、そこで権利者に経済的不利益が生じるか生じないかに因果関係はない。DRMで複製制限すれば、複製の範囲が予見できるため補償金は不要という議論は論理の飛躍」とした。

 一部の楽曲コンテンツなどでDRMフリー化が進んでいる現状を踏まえ、補償金制度は維持すべきという意見も。実演家著作権隣接センターは「市場の動向などから、権利者がDRMや複製回数などを自由に選べないような場合(例えば、iTunes Storeなどシェアの大きなサイトにコンテンツを流したい場合、DRMフリーのAACとFairPlayしか選べないなどといったケース)は、権利者の裁量権が市場の動向や配信事業者の動向にゆだねられる。特に、配信後の私的複製を制限しない場合(DRMフリーで配信する場合)は30条の適用範囲から除外すべきではない」としている。

 「DRMフリーの配信も実際に出てくるなど、ビジネス上の競争要求から『私的複製』の位置付けがあちこち動いている。DRMフリーなら補償金制度は必須。廃止論は、軽々に言うべきではない」(椎名委員)

 補償金の必要性はDRMとのバランスで決めるべき――という意見も、主に権利者側からあった。「DRMで現実に複製が行われてないなら補償は不要だが、複製が許容されている場合はその範囲で補償が必要」(日本映像ソフト協会)、「DRMと経済的不利益を見る場合は、どの程度の複製制限が付されているかが問題」(実演家著作隣接権センター)

 JEITAは「全ての地上波放送がデジタル化され、DRMがかかる2011年には、録画に関しては補償金が不要になるはず」と主張するが、日本民間放送連盟やNHK、JEITAは「デジタル放送のDRMは権利者が積極的に私的利用を許容する意図を持ってはいない」とし、補償は必要としている。

 「ダビング10」を採用した機器やメディアについてもJEITAは「補償金の対象外とすべき」と主張しているが、権利者側からは「録画後の保存・視聴が頻発することが明らかで映画製作者として容認できる範囲をはるかに超えている」(映画製作者連盟)などとし、補償金の対象とすべきという意見が多く寄せられた。「コピーワンス緩和はあくまで補償金制度の維持が前提だった」とし、JEITAの姿勢に「きわめて遺憾」とする意見も、複数の権利者団体や個人から挙がった(関連記事参照)

適用範囲、録音・録画以外にも広げよ

 補償金の適用範囲を広げるべきだという意見も、権利者から多く挙がった。日本映画製作者連盟は「Blu-ray Disc、HD DVDも直ちに課金対象とすべき」と主張。経団連やACCS、コンピュータエンターテインメント協会などは「録音・録画」に限って議論されてきた今回の問題について「適用範囲を他の分野にも広げるべき」と主張する。

 ACCSは「コンピュータソフトは違法ダウンロードから大きな損害を受けている」とし、ソフトウェアの違法ダウンロードを、日本ケーブルテレビ連盟は「有料放送のスクランブルを解除する機器を経由して放送を見る行為」を、それぞれ違法にするよう主張。経団連も「違法録画録音物や違法サイト以外の著作権侵害品への対象拡大について検討する必要がある」としている。

 補償金の徴収対象を一般ユーザーではなくメーカーにすべきでは、という意見も、これまでの小委員会で何度か出ていた。日本映画製作者連盟事務局の華頂尚隆委員は「あるメーカーのBlu-ray DiscのCMで『デジタル生まれ・映画育ち』というキャッチコピーがあった。私的録音録画制度のおかげで機械を売り、利益を得ているのはメーカー。メーカーから還元してもらうというのはシンプルな仕組み」と、隣に座るJEITAの亀井委員を意識したような発言。だが「それは鶏が先か卵が先かという話。映画業界は以前、VTRを禁止しようとしましたからね」と中山主査がすかさず突っ込んだ。

 JEITAはパブリックコメントで「汎用的な機器は対象外とすべき」と主張。IT関連企業からは「補償金の対象機器を拡大すると、海賊版対策に必要なDRMの革新・開発から資源や注意力をが奪われることになりかねない」という意見もあった。

発展的な議論を

 文化庁の川瀬室長は「私的録音録画制度は、権利者とユーザーが直接契約できないという現状を踏まえた『中2階』的な制度。(デジタル配信とDRMなどで)直接契約できるようになった場合を考えていく必要もあるだろう」などとし、「次回に向け、DRMと補償金のバランスなども見た上で議論を整理したい」と話す。中山主査は「そもそも論に戻らず、現状を見た上で、制度をどう変えていくべきか議論していきたい」とまとめた。

 年内の小委員会は、12月18日と12月27日に開かれ、来年1月に報告書がまとめられる。

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